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中国のスタッフも「シャンシャンはスター」、日本から会いに行く人も…ファンが見た唯一無二の“個性”とは

CREA WEB / 2024年8月30日 11時0分

 1998年に日本の女性誌ではじめて「猫」を特集し、パイオニアだったCREAが、終わらない猫ブームが続くいま、12年ぶりに、猫と人との幸せな関係を紐解きます。

「CREA」2024年夏号の「猫のいる毎日は。」特集。その一部を抜粋し、掲載します。


  パンダに恋をし、写真集を出版した小澤千一朗さん、世界中のパンダに会いに旅に出る中川美帆さん、心の中にパンダを宿している中村莟玉さん。仕事も生活もパンダが中心の3人に、その魅力を語っていただきました。


パンダの魅力は「かわいい」の先にある


パンダを思うと気持ちが落ち着くかも。写真はアドベンチャーワールドの彩浜(さいひん)。

――パンダを好きになったきっかけを教えてください。

莟玉 もともとデフォルメされたパンダが好きだったのですが、友人から「リアルパンダを見に行こう」と誘われました。シャンシャンの公開が始まり、観覧抽選に友人が当選したのです。見に行くと、まんまるでふわふわなシャンシャンがポンと置かれたようにいて。その愛らしさと見ている人たちの熱量に「会えるアイドル」という感覚を得て、リアルなパンダにどハマりしていきました。

中川 私は物心がついた時からパンダが好きで。きっかけは覚えていませんが、初めて見たパンダは1980年に2カ月ほど福岡市動物園にいた2頭。大学進学を機に上京してからパンダを見に上野動物園へ通い始め、その後上海でパンダを見てから海外のパンダにも興味が。オーストラリアとカタールにいるパンダをまだ見てないので、いつか行きたいです。

小澤 僕は動画がきっかけ。当時、一番好きだったのは、アドベンチャーワールドにいた永浜(えいひん)がモート(掘)に落ちてスタッフが引き上げる動画。そのスタッフが偶然、後輩の妻で話を聞くと「落ちたら拗ねて絶対に上がってこないから、なんとかするぞ」と話していたらしく。それで「パンダって拗ねるんだ! カッコ悪い自分がイヤなんだ」と知りました。個性があると気づいてから、パンダをまじまじと見ていたらそれを実感しハマりました。

莟玉 パンダを好きになった人の共通点は「個」で見ていることだと思います。パンダというグループで見ているうちは「かわいい」で終わりがちですが、そこから踏み込むと個性に気づく。

――小澤さんは桜浜(おうひん)・桃浜(とうひん)、莟玉さんはシャンシャンが「推し」のパンダですよね。この3頭が中国へ行ったとき、気持ちをどう整理しましたか?


3人の想い出の写真を特別公開!
1:「大切なファースト・パンダ」(福岡市動物園:中川さん)【パオリン&シャンシャン】
2:「かわいくて、ほとばしる感情も伝わる」(上野動物園:莟玉さん)【シャンシャン】
3:「ちょっとイタズラ遊戯な感じで憎めない」(アドベンチャーワールド:小澤さん)【桜浜(おうひん)】

小澤 僕は桜桃(おうとう)〈桜浜・桃浜のこと〉が中国へ行くことにポジティブでした。絶対に良い母親になってかわいい子どもが生まれるだろうから「行ってこい!」と思ってた。一つ気がかりなのが、成都基地(成都ジャイアントパンダ繁育研究基地)から動物園へ行かされちゃうこと。そうなると交配相手がいないかもしれないので、できれば成都基地に残ってほしい。

莟玉 シャンシャンが母親になった姿と子どもも当然見たいのですが、あまり無理しないでほしい気持ちもあります。上野動物園の東園から西園に移動しただけで落ち着かない感じになりましたし、中国でも公開まで長い時間がかかりました。今は幸せそうだと動画を見てわかりますが、今後、繁殖のために、ほかの個体に会ったら、驚きそうな予感もします。

小澤 海浜(かいひん)もアドベンチャーワールドから中国に行って、しばらく向こうの竹を食べなかった。それこそ個性を見て、中国へ行かず残ったほうがいいパンダは残れればいいなと。

莟玉 中国がパンダを貸与しているので、戻ることはわかるのですが、パンダファーストになってほしいな。

――もし、パンダと話せるなら、どんなことを聞いてみたいですか?

