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「将棋界は古参ファンが幅を利かせる ことなく、新入りにも優しいんです」 初心者に普及させたい将棋界の魅力とは?

CREA WEB / 2024年9月21日 11時0分


さくらはな。さんの“お宝”。藤井聡太七冠の手形も。

 将棋の世界のあれこれについて、将棋を漫画に描いているさくらはな。さんに語ってもらうインタビュー。#3では、さくらはな。さんがどのようにして好きな将棋を漫画にするようになったのかいきさつを聞いてみた。


こんなに楽しいと知ってほしい

――さくらはな。さん(以下さくらさん)は好きな将棋を漫画のお仕事にしています。それはどういうきっかけだったのでしょうか。

さくらはな。(以下さくら) 私が将棋を始めたのが2013年ごろ。本当に面白くて、自分がこんなに楽しいと思うことを皆さんにも知ってほしいと思いました。それで2016年頃からブログに将棋を題材にした4コマ漫画を描いて、それをTwitter(現X)で広めていました。拡散されたり、評判のいいものもあって少しずつ発表する作品を増やしていきました。

 将棋大会を通じて知り合った中に「ねこまど」という女流棋士の北尾まどか先生が代表をされている会社の仕事をしている方がいまして、私の漫画ブログを見たその方に「ねこまどのフリーペーパーで漫画を連載しませんか」と誘われたのが最初です。「駒doc.」という将棋ファンには広く知られているフリーペーパー。北尾先生にも「自由に描いて」と言われお引き受けしました。駒doc.は季刊で今も漫画を描かせていただいています。

ブログに発表した漫画からお仕事の話が


さくらはな。さん

――今は「えりりんの女流棋士の日々」の連載もありますし、将棋漫画やイラストのお仕事は他にもいろいろされているようですね。

さくら 竹書房さんからお話があったのは、2018年だったと思います。将棋好きの編集者さんから女流棋士の山口恵梨子さんにお願いできるので、山口先生のお話をコミックエッセイにしないかというお話をいただきました。やはりブログで漫画をみて下さっての依頼でした。女流棋士は、誰もが知っているような職業ではなく、その仕事ぶりを面白く漫画にできるか不安もあったのですが、山口先生の楽しいトークをネット中継やイベントでも知っていましたし、きっと面白い話をしてくれると信じてお引き受けしました。

 棋士の団体であり、将棋の総本山でもある日本将棋連盟から将棋を広めるための冊子に載せる漫画や、棋士の藤森哲也五段が開いている将棋教室のサイトに載せるイラストの依頼をいただいたりもしました。私の漫画を見て下さっての依頼でとても光栄です。

――さくらさんは、もともと将棋とは関係のない漫画家さんだったのですか。

さくら そうです。デビューしたのはずいぶん前だったのですが、そこからお仕事がなくて……。人気漫画家さんのアシスタントをしたり、単発でイラストを描いたりのお仕事をしていました。売り込みしないとお仕事もらえないので「こういうのを描いてます」と売り込みに行ったりも。でも、将棋のお仕事では売り込みはしたことないのです。みんな私のブログや、先に公開されていた他のお仕事の漫画を見てご依頼いただいて、ありがたい限りです。

漫画で将棋に興味を持ってほしい


持参いただいたさくらはな。さんの“お宝”たち。

――好きな将棋を仕事にしたいという野望はあったのですか。

さくら そんな野望はあまりなくて「将棋楽しいからみんな見て!」と漫画をブログに描いていたら、そこからお仕事につながったという感じなんです。お仕事いただけるのは、将棋の漫画を描いている人が少ないのもあったかもしれません。

 将棋の世界では「普及」という言葉がよく使われます。将棋を広めることを意味するのですが、プロの棋士、女流棋士はもちろん熱心に普及活動をしていますけれど、アマチュアにもそんな方がたくさんいます。自分の利益には全くならないのに、将棋の練習会を開いて楽しく将棋を指せる場を設けてくれたり。私はそんなことはできないけれど、漫画で将棋を知ってもらう普及ができればいいなと思っています。なるべく将棋への敷居を低く感じてもらえるように、興味を持ってもらえるように心がけてきました。

 古参のファンが幅を利かせて、新入りが入りにくい雰囲気は将棋界には比較的少ない。優しい人が多いです。それは古参の人に「将棋ファンが増えるのはいいこと」と思っている方が多いからと私は思っています。

