『ベイビーわるきゅーれ』阪元裕吾監督(28)が明かす過酷な撮影
CREA WEB / 2024年9月27日 11時0分
ゆるい殺し屋コンビにファンが熱狂中
高校を卒業したての少々社会性に乏しい殺し屋コンビ“ちさまひ”こと、杉本ちさとと深川まひろ。2021年の映画『ベイビーわるきゅーれ』と2023年の続編『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』では、女優の髙石あかりとスタントパフォーマーであり女優の伊澤彩織の名コンビが“ちさまひ”を演じ、“だらだらとした日常”と“ハードコアな格闘シーン”のコントラストが受け、映画ファンから「ここ数年で見た最高のアクション映画」などの声が挙がった。
9月27日には最新作『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の公開が控え、今秋にはテレビ東京で“連続ドラマ版”の公開まで発表されている。弱冠28歳の阪元裕吾監督に、映画最新作とTVドラマシリーズの制作秘話について聞いた。
撮影現場も過去最高のハードさだった……
――前2作の楽しそうなデザインから一転して、血まみれで倒れる“ちさまひ”が衝撃的な映画第3弾のポスターですが、内容もこれまでとは違った雰囲気なのでしょうか。
阪元 ポスターは僕は関わっていないので何も言えないですが、雰囲気としては、今までの緩いノリを継承しつつ、いろんな場所に行ってはちさまひが観光しつつアクションをし、という観光映画感を大事にしました。せっかく宮崎に行くわけですからそこでしか撮れないものを目指しましたね。物語的にもいままでよりもハードな内容となり、まひろの葛藤や、それに対してちさとがより彼女に深く接しようとするという物語を構築しました。
――ファンとしては、シリアス路線化で“ちさまひ”のキャラクターが変わってしまうのではとの心配も出そうですね。
阪元 ふたりが揃って僕が脚本を書けば大丈夫だという自信はありましたが、劇中の世界観を逸脱した印象が出ないように、バランスにはとても気をつけました。鍵になったのが前田敦子さん演じる入鹿みなみという新キャラです。彼女は“ちさまひ”の会話に水を差す、先輩風を吹かせた嫌な役なのですが、彼女との関係性の変化もドラマのひとつになりました。実際ポスターのイメージよりもコメディ要素も沢山あるので、笑える映画には違いないという思いです。
――新キャラで言うと、前作の丞威さんと濱田龍臣さんコンビを超える“最強の悪役”として、『シン・仮面ライダー』で主役を演じた池松壮亮さんが登場するのも驚きました!
阪元 池松さん演じる冬村かえでは、150人目の殺しに執着しているヤバい殺し屋で、ボロボロの服を血に染めながら襲いかかってくる危険な存在です。一方で、弁当を買ったのにお箸をもらえなくて泣く泣く手で食べたり、真面目に殺し屋鍛錬ノートを付けていたりと、妙に人間臭い愛嬌があるのが気に入っています。
この愛嬌をかえでに持ち込んでくれたのは池松さんです。脚本だともっと悲壮感に満ちた性格だったのですが、セリフを細かく変えたり標的を仕留めるシーンで満面の笑みでガッツポーズするアドリブ入れてくれたりと、一度見たら忘れられないキャラに整えてくれました。韓国映画『哀しき獣』に出てくるミョン社長のような、超暴力的だけど、愛くるしいキャラを目指しました。
宮崎県庁舎でのアクションは必見
――本作は“ちさまひ”が旅行に行った宮崎県で巻き込まれるトラブルを描いていますが、日常から飛び出すのもシリーズとしては新しい展開ですね。
阪元 宮崎が舞台になったのはプロデューサーのアイデアです。僕はビジネス的に良さそうな要素があれば納得できる範囲でガンガン取り入れていきたいタイプなので、この案が出たときも「あ、そうしましょう!」と。
宮崎県庁舎でのアクションは必見です。県庁の人からは「庁舎の中で人が死ななければ問題ありません!」と言っていただけたので、ちゃんと庁舎の外で人が死ぬように気をつけながら、撃ち合いや殴り合いをしました。かなりハードな撮影の中、キャストもスタッフも本当に一丸となっての撮影で宮崎のみなさんも温かく見守ってくださり、色んな意味で忘れられない撮影でしたね……。
――映画に続きドラマシリーズも始まりましたが、どんな内容になるのでしょう。
阪元 深夜帯の放送なのですが、仕事に疲れた社会人がテレビを点けて偶然観たときに癒されてほしいというコンセプトで作っています。もちろんアクション要素もありますが、映画最新作がアクション濃度マシマシの作風なので、予算が潤沢ではない深夜ドラマがその希釈版になっては意味がない。かなりコメディ要素だったりハードな展開を増やして脚本で魅せなきゃいけないなという思いでやっていました。
――一作目からのファンは懐かしんで楽しむことができ、新規ファンは「ベビわるってこんな感じなのか」と入っていけるということですね。
阪元 まあ……そうであり違うというか。実を言うと、ドラマの中盤で数話かけて凄い強烈な展開を入れてしまったので、どう受け入れられるか不安ではあります。自分の中では「国岡YouTube」みたいな「胸糞悪い馬鹿に翻弄される主人公」っていう構図が大好きでよくやっているんですが、そこがかなりの尺を割いて描かれるので。あと社会と密接したブラックユーモアも含んでおり、その点ですかね……。
――どういうことですか!?
阪元 今言えるのは、“ちさまひ”がハチャメチャな事態に巻き込まれるということと、この脚本に関してテレ東さんが「過去に類を見ないほど完璧で直すところがないです!」と太鼓判を押してくれたということだけです。お楽しみに……。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』
2024年9月27日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:渋谷プロダクション
©2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会
監督・脚本:阪元裕吾
出演:髙石あかり、伊澤彩織
水石亜飛夢、中井友望、飛永 翼(ラバーガール)
大谷主水、かいばしら、カルマ、Mr.バニー
前田敦子
池松壮亮
音楽:SUPA LOVE
アクション監督:園村健介
公式HP:https://babywalkure-nicedays.com/
文=むくろ幽介
写真=石川啓次
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