莟玉 まずはシャンシャンを褒めてあげたい。大変なストレスに耐えたので。そしてらしさを失わず、中国で元気でいてくれてありがとうと伝えたい。

小澤 桜桃には「パンダケーキはおいしい?」と聞きたい。成都基地はそれが基準らしく、食べればひと安心。あと、桜浜と桃浜は互いに相手のことを覚えているか知りたい。パンダは忘れっぽいというけれどこの双子はシンパシーがあると思っているので。

中国の基地スタッフが「シャンシャンはスター」と


先端が黒いのにしっぽだけ白。写真はアドベンチャーワールドの良浜(らうひん)。木登りが得意! でも降りるのは苦手みたい。

小澤 シャンシャンの可能性をすごく感じたことがあります。というのも、成都基地へ撮影に行ったとき、シャンシャンは成都基地の管轄ではないにもかかわらず、スタッフが「シャンシャンはスターだ」と言ったのです。シャンシャンに限らず、パンダは僕よりぜんぜん格上。もう尊敬しています。

莟玉 僕もかなり羨望や憧れを持っています。存在するだけで、我々をここまで幸せにできるのはすごい。

中川 シャンシャンは中国に行ってからも人気で、連日、日本から人が会いに行っています。私は昨年10月に公開が始まって3日後に行ったのですが、現地にはもう日本から来た方がいて驚きました。シャンシャンがいる雅安基地(中国ジャイアントパンダ保護研究センター雅安碧峰峡基地)は、行きやすい場所ではないのですが。

莟玉 僕も早く会いに行きたくて。その日のために、基地までのルート紹介動画でイメージしています。シャンシャンの動画を見ていると、皆さん静かに観覧していますよね。

中川 うるさい人がいると、中国の人たちも「しーっ」と注意していました。

莟玉 桜浜・桃浜は成都基地に順応していましたか?

中川 はい。飼育員さんに中国語で名前を呼ばれたら反応していました。

パンダの前ならどんなに偉い人も平等


楓浜(ふうひん)。

莟玉 僕は「常に心にシャンシャンを」と思っています。クサクサしたりイライラしたりしたときにシャンシャンを思うと、ほっこりした気持ちになれるんです。パンダは生き残るために自分を変えてきた。内臓は肉食のままなのに、竹を食べるために順応しちゃう。絶滅が危惧されながら「種を残さないと」と追い立てられる感じもあまりしない。そこもガツガツせず、おっとりしたところにつながり、僕らが感じるパンダの魅力なのかなと思います。

小澤 3人ともパンダにやられちゃってますね(笑)。パンダって、耳や目、手足は黒なのに、しっぽだけ白。面白くないですか? 僕はファッションに取り入れているんですよ。キメキメなのに一個だけ外すとか。「さすがパンダだな!」と思いながら。

莟玉 パンダとのゼロ距離はまだなのでいつか……。経験ありますか?

中川 もうできないと思いますが、2007年に中国で2000元(当時で約3万円)を支払い赤ちゃんパンダを抱っこしました。ビニール製の手袋と服を身に着けるので、感触はよくわかりませんでしたが、大人のパンダは素手でさわれてゴワゴワでした(笑)。


結浜(ゆいひん)。

小澤 パンダに近づくには、国家元首だろうとNBAのスーパースターだろうと、ビニールの服を着る必要がある。パンダの前ならどんなに偉い人も平等になるんです。それでまたパンダを尊敬しちゃう。かなわないなって。

莟玉 一日中、ビニールの服を着てもいいからパンダと過ごしてみたいです。シャンシャンのお腹をもふもふして。なんなら殴られてもいい。

小澤 むしろ本望かもしれない。

莟玉 本望ですよね(笑)。

小澤 僕はクマ笹のドリンクを買って飲んでいます。パンダが好きすぎて、ついに笹にまで手を出しました。

≪Panda Goods≫


左から:小澤さん、中川さん、莟玉さん。

パンダカラーの服でお気に入りのグッズと。
小澤さん:韓国で生まれたフーバオのぬいぐるみ。少し茶色いのがポイント。
中川さん:欧州や上野動物園のバッグ、ノートなど。
莟玉さん:上野動物園・アドベンチャーワールド・王子動物園のクッションとぬいぐるみと箱。

●今回お話を聞いた方々は……

小澤千一朗(おざわ・せんいちろう)さん

編集者・ライター。雑誌『Sb Skateboard Journal』のディレクターを務めるほか、パンダの写真集を刊行。近著に『HELLO PANDAと「楓浜とハローパンダと。」』(エムピージェー)がある。


中川美帆(なかがわ・みほ)さん

経済誌の記者を経て、国内外のパンダの生態や歴史などを取材し記事を書いている。これまでに23カ国・地域の41カ所のパンダの飼育施設を訪れた。著書に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。


中村莟玉(なかむら・かんぎょく)さん

1996年9月12日生まれ。人間国宝・中村梅玉の養子。立役も女方もつとめる、平成生まれの歌舞伎俳優。博多座での『六月博多座大歌舞伎』に出演中。6月22日より、明治座にて朗読劇『細雪』に出演。


HELLO PANDAと「楓浜とハローパンダと。」

定価 1,980円(税込)
エムピー・ジェー


パンダワールド We love PANDA

定価 1,650円(税込)
大和書房


 K-POP界のレジェンド、ドンヘさん、ウニョクさんをお迎えしたスペシャルインタビュ―、JOさんと愛猫ミントの貴重な2ショット、SNSで話題沸騰中のマンガ『猫に転生したおじさん』作者・やじまさんによる特別描きおろしマンガ&シール付録など、「猫のいる毎日は。」特集は「CREA」2024年夏号でお読みいただけます。

文=中川美帆
写真=榎本麻美(パンダ)、松本輝一(人物)

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