――イベントにもしょっちゅう参加されているようですけれど、それは漫画の取材の一環なのでしょうか。

さくら いえ、楽しそうなものは自腹で申し込んでいます。将棋会館は大阪と東京の2か所にあり、老朽化で東西ともに建て直しをして、間もなく完成。その費用はクラウドファンディングで集められていて、人気棋士と直接お話しできるイベントなど、魅力的なリターンがたくさんありました。コラボ企画で藤井聡太七冠のお名前入り駒を持ったピカチュウのぬいぐるみとか、話題を集めたものも。将棋ファンの皆さんの協力でなんと9億円も集まったんです。私も、高いリターンではありませんが、新・将棋会館見学ツアーに申し込みました。

 大盤解説会を見たくて名古屋まで行ったこともあります。万松寺という繁華街にあるお寺が会場でした。タイトル戦は両対局者に供されるおやつも注目され報道されるのですが、同じものが解説会でファンに販売されていたのも良かったです。

 将棋漫画でお金をいただく分と、教室に通ったり楽しそうなイベントにあれこれ参加したりしてお金を出す分と比較すると、赤字なときもあるかも(笑)。

(インタビューに立ち会っていた『えりりんの女流棋士の日々』担当編集者が一言。「新将棋会館でしたら、自腹を切らなくてもこちらで取材をしていただこうと思っていましたよ」)

さくら ええー。早く言ってくださいよ。楽しそうなリターンなのですぐに申し込んでしまいました。

知られていないネタを提供してくれる


さくらはな。さん。の“お宝”、永瀬拓矢叡王(当時)の直筆扇子。

――旧将棋会館(近く取り壊し予定)の中を山口恵梨子女流三段に案内してもらっている様子は漫画にされていましたよね。

さくら はい。私はマニアックというか普通は見られない裏の部分を見たくて給湯室にも案内していただきました。押し入れに布団が用意してあることも漫画にしましたね。将棋は朝10時に対局が始まり、23時を過ぎることも珍しくないのですが、電車が無い時間になることもあって、記録係をする奨励会員(棋士の養成機関で修行をしている会員)はその布団で仮眠して帰ることもあるそうです。

――『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』の漫画制作の流れを教えて下さい。

さくら 山口先生への取材は3~4カ月に一度です。Zoomで2時間くらい。連載3~4回分のネタをまとめて聞きます。漫画だからセリフだけではなく背景も必要です。この部屋には何人くらい、誰がいて、こんなものが置いてあった、そんなことも細かく質問します。

 連載は1回6ページ。まず、山口先生のお話を録音したものを文字に起こします。そしてプロット(大まかなストーリー構成)を作り、ネーム(セリフと絵の下描きで構成する)を描き、編集者のOKが出たらデジタルで絵を描いて仕上げます。途中で山口先生や日本将棋連盟にチェックもお願いしています。

 今は将棋の記事がたくさん出ています。山口先生はそんな記事には出ていない新しいネタをよく話してくれ、きっと記事をよく読んで考えてくれているのだと思います。でも漫画になっても問題にならないようにも気を付けていただいて、大きな修正が入ることは滅多にありません。

――好きなことを漫画にして大勢の方に読んでもらっているわけですが、同じように好きなことを仕事にしたい人へアドバイスはありますか。

さくら ブログとnoteに漫画を描いて、最初にお仕事のお話をいただいた頃には、ある程度作品が溜まっていました。私の場合それが準備期間だったと思います。ブログにメールアドレスを載せていて、そこからお仕事の依頼が来たこともありました。連絡しやすくするのは大事かも。

 ただ、趣味ならばやめられるけれど、お仕事にするとやめにくいとか、好きな世界の嫌な部分が見えてしまうとかデメリットもあり、あまりお勧めできない部分もあります。将棋に限らずどんな世界でもそうだと思うのですが。

――これから描いてみたいことはありますか。

さくら もちろん「山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々」は長く続けたいです。実在の棋士、女流棋士の方が登場する漫画なので、迷惑をかけないように気を付けながら。他には、プロ棋士の一歩手前の過酷な三段リーグには様々なドラマがあると思うので、いつか描いてみたいなと思っています。

さくらはな。
マンガ家

千葉県出身。2013年5月3日に突然将棋を始める。将棋フリーペーパー「駒doc.」にて『将棋好きに成りました!』、竹書房「本当にあった愉快な話」にて『えりりんの女流棋士の日々』を連載中。著書に『将棋「初段になれるかな」大会議』(扶桑社)などがある。
X:@kusattamarimo

文=宮田聖子
撮影=松本輝一

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