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20匹以上の保護猫と暮らした愛猫家町田康さんが選ぶ“猫の手触り”を感じる音楽3曲「私にとって猫は憧れ」

CREA WEB / 2024年8月27日 11時0分

 世の中に溢れている猫をテーマにした音楽。作家の町田康さんに忘れられない3曲を選んでいただきました。(「CREA」2024年夏号より一部抜粋)


猫の手触りを感じる楽曲の数


町田さんはこれまで20匹以上の猫を保護し、世話をしてきた。「人間にはイヌ人間とネコ人間があり、イヌ人間である私にとって猫は憧れです。猫のような、自己完結して嘘のない生き方をしたいと憧れている。死ぬまでにはなんとかして猫のような人間になりたいと思っています」写真:町田 康

 世の中に溢れている、猫をテーマにした楽曲。気まぐれな恋人を猫に喩えたり、猫の凜とした振る舞いに、自由に生きたいと願いを込めたり。猫が好きな人もそうでない人も、「猫と音楽」で思い浮かぶ曲や歌詞があるだろう。曲のなかの実体のない猫の存在感が、その音楽を聴く人の心にしっかりと爪痕を残すさまは、これもまた捉えどころのない猫の魅力の一つなのかもしれない。

 作家の町田 康さんは、猫と音楽作品の魅力の一端をこう言い表した。

「猫を歌詞に出すのは難しいと考えます。なぜならどのような言葉も実際の猫は通り過ぎてスタスタ行ってしまうからです。

 しかし曲となると猫を、猫の手触りを感じる曲はあります。ネコ、という言葉を其の儘、使っていない方が響くと思います」

 町田さんはこれまで20匹以上の保護猫と生活をともにした愛猫家で、猫との日々を4冊のエッセイにまとめている。

 猫と暮らす魅力を著書『猫にかまけて』のなかで「どうでもいいようなことで悲しんだり怒ったりしているとき、彼女らはいつも洗練されたやりかたで、人生にはもっと重要なことがあることを教えてくれた」と記した町田さん。町田さんにとって忘れられない「猫と音楽」を伺った。

●「黒ネコのタンゴ」皆川おさむ/フィリップス


「黒ネコのタンゴ」皆川おさむ/フィリップス

「昭和四十五年、爆発的にヒットして毎日のようにテレビから流れて頭に染みこんで未だに消えない」――町田さん

 1969年10月発売、ひばり児童合唱団に所属していた6歳の皆川おさむのデビュー曲。原曲はイタリアの童謡「Volevo un gatto nero(黒猫が欲しかった)」。

 シングル盤が発売されるとオリコンで14週連続1位、70年のレコード年間売上で1位と大ヒットを記録した。

 これをきっかけに70年には「子ども歌手」が流行するなど、社会現象を巻き起こした国民的童謡。


イラスト=Caffeine House

「黒ネコのタンゴ」

作詞・作曲 PAGANO FRANCESCO
作詞 MARESCA FRANCESCO SAVERIO SORICILLO ARMANDO
訳詞 見尾田みずほ

だけどときどき 爪を出して ぼくの心を悩ませる

夜のあかりが みんな消えても
君の瞳は銀の星よ
キラキラ光る 黒ネコの目
夜はいつも 君のものさ

●「黒猫の叫び!(BLACK CAT MOAN)」ベック・ボガート&アピス/エピック・レコード


「黒猫の叫び!(BLACK CAT MOAN)」ベック・ボガート&アピス/エピック・レコード

「高一くらいの時ムチャクチャ聴いていた。ギターが黒猫の鳴き声という事なのだろうと思うが、白猫とあまり区別がつかない」――町田さん

 ベック・ボガート&アピスは、イングランドのギタリストジェフ・ベックを中心に結成され、当時「ロック・トリオの最高峰」と注目を集めたハードロックバンド。1972年から74年まで活動。

「黒猫の叫び!」は、ドン・ニックス原曲のカバー曲としてデビューアルバム『Beck, Bogert & Appice』に収録された。

 世界中のアーティストがこの楽曲をカバーしており、日本ではギタリストCharが2011年にジェフ・ベックのカバーアルバムで取り上げたことでも知られている。


イラスト=Caffeine House

「BLACK CAT MOAN」(『Beck, Bogert & Appice』収録より)

作詞・作曲 ドン・ニックス

Looky here
Sunshine comin’ over the hill
Just through my window pane
Sunshine comin’ over the hill
But it might as well be rain
I got the black cat moan
I got the black cat moan
Got the black cat moan but I don’t know why

●「愛しのマリンバ」黒猫同盟/ビクターエンタテインメント


「愛しのマリンバ」黒猫同盟/ビクターエンタテインメント

「猫の時間を感じる。死後の平安を感じる」――町田さん

 音楽プロデューサーの上田ケンジと小泉今日子による「黒猫の目線を通して見つめた世の中」を音楽で描くユニット「黒猫同盟」のセカンドアルバム(2024年2月22日に発売)に収録された曲。

 ユニット名は、ふたりが同時期に黒猫を保護したことに由来。

 ゆったりとしたマリンバとギターの優しいメロディとコロコロと変わるテンポがまるで猫のような楽しい一曲。


イラスト=Caffeine House

「愛しのマリンバ」(『ムーランルージュの黒猫』収録より)

作詞・作曲・編曲 上田ケンジ

マリンバの梯子で空の上まで
マリンバの梯子で靴音響かせ

明日も一緒さ ルルル ルルル‥‥

町田 康(まちだ・こう)さん
作家

1962年大阪府生まれ。97年初の小説『くっすん大黒』で野間文芸新人賞、2000年に『きれぎれ』で芥川賞受賞。猫との日々を綴ったエッセイとして『猫にかまけて』『猫のよびごえ』など。16年からはバンド「汝、我が民に非ズ」を始動。23年に『口訳 古事記』で舟橋聖一文学賞受賞。
猫とは: 「憧れ」

 K-POP界のレジェンド、ドンヘさん、ウニョクさんをお迎えしたスペシャルインタビュ―、JOさんと愛猫ミントの貴重な2ショット、SNSで話題沸騰中のマンガ『猫に転生したおじさん』作者・やじまさんによる特別描きおろしマンガ&シール付録など、「猫のいる毎日は。」特集は「CREA」2024年夏号でお読みいただけます。

写真=末永裕樹
イラスト=Caffeine House

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