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「日本文学の歴史とは、猫文学の歴史だったのだ」三宅香帆さんが選ぶ【猫が物語に登場する小説】5作

CREA WEB / 2024年8月28日 11時0分

 日本文学の歴史は、猫文学の歴史だったのかもしれません。そう思わされるほどに、すぐれた小説に猫はつきものです。壮大な物語にも、男女の痴話喧嘩にも、いつだってストーリーの中心に猫がいます。

 書評家の三宅香帆さんが、猫が登場する文学作品5つをご紹介(「CREA」2024年夏号より一部抜粋)。


猫好きなら絶対に幸せな気分になれる

『耳猫風信社』長野まゆみ


『耳猫風信社』長野まゆみ ※版元品切れ

 11才になった主人公「ぼく」は、日記帳を買おうと決意し、境界を越えてとなり町へ向かう。そこで出会ったのは、変わった目の色をした少年「カシス」、そして不思議な文具店「山猫の店」だった。

「猫の世界をファンタジックに描いた本書。素敵な喫茶店やパン、お菓子の描写にもうっとりするだろう。猫好きの方なら、読むと絶対に幸せな気分になれるはず!」

毛布と一緒に猫を二泊三日で貸してくれる

『ブランケット・キャッツ』重松 清


『ブランケット・キャッツ』重松 清/朝日文庫 638円

 毛布と一緒に猫を二泊三日で貸してくれる、というサービスを利用する人々を描いた連作短編集。

「こんなサービスがあったら絶対に利用してしまう! と本書を読むたびに思う。子どもができない夫婦や、リストラされた父親など、家族の事情がシビアに描かれてはいるが、登場人物皆が猫に癒されているので、読後は思わず微笑んでしまう。あたたかくて優しい猫小説だ」

谷崎潤一郎が描く猫の描写はまさに絶品

『猫と庄造と二人のをんな』谷崎潤一郎


『猫と庄造と二人のをんな』谷崎潤一郎/新潮文庫 506円

「猫好きであった谷崎潤一郎が描く、猫の描写はまさに絶品。主人公の庄造が飼っているリリーは、飼い主を手玉にとるのだが、その様子は小悪魔的で、読んでいると恋をしそうになってしまうほど。さらに、そこに庄造のことを愛する女性がやってきて、人間が猫に嫉妬し、醜態をさらす様が描かれている。谷崎の時代から、猫に人間が振り回されるのは、変わらないのだ!」

猫を撫でまわしたくなる小説

『ねじまき鳥クロニクル』村上春樹


『ねじまき鳥クロニクル』村上春樹/新潮文庫 825円~ 全3巻

 法律事務所を辞めた「僕」と、雑誌編集者のクミコ。平穏な生活を送る夫婦の奇妙な運命を描く。

「主人公が飼っていた猫の失踪から物語は始まり、猫を捜しながら、現実と幻想が交錯する不思議な世界に至ることに。猫好きを公言している作者ならではの猫の描写がとても優しくてリアリティがあり、私にとって本書は、読むと猫を撫でまわしたくなる小説の一つ」

桜吹雪の中、猫が走り出して…

『源氏物語』紫式部 著 角田光代 訳


『源氏物語』紫式部 著 角田光代 訳/河出文庫 各880円 既刊65巻

 主人公光源氏の恋模様と生涯を描く日本文学最高の傑作。

「光源氏の若き正妻、女三の宮が飼っていた猫は、物語に大きな波紋を呼ぶ存在。桜吹雪の中、この猫が走り出したことによって、柏木という男性と出会うことになり、不倫のきっかけをつくってしまうのだ。読むたびに日本の文学の歴史とは、猫文学の歴史だったのだと気づくだろう」

三宅香帆(みやけ・かほ)さん
書評家

大学院在学中に作家デビュー。会社員を経て独立。新刊の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)が話題。
猫とは:手に届かない夢。


 K-POP界のレジェンド、ドンヘさん、ウニョクさんをお迎えしたスペシャルインタビュ―、JOさんと愛猫ミントの貴重な2ショット、SNSで話題沸騰中のマンガ『猫に転生したおじさん』作者・やじまさんによる特別描きおろしマンガ&シール付録など、「猫のいる毎日は。」特集は「CREA」2024年夏号でお読みいただけます。

文=高田真莉絵

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