体調の波を穏やかにするカギは「脳と血行」? 女性ホルモンによって起こる“ゆらぎ”を制するためのQ&A
CREA WEB / 2024年11月2日 11時0分
女性には、生理周期という月単位の波と、初潮から閉経までの大きな人生の波がある。それらの鍵を握る女性ホルモンについて知り、積極的にコントロールしていける自分になろう!
ホルモンは生命維持の要
「生理前の異常な食欲も、生理中のイライラも、全部ホルモンのせい!」。これ、間違ってはいないけれど、ホルモンをことさらに悪者扱いするのはちょっと待って。
「眠気を誘うメラトニン、幸福感をもたらすセロトニンなど、私たちの体は100種類以上のホルモンに支えられ、生命を維持しています。脳などでつくられたホルモンは、体を正常に保つ鍵のようなもので、血流に乗ってターゲットの臓器に運ばれると、そこにある鍵穴(受容体)にピタリと収まり、それぞれの役割を果たします」
そう教えてくれたのは、聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田の八田真理子院長。では、私たちの体調や気分に深く関係している女性ホルモンとは、いったい何?
「女性ホルモンと呼ばれるのは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)で、この2つのホルモンの分泌量が毎月一定の周期で変化し、排卵や月経が起こります」
女性には、生理周期による月単位の好不調の波と、初潮を迎えた10代から閉経後まで、ライフステージという視点から見た大きな変化の波がある。後者で重要になるのは、エストロゲンだという。
「プロゲステロンは、排卵後に増えて受精卵が育つ環境を整える、妊娠を維持するためのホルモン。PMSが重い人はプロゲステロンの感受性が高いと言われています。一方、エストロゲンは、微量で機能を発揮する鍵穴が全身にあり、美や健康を支える守り神のような存在です(下記、『全身で働く「エストロゲン」』参照)」
エストロゲンの分泌量は、一生でティースプーン1杯分ほど。初潮を迎える頃から閉経するまで、年代によって分泌量は変動し、その変化が女性のライフステージの大きな波に強く影響している。
「エストロゲンは35歳頃をピークに徐々に減っていき、45歳で更年期を迎えるとさらに減少。閉経後はほぼゼロになります」
全身に作用するエストロゲンだが、分泌量が多ければ多いほど、肌の調子や体調が上向くかと言えば、そうとも限らない。
「エストロゲンは車で言うならアクセル。ブレーキはプロゲステロン。女性の健康はこの2つのホルモンがバランスよく働くことで維持されています。エストロゲンが多すぎるとホルモン感受性の乳がんや子宮体がんのリスクを上げてしまうこともあります」
自身のエストロゲンの分泌量を知る方法はあるのだろうか。
「女性ホルモンはごく微量なうえ、一日の中でも、分泌量に波があります。ですから、血液検査ですらあくまでも目安。一度の検査の数値だけで判断するのではなく、経時的に値を見て判断する必要があります。ちなみに、卵巣以外では少量ですが、脂肪細胞からもエストロゲンが分泌されます。更年期になるとお腹周りがふくよかになり体重が増えやすくなるのは、減少してくる卵巣からのエストロゲンを補うためと考えられます。更年期以降は、ホルモンの視点から見れば“ちょいポチャ”がベストです」
ティースプーン1杯でこれだけの効果! 全身で働く「エストロゲン」
全身
□ 皮下脂肪を蓄え、女性らしい体つきをつくる
□ 肥満に繋がることも
脳
□ 海馬への血流を改善し、記憶力を高める
□ セロトニンの正常な働きを守る
髪・肌
□ 毛髪の成長をサポートする
□ 線維芽細胞を活性化させ、肌の潤いやツヤ、ハリを保つ
乳房
□ 乳腺を発達させる
□ 乳がんリスクを高める
子宮
□ 受精卵が着床しやすいように、子宮内膜を厚くする
□ 子宮内膜が厚くなりすぎると、生理が重くなる
□ 子宮体がんのリスクを高める
骨
□ 小腸でのカルシウム吸収を促進する
□ 骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する
血管
□ コレステロール値を下げる
□ 血管の弾力性を保ち、動脈硬化を防ぐ
波を穏やかにする鍵は脳と血行
では、女性ホルモンが過不足なく分泌されるかどうかは、何によって決まるのだろうか。
「ごく簡単にメカニズムを説明すると、脳からの『女性ホルモンを分泌して』という指令で、卵巣からエストロゲンやプロゲステロンが分泌され、その刺激で変化した子宮内膜の状態が脳にフィードバックされ、また指令が出されます。
脳で指令を出す視床下部は自律神経の中枢でもあるので、自律神経のバランスが崩れていると、女性ホルモンの分泌にも影響が出ます。反対に、加齢によって卵巣機能が低下しエストロゲンが減少すると月経が不順に。フィードバックにより脳が『もっと女性ホルモンを分泌して!』と過度に指令を発するため、自律神経が乱れてしまうことがあります」
“ホルモンのせい”だから、大きな波には、身を任せるしかない?
「そんなことはありません。生活習慣を整えることで、大きな波を穏やかにできます。最初に、ホルモンは血流に乗って運ばれるとご説明しましたが、血行がよい状態を維持するにはウォーキングや軽い筋トレなど、適度な運動が必須。指令を出す脳を休めるためにも睡眠時間は確保したいですし、体をつくる食事ももちろん大切です」
近年は若い世代でもストレスなどからエストロゲンの分泌量が一時的に減り、ほてりや多汗など更年期のような症状に悩まされる人が増えていると聞くが……。
「思い当たる人は、生活習慣を見直すとともに、婦人科を受診しましょう。血液検査で女性ホルモンの検査を行えますし、漢方薬、低用量ピル、ホルモン補充療法などの選択肢もあります。婦人科系の心配や症状は、決して軽視しないでほしいです」
もう振り回されない! ゆらぎを制するセルフケアは?
体のことをきちんと知れば、対処法は自ずと見えてくるから。女性ホルモンの分泌によって起こる毎月の体調の波を最小限に抑えて日々を快適に過ごすために、自分自身で今日からでもできることを知っておきましょう。
Q:エストロゲンを増やす方法はあるの?
A:大豆製品を食べる&運動する
エストロゲンを食事や運動である程度補うことはできます。大豆に含まれるイソフラボンが体内でエストロゲンに似た働きをするので、納豆、豆腐、豆乳、味噌などを毎日の食事で適量摂取するといいでしょう。また、運動をすると男性ホルモン(テストステロン)や成長ホルモンが分泌され、一部は体内で代謝されてエストロゲンに変換されます。ペットボトルを持って腕の上げ下げをするだけでもいいので、筋トレを日課にしましょう。
Q:PMS対策に良い食材は?
A:セロトニンやGABA不足を補う食材
PMSの一因として、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの不足や、ストレスの緩和や睡眠の質に関係する神経伝達物質GABAの不足が考えられます。セロトニンには、その材料となるトリプトファンを含む、バナナ、鶏肉、牛や豚の赤身肉、赤身魚、大豆製品を。GABAを補う食品にはトマトやかぼちゃ、発芽玄米などがあります。いずれも適量を日々の食事に取り入れるようにすることが大切で、食事が偏らないように気をつけましょう。
Q:生理周期の長い人と短い人は何が違う?
A:ホルモンの放出テンポが違います
脳の指令によって放出された卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンが一定量を超えると、排卵が起こります。ホルモンの放出テンポは人によって違うので、ホルモンが溜まるまでの長さに個人差が生じます。日本人はテンポが遅めで、生理周期は23歳で平均30.7日だそうです。生理周期は25~38日が正常範囲とされ、毎回一定ではなくても、変動が6日以内であれば問題ありません。
Q:PMSはなぜ起きるの?
A:体が妊娠に備えるから
排卵後に分泌量が増えるプロゲステロンには、妊娠に備えてエネルギーを蓄えるために食欲を増進させる、体内の水分を保持するといった働きがあります。つまり、これらの働きがPMSでよくあるむくみや頭痛を引き起こしているのです。PMSがあるのは排卵があり、妊娠できる状態だと言い換えることもできます。反対に、今すぐの妊娠を希望していない場合には、低用量ピルなどで月経をコントロールすることがPMS対策にもなります。
□ 妊娠に備えて、水分を溜め込む
・むくみやすくなる
・乳房も水分を溜めるので、胸が張る
・頭に水分が溜まれば、頭痛に
・便中の水分が減少し、便秘に
□ 妊娠に備えて、栄養を溜め込む
・食欲増進
・体重が増加する
憂鬱な時間を少しでも快適に。今日から出来るPMS対策
水分を溜め込みやすい生理前は、心身ともに不調を感じやすい時期。その不調の波に飲み込まれないよう、自分が取り組みやすい方法やアイテムを準備しておこう。
毎日のお風呂タイムに手軽によもぎの恩恵を
◆repoge fem FOR RELAX BATH TIME
ハーブの女王と呼ばれ、女性の悩みに働きかけることでもよく知られているよもぎ。こちらの入浴剤は、よい成分が凝縮されるという「3年熟成よもぎ」をメインに使用し、レモングラスやジンジャーなどのハーブをブレンド。入浴で血行を促進しながら、よもぎの効果にも期待!
多田
電話番号 078-392-3581
月経前の健やかな女性にサプリメントという選択肢
◆tocoelle
女性の健康を研究し続けてきた大製薬が、女性特有のサイクルに着目して誕生。ビタミンEの一種で名前の由来でもある「γ-トコフェロール」「γ-トコトリエノール」、そして、大豆由来の「エクオール」、「カルシウム」を含有した食品サプリメント。月経前の選択肢に加えてみては?
大塚製薬
肌への摩擦を極力減らし、ミニマルステップでニキビケア
◆トワニーアンドミー パウダーソープハグ〈洗顔料〉、デュアルウォッシュハグ〈クレンジング〉
生理前のニキビが気になる肌に負担をかけずケア。肌の摩擦を軽減するクレンジングや洗顔で、コンセプトの通り、「私をハグするように、慈しむように」優しくお手入れしながら、過剰な皮脂は落としてニキビを防ぐ。
カネボウ化粧品
環境にも配慮した良質なオメガ3系オイル
◆オメガジェニックス フィッシュオイル
ホルモンの材料となる油は、良質なものを意識的に摂取する習慣を。こちらのレモン風味のフィッシュオイルは、タラの捕獲からオイルの精製までを一貫して行い、フィッシュオイルの劣化を極力回避。オメガ3系脂肪酸(EPA、DHA)、天然型ビタミンA・Dを含有。
メタジェニックス
電話番号 03-6384-2391
ストレッチや筋トレをチューブの張力がサポート
◆MIVIOS ハンドルチューブ MVS302 SOFT・MEDIUM・HARD
握りやすいハンドル付きのチューブで、ストレッチから筋トレまでマルチにこなせる。チューブの張力を利用して、二の腕、脚、お尻など、鍛えたい部位をピンポイントで刺激。負荷は3種類から選べ、165グラムと軽量なので旅先や出張先にも持ち運べる。
ALINCO
女性特有の痛みのケアにCBDで優しく働きかける
◆PMSロールオンローション
リラックス効果のある注目の成分CBD(カンナビジオール)に、鎮痛効果が期待できるエッセンシャルオイルをブレンド。月経前や月経中に痛むお腹や腰などに塗布し、めぐりを整える。CBDは大麻草の茎や種子から抽出されるが中毒性はなく、その有用性はWHO(世界保健機構)の認めるところ。
Bella
電話番号 03-3687-0333
●お話を聞いたのは……
産婦人科医 八田真理子先生
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田院長。日本産科婦人科学会専門医。日本産婦人科医会母体保護法指定医師。地域に根ざしたクリニックとして思春期から更年期まで幅広い女性の診療・カウンセリングに当たっている。女性のヘルスケアに関する相談会やセミナーへの登壇などを通じて、正しい知識の啓蒙にも積極的に携わる。
文=今富夕起
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
月経痛がまんせず治療へ 低用量ピルや器具装着など合うものを
産経ニュース / 2024年11月21日 8時10分
-
81歳の現役医師が毎日飲む「命の野菜スープ」更年期障害や糖尿病を克服した秘伝レシピ
週刊女性PRIME / 2024年11月17日 6時0分
-
20代の女性の2人に1人が低用量ピルを服用した経験がある?低用量ピルの服用状況や目的などを調査
PR TIMES / 2024年11月3日 1時15分
-
【田中律子さん】53歳、更年期症状は?腸活は、沖縄ならではの「抗酸化作用」の高いもの【インタビュー】(前編)
OTONA SALONE / 2024年11月1日 18時0分
-
【医師監修】更年期前後でなりやすい病気とは?女性が気を付けるべき病気リスト12
ハルメク365 / 2024年10月28日 22時50分
ランキング
-
1【冬の乾燥対策に】ドラッグストアで手軽に買える! ハンドクリーム5選
マイナビニュース / 2024年11月21日 17時0分
-
2書店に行くとなぜか急にトイレに行きたくなる「青木まりこ現象」とは?
マイナビニュース / 2024年11月21日 16時2分
-
3【風呂キャンセル界隈】医師「心身が疲れた時こそ入浴を」 - 安全で健康的な方法とは
マイナビニュース / 2024年11月21日 11時0分
-
4とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
5生産性を上げ、まわりと差がつく5つの栄養素 ライバルを出し抜くために必要なのは「食事」
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 10時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください