「大島さんはおいしい野菜が手に入った時に…」映画ポスターを“リデザイン”したヒグチユウコと大島依提亜の“出会い”
CREA WEB / 2024年9月3日 11時0分
『映画とポスターのお話』(白泉社)は、画家・ヒグチユウコさんとアートディレクター・大島依提亜さんの対談と、手掛けたオルタナティブポスター(※映画作品をテーマに、アーティストがリデザインしたアートポスター)をまとめた一冊です。
ヒグチさんに、対談連載のきっかけや大島さんとの出会い、興味を持っている映画監督について、メールインタビューでお聞きしました。(インタビュー【前篇】を読む)
コロナ禍の対談スタート。対面で集まる機会は少なく
――対談相手の大島依提亜さんとは、2016年に映画に関わるお仕事でご一緒してからの縁だそうですね。最初にお会いした時の印象は、覚えていますか?
ヒグチ 実はあまり記憶になくて。私自身が人の顔を覚えるのが少し苦手だということも関係しているかもしれません。それは大島さんも同じなのか、お互いに別の人と勘違いしたまま何故か会話が成立していたこともあるんです。後から横にいた友人にお互いに間違っていることを指摘されました。今思うと、間違えようがないくらい印象的な人なんですけどね。不思議です。
大島さんは料理がお好きで、おいしい野菜が手に入った時に「こうやって食べるといいよ」と勧めてくれるんです。けど、私は料理というものがとても苦手で。それを言ったら、一度作ってきてくれました。また食べたいです。
――対談連載は、2020年から『月刊MOE』(白泉社)で始まったそうですね。その時にヒグチさんから希望したことはありますか?
ヒグチ 対談に関しては、どのライターさんに入っていただくか、わがままを言いまして示させていただきました。その方に打診すべく連絡をした記憶があります。
――ライターの小倉倫乃さんですね。対談時に必ず持参したものはありますか?
ヒグチ 実は対談の第一回目からコロナ禍に入ったので、実際に顔を合わせて集合できたのはとても少なかったんです。ただ、対談の打ち合わせなどでは、アナログ手帳、絵を描く道具をいつも持ち歩くようにしています。
――連載を通して印象的だったことや、困った出来事はありましたか?
ヒグチ 印象的なことも困ったことも多々ありましたが、やはりいつも困ることは、私自身の思い入れの強さよりも、完成した作品の質が下回ってしまうことです。
あと、これは何と表現したらいいか悩みますが、絵をアップした時の読者からの反応は、やはり白人がメインの映画に偏る傾向があると思いました。今回取り上げた作品自体の偏りももちろんあったとは思いますが、反応の差にちょっとびっくりしました。
もしかしたら単に邪推で、私の作品の魅力が足りなかっただけかもしれませんけど。
アリ・アスター監督作品の魅力とは
――対談では、アリ・アスター監督作品の面白さや独自性について度々話題に上がっています。同監督作品の魅力を改めて教えてください。
ヒグチ 最初に作品を見たのは、『ヘレディタリー/継承』の試写会でした。もともと私はホラーが好きなので、どの作品を観てもあまり怖く感じないんです。だからアリ監督のような表現はとても面白さを感じました。そんな中、映画『ミッドサマー』『ボーは恐れている』と立て続けにお仕事させていただける機会に恵まれて大変嬉しい限りです。
今年の2月には『BRUTUS』(マガジンハウス)で監督本人と対談する機会に恵まれたんです。インタビューなどで取り上げられているように、監督はとても温厚で優しい方だと感じました。お話しする間、こちらの話に耳を傾けてくださる感じもとても好感的で、何よりもとてもチャーミングです。
そんな方がホラー作品を監督しているというのは不思議なようで、性格と正反対のものを作られるというのはよくあることだとも思いました。
――アリ・アスター監督同様、『哀れなるものたち』や『聖なる鹿殺し』『ロブスター』などのヨルゴス・ランティモス監督にも注目されていますね。
ヒグチ ランティモス監督はどの作品も素晴らしいです。実験的要素というか、舞台のような空気感をすごく感じるんです。その点が『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などを撮ったラース・フォン・トリアー監督を思い出します。トリアー監督の方がだいぶ変わってるし、苦しそうですけどね(両者、観る人を選ぶところも同じですね)。
新作の『憐れみの3章』も試写会で観させていただきましたが、たいへん好みでした。ウィレム・デフォーやジェシー・プレモンスなど、好きな役者が出ているのもうれしいです。
新作が出たら必ずチェックする映画監督は?
――新作が出たら必ずチェックする監督はいますか?
ヒグチ たくさんいるんですけども、今考えるとこの方たちでしょうか。
・アレックス・ガーランド監督
・エドガー・ライト監督
・ジョーダン・ピール監督
・ミランダ・ジュライ監督
・マーティン・マクドナー監督
・ナ・ホンジン監督
・バリー・ジェンキンス監督
・チャーリー・カウフマン監督
あんまり考えると、あの人もこの人も、となってしまいます。
》インタビュー【前編】に続く
ヒグチユウコ
東京を拠点に画家として活動している。アパレル企業などとのコラボ作品を手掛ける。2019年には、ギャラリー「ボリス雑貨店」(渋谷区)をオープン。著書に絵本作品『ふたりのねこ』(祥伝社)、『せかいいちのねこ』『ギュスターヴくん』(白泉社)などがある。2024年10月から韓国で展覧会を開催。
higuchiyuko.com
文=ゆきどっぐ
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