1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

「尾上右近さんは松也さんと深い信頼関係が…」歌舞伎『刀剣乱舞』で尾上松也と脚本家が“刀剣男士”を作り上げるまで

CREA WEB / 2024年8月28日 17時0分

 2023年に新橋演舞場で上演された新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』。大人気ゲーム『刀剣乱舞ONLINE』の初の歌舞伎舞台化作品として、大変な評判となりました。上演が終わってからもその人気は続き、2024年にはシネマ歌舞伎として上映。さらに京都南座にて「衣裳展」も実施された本作品が、待望のBlu-ray&DVD化!

 脚本を担当した松岡亮さんに前編では刀剣乱舞歌舞伎ができるまで、その反響について伺いました。後篇では、脚本についてもっと伺います。(全2回の後篇。)


©NITRO PLUS・EXNOA LLC/新作歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会

「ニン」に合わせて作った脚本

――前編の最後、公式図録にシナリオを全て収録したというお話が出ましたが、今作は三日月宗近を中心に据えた物語であり、足利義輝をメインに扱った作品でした。

松岡:ニトロプラスさん、尾上松也さんからは、世界観が揺らがなければどんな脚本でも大丈夫と言われていました。これは書く側からすると力量を問われるということでもあります。同時に、歌舞伎の台本は、演じる俳優さんの「ニン」(持ち味)を生かして、それぞれの役柄を書くことが大事です。句会みたいなものですよね、お題をいただいてあとは自分で書くという……。

 実は最初に考えていたプロットは江戸時代の物語でした。ですが、熟慮を重ねられた松也さんから、別のプロットを考えて欲しいというご提案があり、松也さん、菊之丞さん、プロデューサー陣と緊急ミーティングを行い、足利義輝が三日月宗近の最初の持ち主という説もあることから、いわゆる永禄の変をモチーフにすることにしました。

――脚本を書く際に、ゲームはプレイされましたか?

松岡:プロデューサーから最初に、歌舞伎ならではの刀剣乱舞とするために、ゲームはもとより、刀剣乱舞の舞台や映像に触れることなく、まっさらな状態で脚本を書いてほしいと言われまして、ニトロプラスさんからいただいた資料のみで執筆しました。公演終了後にプロデューサーの許しを得て、『刀剣乱舞無双』をプレイして遊びました。公演の準備を進める中で、出演者の皆さん始め、スタッフさんにも審神者になる人が続出していきましたね。


松岡亮さん。

――ニンと言えば、登場する六振りが発表されたとき同田貫正国が大きな話題となりました。また、尾上右近さんが二役で足利義輝を演じられています。

歌舞伎版刀剣乱舞だからこそできた挑戦

松岡:同田貫正国は中村鷹之資さんが演じてくださいました。非常に「ニン」に合っていたと思います。SNSが「同田貫正国一色!」と出演者の皆さんの間でも話題になっていました。尾上右近さんは松也さんと深い信頼関係で結ばれていて、三日月宗近と足利義輝の物語にすると作品の方向性が決定した段階で、松也さんは右近さんに義輝を演じて欲しいと仰っていました。そのおふたりの関係性は、右近さんが行ったあるサプライズからもわかると思います。何が行われたのかは、Blu-ray/DVDの特典映像でご覧になってください。

 もうひと役の小狐丸も、右近さんのニンを考え、松也さんが決められたものです。今回は小狐丸と義輝の二役ということもあり、拵え替え、つまり着替えが多く、お忙しかったと思います(笑)。


撮影中、まったくの偶然で尾上右近さんにお目にかかりました! 気さくに写真を撮ってくださり、CREAWEBスタッフ一同、大喜び。

――脚本にも小狐丸が「我らはことさら忙しいのだ」というセリフがありましたね(笑)。中村莟玉さんも、義輝の妹・紅梅姫と髭切の二役を演じておいでです。この紅梅姫は、三日月宗近に思いを寄せる場面がありましたね。

松岡:刀剣の付喪神である三日月宗近に、恋愛めいた場面を描くことは挑戦でもありましたが、誰も見たことがない三日月宗近の姿が描けるかなと思いました。女優さんではなく、女方さんが演じるからこそ描けるものもあるかなと。もちろん、結ばれず、姫の片思いに終わります。歌舞伎の美しさと女方芸を感じられる場面だと思います。

