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100年前の景観を残す兵庫「城崎温泉」“町全体でひとつの宿”だから、連泊して町めぐりを楽しみたい

CREA WEB / 2024年9月22日 11時0分

 CREAがはじめてひとり温泉を特集して7年。当時は「女性がひとりで温泉なんて!」と驚きを持って受け止められたこのテーマも、いつしか珍しくない光景となりました。

 好評発売中の「CREA」2024年秋号では、コロナ禍を経て、進化する“温泉地”を舞台に、めぐる旅を大特集しています。


コウノトリが運んできたローカルフード


大正から昭和初期の建物をイメージした「柳湯」と、二俣公一など有名建築家が手がけた建物、そして浴衣姿が驚くほどしっくりなじむ町並み。

 糊の効いた浴衣に袖を通し、ひとりそろりと町に出る。くすぐったさはのっけだけ。時空を超え、映画のセットに忍び込んだような町並み、エキストラよろしく行き交う同じ着姿の人々。外湯をめぐり、体はほてり、やがて浴衣が着なじみするころ、昔なじみの自分が現れた。

 バブル景気の波にもあらがい100年前の景観を保ち続ける兵庫・城崎温泉。めぐりめぐっていま、多様な旅人の心をとらえた。テーマパーク気分で訪れる若者も増え、また日本の文化体験を求める外国人観光客においては、8年で45倍にも。つれて素泊まりもできる、ひとりにもやさしい宿や店が増えた。


「富士見屋」の内湯はこぢんまりとしていながらすっぽり、山の緑にあたたかに包まれているような気分に浸れる。

 昨年改修を終えたばかり、路地奥に佇む旅館「富士見屋」もそのうちの一つ。「不必要なおもてなしや接触はしません」と言い切る若女将の松本美子さんは、もと旅雑誌の編集者。これまでのひとり旅経験から、付かず離れず、無沙汰にならず、気詰まりをほぐす設えやサービスを行き届かせる。「お風呂は小さいですので外湯にどうぞ」と、入浴券を渡される。

「町全体でひとつの宿」を標榜する城崎は、どの旅館も内湯は最小限、個性とりどり6つの外湯が待つ町へと誘い出す。人気は全面露天の「御所の湯」や洞窟風呂のある「一の湯」、また通りの足湯に浸かり憩う人もちらほら。この賑わいの背景には「湯はそもそもみんなのもの」という、わかちあいの精神が貫かれていることにある。


約100年前に建てられた映画館「豊岡劇場」は、空間や家具も趣深いカフェのようなムードを醸す。上映を待つ間から、すでに物語は始まっている。

 もし連泊が許されれば本領発揮、ひとりを持て余させない文化的な場があまたある。いろんな意味で“トリップ”できる映画館、選書センスも居心地もいいブックカフェ。「日に何度も来るひとりのお客様もいらっしゃいます」とは「短編喫茶Un」の藤原みなさん。電車待ちなどのスキマ時間に読書に耽るもよし、おこもりブースもあるので、気になる仕事を片付けてしまうのもいいだろう。

 また外食のレベルもすこぶる高い。その理由を辿ると、1971年に絶滅したコウノトリに行き当たった。地域をあげて復活を試みるなか、昔ながらの自然環境に戻す必要があると、無農薬やあいがも農法などの栽培に切り替える野菜や果物の生産者が増加。ただ少量多品種ゆえ流通に乗せづらく、代わりに反応したのは界隈のお店や旅館の料理人たち。その共存共栄の関係により、ローカルフードカルチャーが育まれた。


絶大な人気のレストラン「OFF」では、ナチュラルワインとその季節、その日に合う素材で料理を供してくれる。

「距離が近いですし、みんなすごく仲いいんで」とは、ナチュラルワイン好きがわざわざめざして訪れる「OFF」のシェフ、谷垣亮太朗さん。都内のレストランを経ていま「この瞬間、ここでしかできない料理」に心を注ぐ。「食材をものとしてじゃなくて、人として見ているので気持ちが乗るし、それをお客様にも伝えたいから」

