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「台湾の温泉は水着着用が一般的だけど」裸で入れる“はだか湯”16選台湾の北部を旅してみた【イラストルポ】

CREA WEB / 2024年9月4日 17時0分

 今年6月、台湾の「裸で入れる湯」を詳細にレポートしたコミックエッセイ『台湾はだか湯めぐり 北部篇』(中央公論新社)を刊行した台湾出身の漫画家・捲猫(まきねこ)さん。刊行を記念して、台湾より来日した捲猫さんにお話を伺いました。


捲猫さん。

台湾の温泉は水着を着用するのが一般的

――まず、タイトルの「はだか湯」が目を引きますが、台湾では一般的な呼び方なのでしょうか?

 台湾の温泉は水着を着用するのが一般的なので、裸で入れる湯は「はだか湯」と呼びます。台湾では、温泉の近くで育った人たちは子どもの頃からはだか湯に慣れていますが、都市部で育ったり、近所の温泉が水着着用の場合は、裸で入ることに慣れていない人がほとんど。かくいう私も、はだか湯の文化に触れずに育ったので、大人になるまで入ったことがありませんでした。

――捲猫さんのはだか湯デビューはいつですか?

 実は、はだか湯に入ったのは日本が初めてでした。今から20年も前のことになりますが、当時、私は会社勤めをしていて、日本で開催されていた愛知万博の視察に行くことになり、そのとき泊まった旅館に大浴場があって。それで、同僚と一緒に入ってみたものの、裸の人たちに囲まれて緊張して、首から下に視線を落とさないようにするのに必死でした(笑)。


『台湾はだか湯めぐり 北部篇』より。

――それが今では、はだか湯めぐりが趣味に。ハマったきっかけはありますか?

 もともと私の母が温泉好きで、母と一緒に日本を旅行するようになって温泉に入る機会が増えました。母は観光もそこそこに、早い時間から「そろそろお風呂に行きましょうよ」と誘ってくるので、日本滞在中は温泉に入ることが日課に。それで私もすっかり温泉が好きになり、お湯に浸かると疲れも消えていったので、5年ほど前から台湾ではだか湯めぐりを始めました。

台北から公共交通機関で行ける

――今回は『台湾はだか湯めぐり』の北部篇ですが、どんな温泉が紹介されていますか?

 本書では、北投・烏来・金山・紗帽山にある16のはだか湯を紹介しています。温泉自体は台湾全土にありますが、「はだか湯」に限っては、比較的台湾北部に集中しているんです。北部の温泉は台北から公共交通機関で行けるので、旅行者の方も行きやすいと思います。


捲猫さん。

――イラストの中でも、浴室内部を俯瞰図で描いているのが画期的でした。これだけ詳しい取材をどのように進めていったのでしょうか?

 まず行きたい温泉のオフィシャルサイトを見て、おおよその雰囲気をつかみました。それから実際に現地へ行って入浴するのですが、館内は撮影禁止なので、「できる限り記憶して、家に帰ってすぐ描き始める」ということをひたすら繰り返しました。それでも忘れてしまって描けない部分がでてくるので、同じ温泉に2度3度と足を運んで、ようやく描き上げられる感じでしたね。

 しかも、俯瞰図を描いたのは今回が初めてだったので、想像以上に大変な作業でした。それでも、「自分が読者だったら何を知りたいかな?」と想像力を働かせて、なるべく細かい描写を心がけました。

なぜ、捲兎は頭にトイレットペーパーを乗せている?

――本に登場する主人公「捲兎」は捲猫さんご自身だと思いますが、なぜウサギにしたのでしょうか?

 原書を担当した台湾の編集者にも「めんどくさい設定ですね」といわれました(笑)。主人公は私なのですが、猫よりウサギのほうがほんわかした雰囲気で、ほんわりとした温泉のイメージにも合うなぁと思って、猫ではなくウサギになりました。


『台湾はだか湯めぐり 北部篇』より。

――なぜ、捲兎は頭にトイレットペーパーを乗せているのですか?

 これは私のペンネームに由来しているのですが、もともとのペンネームは、中国語でトイレットペーパーを意味する「捲筒」を使っていました。当時ロンドンに留学していて、このことを外国人の友人に話したら、「なぜそんな汚らしいものをペンネームにするの?」と苦言を呈されてしまい、それなら親しみやすい名前にしようと考えて、昔から猫好きだったので「捲猫」に改名しました。

 これは余談ですが、なぜ「捲」を残したかというと、昔は台湾でも日本と同じロール式のトイレットペーパーが主流でしたが、最近はティッシュペーパータイプに変わりつつあって、私はロール式のほうが好きだったので「捲」を使い続けています。

捲猫(まきねこ)

台湾台北出身。国立政治大学広告学科卒業。英国キングストン大学イラストレーション・アニメーション科イラストレーション専攻修士。動物を描くのが好き。大学・大学院卒業後、長らく同人誌会場に出没。独立出版物に、絵本スタイルのコミック作品『刺蝟的愛(ハリネズミの愛)』『捲兔的留英人生(捲兔の英国留学人生)』などがある。2022年、台湾・原動力文化より『捲兔的台灣裸湯:北部篇(台湾はだか湯めぐり:北部篇)』を刊行。温泉旅行と節約ライフが好き。人生の幸福とは、家族が健康であること、期限間近商品のショッピング、飲み物を買う時マイボトルを持参して5元割引してもらうこと。

文=田辺千菊(Choki!)
写真=石川啓次

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