hontoコミック担当・荻野晶さんの「いま人に薦めたい愛読マンガ」7冊「ふたりの関係を見守っていたい…!」
CREA WEB / 2024年9月14日 11時0分
CREA夜ふかしマンガ大賞2024
選考委員31名の愛読書と「マンガを読むときのマイルール」
この秋、発表された「CREA夜ふかしマンガ大賞2024」。選考委員を務めてくれたのは、小説家、お笑い芸人、ミュージシャン、マンガ家、テレビプロデューサー、ベテラン書店員など、各界を代表するマンガ好きの31名。
CREA2024年秋号では紹介しきれなかった、選考委員の皆さんのほとばしるマンガ愛を大公開!
「夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品」「人生で思わず夜ふかしして読んだ作品」「マンガを読むときのマイルール」など、マンガ好き必読のアンケートです。
荻野晶さんが「夜ふかしマンガ大賞に推薦するマンガ」
◆『どくだみの花咲くころ』城戸志保/講談社
小学5年生の信楽くんはキレやすくクラスでも浮いた存在。一方、優等生の清水くんは運動もできて家は裕福。ある日、図工の時間に盗み見た信楽くんの紙粘土の作品に心を奪われた清水くんは遠くから彼の観察をはじめることに……。
「タイトルの通り、どくだみの花咲くころに第1巻が発売されました。これはちょっと面白過ぎる。独特の空気感が漂う、すごい作品が出てきてしまったぞと。
癇癪持ちで、クラスでもちょっと浮いた存在である信楽くんの創作物に、心を奪われた優等生の清水くん。どこか冷めている様子だったのに、信楽くんの観察をはじめ、どんどん信楽沼にハマっていき、ヒートアップしていく様がなんとも愉快。一筋縄ではいかなそうなふたりの関係をとにかく見守っていたい……!
読んでいくと、清水くんが信楽沼にハマっていくように、『どくだみの花咲くころ』沼にずぶずぶハマっていく感覚がしました。こんな魅力的なキャラクターを表現できる城戸先生は、人生何周目なのでしょうか……? 説明しようとすると、私の語彙力では満足に伝えられないので、まず多くの方に読んでほしいというのが本音です」(荻野晶さん・以下同)
◆『佐橋くんのあやかし日和』三卜二三/イースト・プレス
「まったりほのぼの摩訶不思議な世界観に合うかわいらしい絵柄と、大きなできごとが起きているはずなのに、淡々と進む物語に心をぐっと掴まれました。これは……大変な良作です……! 老若男女問わず読んでほしい!
いろいろと引き寄せてしまうタイプの佐橋くん。奇々怪々な日常を当たり前のように受け入れている人々。なんとも言えない魅力でいっぱい。1話ごとにまとまっているので、1話ずつじっくり読むのも良いな~なんて思いつつ、結局一気読みして、その後何度も読み返しています。こんなのずっと読んでいられる……。続編を熱望している作品です」
◆『あくたの死に際』竹屋まり子/小学館
「読んだ瞬間、あぁ、すごい作品がまた出てきてしまった!! と大興奮。読む手を止められなくなる大好きな作品です。一気に引き込まれて、痛いくらいにグサグサ刺さります。言葉一つひとつが重たく、腹の底まで響くよう……。
凡人とは? 天才とは? 才能は必要なのか? もどかしく搔き立てられる焦燥感。人間に潜む狂気や葛藤。心をえぐるような表現と熱量に圧倒されます。マンガワンで連載も追っているのですが、更新されるのを心待ちにしている作品です」
人生で思わず夜ふかしして読んでしまったマンガは?
◆『嘘喰い』迫稔雄/集英社
銀髪にオールバックの青年、「嘘喰い」の異名を持つギャンブラー斑目貘を中心に、賭博倶楽部「賭郎」を介したギャンブルの世界を描く。
「一度読み始めると止められないタイプのため、頻繁に夜ふかしして読んでしまうのですが、『嘘喰い』を読み始めたら全然止め時がわからず、先が気になり過ぎて、ほぼ寝ずに一気読みしてしまったことがあります(全49巻)。今同じことをするのは体力的に厳しいだろうと思いますが、当時は読みたい欲>睡眠欲で、欲望のままに読んだあと、満ち足りた気持ちで爆睡しました。嘘喰いワールドから抜け出せずに変な夢を見て、翌日寝坊しかけましたが、それもまた良い思い出です」
荻野晶さんの「マンガを読むときのマイルール」
「本当に好きなマンガは電子と紙、両方で購入します。好きなマンガは紙で欲しいのですが、早く読みたくて0時を超えると電子で先に買ってしまうのです……。電子で買っておくと、出先で読めたり、友人にすすめたり、結果いろいろと便利なので買って後悔はありません!」
今、最も注目している新人作家とその作品は?
◆『ブブとミシェル ~雨上がりの天使~』コドモペーパー/トゥーヴァージンズ
堕天使が落ちてくる裏山で食材を探して散策していた少年・ミシェルは、死骸の中から卵を見つける。生まれてきた堕天使・ブブの寿命は1週間。最期まで見届けようとする孤独な少年と奇跡の物語。
「両親を病で亡くし、心に深い傷を負ったミシェルと、無邪気な堕天使・ブブによる愛と絆の物語。コドモペーパー先生の絵柄と、この作品全体を流れる空気感が大好きです。かわいく奇妙で切なくて、読んでいると胸がギュッとなります。忘れかけていた大切な何かを思い出させてくれるよう。大人にこそ読んでほしいおとぎ話のような作品です」
2024年食欲の秋におすすめのグルメマンガは?
◆『空挺ドラゴンズ』桑原太矩/講談社
空飛ぶ船捕龍船「クィン・ザザ号」に乗り、宙を舞う龍を狩る狩人「龍捕り」たちの旅を描くファンタジー。異世界グルメものとしても楽しめるマンガ。
「空と龍に魅せられた乗組員たちの冒険譚でありながら、おいしそうな龍料理が出てくるグルメマンガでもあります(実際食べることはできないのですが……食べてみたい龍料理)。毎回表紙がものすごく美しいので手に取る度に感動します。はじめは絵に惹かれ読み始めましたが、おいしそうな料理、徐々に掘り下げられるキャラクター、ファンタジーの中にあるリアル。好きが詰まった作品でした!」
2024年秋に読みたい「動物マンガ」は?
◆『プリンタニア・ニッポン』迷子/イースト・プレス
生体プリンターから生まれた、もっちりとした不思議な生き物と暮らすようになってから、無口な青年・佐藤の周辺はさまざまなできごとで賑やかに……。
「変だけど妙にかわいい生き物が出てくるマンガが好きです。一般的な動物とはなんだか違う、生体プリンターから出力されたすこしふしぎ(SF)な生物と暮らす日常譚。ゆるもちなプリンタニアに癒され、謎多き世界観も魅力的なSFです」
honto コミック担当
荻野晶(おぎの・あき)さん
話題作からBLまでマンガ全般をこよなく愛し、月に100冊以上読む雑食派。マンガのキャラクターを讃えるアワード「マガデミー賞」の審査員も務める。
■発表! CREA夜ふかしマンガ大賞2024
眠りにつく前のひとときに、日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる力のあるマンガを称える「CREA夜ふかしマンガ大賞」。昨年からはじまった一般読者による投票を一次選考として、200作品以上が候補にあがるなか、2024年のナンバーワンが決定しました。
文=大嶋律子(Giraffe)
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