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どこまで続くか誰も知らない洞窟も… 【日本海の荒波が創りだした絶景】 福井県「蘇洞門」クルーズが面白い!

CREA WEB / 2024年8月10日 11時0分

#306 Sotomo
蘇洞門(小浜市・福井県)


若狭湾のほぼ中央に位置する小浜港。背後に山並みが迫るのんびりとした漁港です。

 元アメリカ大統領オバマ氏が就任した際、一躍脚光を浴びた小浜市。今も、アメリカンジョーク狙いなのか、地名目当てにアメリカから訪れる観光客もいるそうです。

 そんな小浜は日本列島のほぼ中央、京都の北に位置し、都から最も近い日本海側の港町です。こうした地理的な利点から小浜は、シルクロードを越えて大陸からやってくる船にとって海の終着点であり、ここから京都、大阪へと続く陸の出発点でもありました。


京都に最も近い港町として栄えた小浜。中世の頃からの風情を残す小浜西組は重要伝統的建造物群保存地区です。

 小浜の港は若狭湾のほぼ中央に位置し、海に向かって右に内外海(うちとみ)半島、左に大島半島が湾を囲んで延びています。その地形はまるでカニのハサミのよう。


人魚の肉を食べ、美しいまま800年間生きたという八百比丘尼の伝説が残っています。

八百比丘尼は空印寺の脇にある洞穴で亡くなったとされます。

 そんな小浜の観光スポットの筆頭といえば、国の名勝に指定され、若狭湾国定公園を代表する景勝地の「蘇洞門(そとも)」。


御朱印帳ならぬ、船印帳。

 蘇洞門は、日本海の荒波によって削られた約6キロにわたる豪快な断崖で、奇岩や洞窟、海蝕洞などユニークな地形が連続しています。

 そんな地形を満喫できる、若狭フィッシャーマンズ・ワーフの「蘇洞門めぐり遊覧船」に乗船してみました。

冬には荒波が断崖の上まで届く!


若狭フィッシャーマンズ・ワーフ前の小浜港から出港します。沖に向かうにつれ、海の色が変わっていくことにも注目です。

 出港してすぐに双児岩、やがて三ツ岩、二ツ岩を回って、内外海半島沿いに若狭湾へ抜けます。ここからが名前の付いた奇岩などが続く、いわば本編の始まりです。

 鎌の柄のような形をした「鎌の腰」、その奥がどこまで続くか誰も知らないという洞窟「地獄門」、中国からの船を係留したという「唐船島」、四角いブロック状に割れた方状節理の「あみかけ岩」、2つの巨岩が折り重なった「夫婦亀岩」……。こうした名前は漁師さんたちが自分の船の位置を伝えるために使っていた通称だとか。


方状節理という、豪快な岩の割れ目。

2つの巨岩が折り重なった夫婦亀岩。

一列にブイを並べ、魚の通り道に網を張る、“大敷網”という定置網。

 そして、白糸の滝を過ぎると、ハイライトの大門(おおもん)・小門(こもん)。


若狭湾サイドから眺める大門・小門。写真=若狭フィッシャーマンズ・ワーフ。

 日本海の荒波によって、断崖に穿たれた2つのギザギザとした洞穴です。小さな穴の方でも大人3人分の高さがあるそう。穴の向こうをのぞき込むと小さな滝が見えます。

 冬には荒波が断崖の上の松の木があるあたりまで届くというから、その迫力、想像を絶します。

 通常は、大門・小門で風景をしばらく眺めた後に引き返すらしいのですが、この日は、船はさらに進み、断崖を回り込んで岩の割れ目へと分け入っていきました。ゆっくりと最奥まで進むと、そこには断崖を伝う吹雪の滝が。先ほど大門・小門の間から覗いた滝です。


断崖の間を縫って、船は大門・小門の裏側へ。

水路の行き止まりに位置する吹雪の滝。

 近接した断崖の間を進むため、海況が良好でないと、なかなか行けない大門・小門の裏側。上陸して吹雪の滝をそばで見て、大門・小門から大海を覗いて、透明度の高さに驚いて。断崖に囲まれた秘密の入り江のような雰囲気も、スペシャル感たっぷりです。

小浜は日本で初めて“あの動物”が上陸した地

 この大門・小門=蘇洞門と勘違いされがちですが、蘇洞門というのは6キロメートルにわたる海岸線全体を指します。ちなみに、蘇洞門は内外海半島の小浜湾から見て岬を回った裏側(外側)にあることから“外面”(そとも)と呼ばれていたのが、一番の見せ場である大門・小門の洞門の圧倒的存在感から、「蘇洞門」という字があてられるようになったとの説が。


裏側から見る大門・小門もまた一興。写真=若狭フィッシャーマンズ・ワーフ。

 江戸時代中期~後期の絵巻「紙本著色小浜城下蘇洞門景観図巻(蘇洞門景観図)」には小浜の城下からこの蘇洞門までの景色が色鮮やかに描かれています。その長さ、実に7メートル! 昔から蘇洞門は、小浜の人々やこの港を訪れる人々にとって欠かせない存在だったのでしょう。

 この「蘇洞門めぐり遊覧船」に乗船中に流れるアナウンス、内容が興味深い話ばかり。行きは右手に見える内外海半島、帰りは大島半島にまつわる逸話を紹介してくれます。

 帰り道、大島半島サイドの遠くに見える無人島の蒼島は“蒼島暖地性植物群落”という、日本海側の北陸では見られない暖かい地方の植物で覆われているのだとか。


独自の植物相が展開している蒼島。

 ナタオレノキ(鉈が折れるほど固い木らしい)やムサシアブミは、自生の北限だそうです。海流によって種が運ばれ、ここに漂着して繁茂したと思うと、島崎藤村の詩から生まれた童謡『椰子の実』が頭の中に流れます。

 そして、そろそろ小浜湾に到着する頃にアナウンスされたのは、小浜は日本で初めて象が上陸した地であるという話。今からおよそ600年前の1408年、インドネシアのパレンバンの王様が室町幕府の第4代将軍・足利義持に献上しようと、象1頭、孔雀2対、オウム2対などを持ち込んだそう。


小浜港が見えてきました。60分間のクルーズ、大満足!

 南蛮船から下りてきた、海の向こうから来た見慣れぬ顔つきの人々や巨大な象。背後に山が迫る小さな港町の人々は大騒ぎだったことだろうと想像が膨らみます。

 ちなみにこの象はその後、どうなったか。1カ月かけて上洛し、2年7カ月を京で過ごしたものの、日々の大量の食料調達に困った幕府は朝鮮国王へ貢物として献上。その後、役人を踏み殺して島流しになったそう。数奇な運命の象です。

 蘇洞門の豪快な景色に圧倒されつつ、この土地の歴史や文化も知ることができる蘇洞門めぐり遊覧船。あっという間の60分間です。

蘇洞門

●アクセス 若狭フィッシャーマンズ・ワーフまで、車なら舞鶴若狭自動車道 小浜ICから約3キロ 、所要時間8分。電車の場合はJR敦賀駅からJR小浜線で小浜駅まで約1時間5分、小浜駅から車で約5分、徒歩なら約20分

取材協力
若狭フィッシャーマンズワーフ https://www.wakasa-fishermans.com/sotomo
若狭おばま観光協会 https://wakasa-obama.jp/


古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

文・撮影=古関千恵子

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