歌舞伎の定番悪役をあえて悪役として描かずに

――松永弾正と言えば、歌舞伎では「国崩し」と呼ばれる大悪人である、松永大膳久秀のモデルとして有名です。ところが今回は人間国宝・中村梅玉さんが演じられ、「白塗り」の弾正、悪役にしなかったという点が従来作品と大きく違うところだと思いました。


松岡亮さん。

松岡:梅玉さんに演じていただくにあたって、悪役で描くこともできましたが、あえて、清廉な、凛とした品のある役柄にしてみたら広がりが出るかと思いました。そういった人が将軍暗殺という大罪を決意するまでを描きたかった。梅玉さんが丁寧に演じてくださって……Blu-ray/DVDの特典に収録されている千穐楽のカーテンコールでの松也さんと梅玉さんの姿はぜひ見てほしいです。

古典歌舞伎への入り口としても楽しめる作品に

――紅梅姫は歌舞伎ではおなじみの「赤姫」と呼ばれる拵えであったり、冒頭の六振りが集合するシーンでは、白浪五人男を彷彿とさせたり、松永弾正と妻の柵・久直の親子愛が描かれたり、歌舞伎のエッセンスを凝縮した、入門編のような側面もあると思いました。

松岡:松也さんや私たちには、古典歌舞伎の魅力をもっと知ってほしいという思いがあります。でもいきなり古典歌舞伎の通し狂言を見てくださいというのも、ハードルが高いですよね。作品そのものを楽しんでいただいた上で、歌舞伎に興味が湧いて、ほかの作品を見ていただいくための一助になればという気持ちも込めています。


©NITRO PLUS・EXNOA LLC/新作歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会

――そういう意味では脚本に竹本の「語り」が書かれているのは非常に参考になりますね。これは脚本家さんが書かれるんですか?ミュージカルだと作詞の方は別にいますよね。

松岡:我々の世界だと、脚本家が書きますね。歌舞伎は現代劇に比べて、どうしても理解するのが大変な側面があります。今回はイヤホンガイドや図録といった、サポートグッズがありますので、その力を借りていただければと思います。

――Blu-ray/DVDにイヤホンガイド(作品解説)も収録されているのはありがたいですね! サウンドトラックも封入特典とのことですが。

松岡:サントラは、公演中から出してくださいというリクエストがとても多かったです。今回は前篇でお話しした図録もそうですが、本当に、ファンの皆さんのお声で実現したことがたくさんあります。音楽の中井智弥さんが作ってくださった素晴らしい音楽も併せて楽しんでいただけたら嬉しいです。


松岡亮さん。

――歌舞伎ファンも、刀剣乱舞ファンも、新たな世界に連れて行ってくれる作品ですね。最後に一言お願いいたします。

松岡:この作品は本当に、幸せな、恵まれた作品だと思います。松也さんを始め、出演俳優の皆さん、スタッフの皆さんと携わった多くの人々にも大変な熱意がありましたし、ファンの方も後押ししてくださった。私自身、参加できて幸運でした。Blu-ray/DVD、図録を通じて、ご自宅で刀剣乱舞の世界に浸っていただけたらと思います。今回観られなかったという歌舞伎ファンの方にも刀剣乱舞の世界に触れてほしいですし、刀剣乱舞ファンの方にも、「歌舞伎本丸」の魅力が届くことを願っています。願わくば、歌舞伎の良さを、この作品を通じてわかってもらえたら。これは、座組一丸の願いですね。

 またご承知のとおり、先日、第二弾の公演について発表され、SNSでも大変な反響があり嬉しく思いました。前回同様に、松也さん、菊之丞さんとご一緒できる喜びと共に、新たな物語を紡ぐプレッシャーをひしひしと感じています。ことに2025年の公演は、100周年を迎える東京新橋演舞場に始まり、福岡博多座、京都南座と三都市を巡演する大きな公演です。前作以上により多くのお客様にご満足いただける作品となるよう、鋭意努力したいと思っています。

 アクリルスタンドとポスターの横で行われたインタビュー。刀剣乱舞、そして歌舞伎への愛をたっぷり伺えました。実は聞き手のライターは歌舞伎鑑賞歴6年、アニメ・漫画好き。拝見して初心者の方にもわかりやすく、歌舞伎ファンは「見立て」のように楽しめる作品だと思いました。

 何より、お客様に、ファンの方に楽しんでもらいたいという思いが伝わる『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』のBlu-ray/DVD、そして公式図録。ぜひ、ご自宅でお楽しみください!

文=宇野なおみ
写真=山元茂樹

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください