『ヴィンチェンツォ』『涙の女王』の 憎めない役で注目!クァク・ドンヨン が練習生から俳優を目指した理由
CREA WEB / 2024年9月15日 11時0分
2012年に『棚ぼたのあなた』で俳優デビューして以来、話題作にひっぱりだこのクァク・ドンヨン。『ヴィンチェンツォ』(2021年)では、巨大企業の若き会長・ハンソを、『涙の女王』(2024年)では、ヒロインの弟のホン・スチョルを演じ、話題となった。
そんなクァク・ドンヨンが6年ぶりに来日。元々は歌手になることを目指していたというデビュー前の話から、俳優となってドラマ出演するようになって感じたこと、定評のある「コメディ」の演技についての話まで、大いに語ってもらった。
練習生から俳優の道へ
――今回、6年ぶりに来日してファンミーティングを開催するということですね。以前、日本に来たときに、印象に残った場所はありますか?
北海道のニセコに行ってスキーをしたりして、とっても楽しかった思い出があります。
――クァク・ドンヨンさんは、もともとは歌手を目指されていたそうですが、俳優として活躍するようになるまでの経緯を改めて教えていただけますか?
俳優になる前に、バンドとしてデビューするために14歳のときから練習生として準備をしていたんです。その頃に演技の授業も受けることがありました。その演技の授業がとても面白くて楽しかったということもあって、一度俳優のオーディションを受けてみたんです。そしたら、運よくうかりまして、そこから俳優の道が始まりました。俳優の仕事に、自由さと開放感を感じて、続けてみたくなったんです。
――どのような部分で開放感を感じたんでしょうか?
現場で俳優同士であったり、監督やスタッフさんたちと意見を交換したりすることが、とても興味深かったんです。その経験があったから、本格的に俳優の道に進みたいなと思い始めました。
「より新しいこと、より良いことをしたい」
――クァク・ドンヨンさんは、コメディの演技にも定評がありますが、そういうところにも自由度は関係していそうですね。
多くの俳優が口を揃えて言うことなんですが、“コメディはとても難しい”し、だからこそ挑戦したいジャンルなんです。私にとっても難しいことですし、挑戦したいことなんですけど、コメディに対しての愛情もあります。子どもの頃からコミカルなものが好きだったし、そういう感覚を生かして、場面作りに役立てたいと思っています。
そして、その試みが成功して、笑ってもらえたときは、とてもうれしいです。でも、人によって、何が面白いかっていう感覚って違うんですよね。だから、大多数の人の「面白い」という感覚に合わせることは、非常に難しいことだと思います。でも、その難しさを乗り越えて、誰かを笑わせることに成功したときの喜びはひとしおなんです。
――コミカルな作品や人で注目しているものはありますか?
コメディ映画は、たくさん見ます。特にジョーダン・ピールの関わった作品なんかはよく見ますね。
――ジョーダン・ピールというと、『ゲット・アウト』(17年)や『NOPE/ノープ』(22年)など、怖い映画のイメージも強いですね。
彼は、もともとコメディアンだったので、コミカルな作品にも出ていたんです。映画などを見てコメディを学ぶこともありますが、日常生活のいろんな場面でも、面白かったこと、楽しかったことなんかはキャッチして、自分の記憶の中にストックしておき、いざとなったら使おうと思っています。
――俳優になって、もっともハードルの高さを感じることはなんですか?
いろんな作品ごとに感じますし、いろんな役作りをするごとに感じるんですけれども、自分の経験に頼って同じことを繰り返すということは避けたいといつも思っています。より新しいこと、より良いことをしたいと常に思っています。ですから、役作りをするときに、自分がこれまでやってきたことを踏襲しないようにしようと努めています。
財閥の息子を演じる秘訣
――クァク・ドンヨンさんは、いろんなドラマで財閥の息子だとか、会長だとか、お金持ちの役というものを演じることが多いと思うんですが、そこでもやはり同じことを繰り返さない努力をされているのでしょうか。
そうですね。一緒に働いているスタイリストさんやヘアメイクさんに、いろいろと見た目から変えてもらうというようなこともよくしています。金持ちというと一般的にやはりスーツをビシッと着て、髪もちょっとオールバックにしているようなイメージがあると思うんですけれども、そういった先入観と言いますか固定観念をうまく利用したり、反対にその固定観念を避けるということをしています。
――そうやって役にいろいろ変化をつけて演じることで、最初はあまり関心を持っていなかった視聴者が、徐々にクァク・ドンヨンさんが演じるキャラクターに親しみを持ち始めるというようなことも多いような気がします。そういうキャラクター作りは、意識してやっているんでしょうか? それとも、台本に忠実にやっているのでしょうか?
それでいうと後者だと思います。台本からその人間的な姿を読み取って、できるだけ情報をキャッチして表現しようと思っています。そういうアプローチに成功すると、このキャラクターには、ここが足りないなとか、ここはおかしいなという部分があったとしても、そんなところこそがコミカルな魅力として伝わるんじゃないかと思います。そうすれば、本来は憎たらしい役でも、単に憎まれるだけではないというキャラクターを作ることができると思うんです。
作品に出るたびに台本を読み込んで、その人物の本当の役割はなんだろうということや、その人物の持つ多面的な部分をできるだけ引き出したいと思いますし、その人物像を隠すことなく全てを見せたいと思っています。やっぱり、現実に生きる私たちもいろんな面を持っていますので、演じる役についても、その人の多面的な部分をできるだけ表現しようと心がけています。
――今まで演じてきた役の中で、この人のここは共感できるなと思ったものはありましたか?
『ヴィンチェンツォ』に出演したときに演じたチャン・ハンソという役は、「誰にも負けたくない」「大企業のトップとして見られたい」という気持ちがすごく強い人物でした。でも、後半になるにつれて、主人公のヴィンチェンツォ・カサノ(ソン・ジュンギ)と距離がどんどん近くなっていくんです。その過程で、人に頼りたいという気持ちが出てくるんですけど、そういう気持ちって誰しも持っている部分だなと思えたし、共感できるなと思いました。
――「誰にも負けたくない」という気持ちは、ご自身との共通点でもありますか?
(日本語で)毎日、負けたくないです! 今日のような暑い天気にも負けたくないですね(笑)。
クァク・ドンヨン
1997年3月19日生まれ。2012年『棚ぼたのあなた』でデビュー。『雲が描いた月明り』(16年)、『サム、マイウェイ〜恋の一発逆転!〜』(17年)、『私のIDはカンナム美人』(18年)、『サイコだけど大丈夫』(20年)、『ヴィンチェンツォ』(21年)、『涙の女王』(24年)など出演作多数。
クァク・ドンヨン 日本オフィシャルファンクラブ
https://kwakdongyeon.jp/
文=西森路代
撮影=三宅史郎
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