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大河『光る君へ』道兼役も話題に。玉置玲央が挑む「伝説の舞台」は「“宝物”を交換している感じ」

CREA WEB / 2024年8月11日 18時0分

 昨年NHKドラマ10で放映された『大奥』の黒木役、そして現在放映中のNHK大河ドラマ『光る君へ』の藤原道兼役でも、演技力の高さとシュッとした美貌に注目が集まった俳優・玉置玲央さん。

 劇団『柿喰う客』の看板俳優を務めながら、今年はすでに2本の舞台作品に出演するという多忙な玉置さんが、1981年に数多くの演劇ファンを虜にした鴻上尚史さんの伝説的舞台『朝日のような夕日をつれて2024』に出演。演劇ファンにとっては“バイブル”と言っても過言ではないこの作品に最年長として出演されるお気持ちについて伺いました。


1981年から演じられてきた奇跡の作品が復活


玉置玲央さん。

――『朝日のような夕日をつれて』は1981年初演から何度も脚本に手を入れながら、最後に再演されたのは2014年。そのとき玉置さんは最年少の『少年』という役で出演されています。玉置さんから見た、この作品の面白さ、長く愛され再演が繰り返されている理由をお伺いできますか?

 鴻上さんが書く脚本というのは、その時代時代を都度切り取っているんです。『朝日のような夕日をつれて』で言うと、おもちゃとかゲームという暇つぶしにあたる部分が毎回ブラッシュアップされて、その時代の新しいモノを取り入れるという方向です。だから、“二度と同じ『朝日』はない”んですが、とはいえ、やはり作品自体に流れている熱量や演劇的面白さというのはずっと変わらないと思います。

 1981年の初演から変わらない部分が脈々と存在しながら、時代や演じる人間が変わっているんですよね。姿を変えつつ、作品が板の上に完成するというのが、この作品の醍醐味だと思います。

――「演劇的面白さ」というのは?

 演劇というのはやはり“圧倒的体験”だと思うんです。ドラマや映画でも、テレビの前、映画館で作品を観るということは変わらないと思いますが、演劇や舞台で僕が好きなのは、劇場という空間で目の前で、リアルタイムで、ともすればすごく近しい距離で浴びることになる。

 それはもう“経験”ではなく“体験”になる――これが演劇の面白さです。この『朝日のような夕日をつれて』はその部分が強いと思うんです。浴びるものが多い。それが、人によっては思い出とか原体験として残っている由縁ですし、作品自体、そして演劇の根底に流れている部分かなと思います。


玉置玲央さん。

――玉置さんは「少なくとも10年間お芝居の世界に立ち続けることができたのは、ひとえにこの作品のおかげのような気がします」とコメントされていました。10年前にご出演され、今回また再出演されることは玉置さんにとってどんなお気持ちですか。

 高校生の頃、諸先輩方が「絶対に観たほうがいいよ」と勧めてくださった作品で、いつかこの舞台に立たせていただけるなら光栄だなと思っていたんです。そしたら2014年に出演させていただくことができて、自分の中で目標がひとつ達成できたようなところがあって。10年前はそういう感覚でした。

 そして、そこから10年。「芝居の世界に10年立ち続けることができた」と書いたのは、『こんなご褒美のような作品や体験が、この先も待ち受けていたらいいな』と思いながら、今もこの仕事を続けているから。またこういう作品に出合いたいと思っていたら、2024年にまた出演することが叶いました。

 今度は大高洋夫さんが演じられていた役をいただきました。気負いとか緊張みたいなものはあまりなくって、楽しいという気持ちが強いです!

新メンバーたちによる発想のやり取りが、この作品に新しい命を吹き込んでいる


玉置玲央さん。

――10年前に出演されたときの印象と、現在、お稽古されている印象と、作品に関して感じる“違い”みたいなものはありますか?

 具体的な部分でいうと、出演者の年齢差がギュッと縮まったんです。僕が39歳で最年長。最年少でも30歳なので、年齢差は9歳。年齢差が縮まったからどう変わったというのはまだ掴み切れてないのですが、作品が若返っている印象はすごくあります。

 リアルな会社で言ったら役柄の社長や部長と部下が9歳差では説得力がないのかもしれませんが、僕自身、『朝日のような夕日をつれて』はファンタジックな作品だと思っているので、そのフィールドをお借りして取り組んでいるという感じです。

 新しい顔ぶれだからかもしれませんが、新しい発想もどんどん出てきているんです。2014年とは違う新鮮さがあります。作品が少しずつ変容している、その姿を目の当たりにできている感じですね。

――10年ぶりにご一緒される鴻上さんにはどんな印象を持たれましたか?

 全然変わらないです(笑)。元気ですし。

 僕が言うのはおこがましい話ですが、以前よりも“まろやか”になったという印象はありますね。俳優から出てくるものを受け入れてくださる門戸が、さらにさらに広くなった感覚です。昔から何でも拾ってくださる方でしたけど……。あと、どれだけふざけても怒られない(笑)。10年経っても居心地がいいです。


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――今回ご一緒される皆さんについての印象をお伺いできますか?

 一色洋平さんは十数年前から面識があって、いつか共演できたらいいねみたいなことを話していました。今回念願かなって初共演で、しかも僕が10年前に演っていた少年役を洋平がやるので、すごく感慨深い思いで見てしまいますね。稽古中も10年前の自分を見ているかのような瞬間があって、「洋平、頑張れ!」といつも思っています。

 稲葉友さんは2回ほど共演をしていて、交遊もあるので「久しぶりの共演楽しいね」って言いながら稽古をしています。10年以上前に共演して、改めて一緒になると、変な話ですけど「お互いオトナになったね」みたいなしみじみとした思いを共有してます(笑)。

 安西慎太郎さんに関しては、僕は初めましてなんですが、すごく引き出しの多い役者さん! カッコつけることも抜くこともできるし、肉体もしっかりしていて声もちゃんと出る。鴻上さんが「簡単にやれる作品じゃないけど、新しい『朝日』作るための役者が集まった」ということを仰っていたのですが、慎太郎を見ていて、その意味がすごくわかると思いました。

 小松準弥さんも舞台を観たことはありましたが、ご一緒するのは初めて。準ちゃんは相方役なので、すごく不思議な感覚です(笑)。甘えさせてもくれるし、甘えてもくれる。役の上での役職も年齢も準ちゃんのほうが上の設定で、実際は僕のほうが年上なので、その辺りのバランスが、稽古をしていても、休憩中にセリフを合わせたりしていても、すごく面白い。あと、顔がすごくキレイなんです。お芝居中にすごく間近で準ちゃんを見るので、その度に「なんてキレイな顔なんだ!」と思っています(笑)。

――新しいメンバーで行われているお稽古場の印象を教えてください!

 自分の文脈にないものが出てきたり、経験にないものが出てくるんですよね。それがこの『朝日~』の作品に合っていると思います。その時代のイキのいい俳優……って、自分で言うのも変ですけど(笑)、たちが、この作品を演じることによって生まれる科学変化や新しい面が『朝日~』という作品の醍醐味になっている気がしていますね。

 少なくとも10年前は、僕は先輩たちに食らいついていくという感じが強かったのですが、今は、新しいメンバーで新しい感覚で新しい引き出しをみんなで開けている感じ。それぞれが持っているいろんな宝物を「俺、こんなん持ってるよ」「俺はこれ」と言いながら、それを交換しているような感じでやれているのが楽しい。今回の座組の面白いところだと思っています。

玉置玲央(たまおき・れお)

1985年3月22日生まれ、東京都出身。劇団『柿喰う客』所属。劇団以外でも、『リア王』『ジョン王』『パンドラの鐘』『Birdland』など数多くの作品に出演。近年は映像での活躍も目覚ましく、初出演映画『教誨師』では自己中心的な死刑囚・高宮を好演し、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。2023年『大奥 Season2』の黒木役、2024年大河ドラマ『光る君へ』では藤原道兼役を好演。今最も注目される俳優のひとり。

文=前田美保
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=西川直子
スタイリスト=森川雅代

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