城崎温泉を、めぐる

 めぐる篇では、城崎温泉や定山渓温泉など、いわゆる温泉街のみならず、阿蘇や那須など、これまで温泉地としてはあまり特集されてこなかったエリアにも注目。インバウンド客の影響で、「泊食分離」という食事は宿の外で楽しむ文化も広がり、ひとりに優しい温泉街も増えています。

◆PARADI


「PARADI」

「PARADI」

 朝食はもっちり引きのいいクロワッサンやタルティーヌ、昼下がりにはシュークリームなどペイストリーとともに、複雑な風味のお茶を。

 大谿川に面したロケーション。コンテンポラリーなデザインセンスと温泉情緒の対比に萌えて。


「PARADI」

PARADI

所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島538
電話番号 なし
営業時間 9:30~16:00
定休日 木曜
●現金のみ

◆OFF KINOSAKI


「OFF KINOSAKI」

 ナチュラルワインを楽しむレストラン。近くの生産者が作る在来種の野菜や果物、但馬牛などローカル食材の組み合わせによる旬の料理を、軽やかにサーブ。グッズも可愛い。


「OFF KINOSAKI」

OFF KINOSAKI

所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島528
電話番号 0796-21-9083
営業時間 11:00~15:00L.O.、18:00~21:00L.O.(水・日はランチのみ)
定休日 月・火曜

◆豊岡劇場


「豊岡劇場」

 城崎温泉から電車で2駅の豊岡にある映画館、通称“豊劇”。1927年芝居小屋として創業、2度の休館を乗り越え見事復活。

 スクリーンは2つ、単館系からアニメまで幅広いラインナップ。シートは清潔で座り心地も快適。

豊岡劇場

所在地 兵庫県豊岡市元町10-18
電話番号 0796-34-6256
営業時間 HPを確認
定休日 木曜
https://toyogeki.jp/
●現金のみ

◆てらたに酒店


「てらたに酒店」

 2023年に改装したカウンターで気軽に日本酒の飲み比べができる角打ちありの酒屋。取り扱うのはおもに丹波や但馬で醸される地酒や地ビール。

 店主の寺谷夫妻はつくり手の思いを伝える語り部として、また町のハブとしても機能する。

てらたに酒店

所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島227
電話番号 0796-32-2659
営業時間 8:00~20:00
定休日 不定休

創業300年の名宿に泊まる

◆短編喫茶Un


「短編喫茶Un」

 BACHのセレクトによる小説から詩歌、写真集など“小さな物語”(短編小説)が約3,000冊、すべて購入可。

 2フロア80席の店内には人気の生バターどら焼きや、フリードリンクパス1day 1,200円、2days 1,800円もあり。

短編喫茶Un

所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島127
電話番号 0796-32-4677
営業時間 10:00~17:00
定休日 木曜

◆おけしょう鮮魚


「おけしょう鮮魚」

 漁港からの近さゆえ、冬のカニはもちろん、ノドグロや赤ムツなど、朝に獲れた旬の魚を安く供する鮮魚店。自分の選んだ魚を干し、次の日に受け取れるサービスも。また部屋で食べられる惣菜や、2階には食堂もあり。

おけしょう鮮魚

所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島132
電話番号 0796-29-4832
営業時間 8:00~17:30
定休日 無休

◆三木屋


「三木屋」

 創業300年の名宿が、おひとり様向けの部屋を開放(電話予約のみ可)。

 一品ずつがしみじみおいしい朝食やライブラリー付きラウンジもあり、希望者は『城の崎にて』を生んだ志賀直哉ゆかりの客室も見学可能。


「三木屋」

「三木屋」

三木屋

所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島487
電話番号 0796-32-2031
客室数 16
ひとり料金/1泊2食付き 24,000円~
ひとり対応/時期限定
アクセス JR城崎温泉駅より徒歩約12分、送迎あり

◆富士見屋


「富士見屋」

 80段の階段を上った先にある山荘と呼ばれる離れ部屋は、通りの下駄の音もせず、里山の静寂を楽しむことができる。

 寝具は話題の「コアラマットレス」シリーズを採用。


「富士見屋」

富士見屋

所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島730
電話番号 0796-32-2624
客室数 12
ひとり料金/1泊2食付き 22,000円~
ひとり対応/繁忙期を除く通年可
アクセス JR城崎温泉駅より徒歩約8分
●宿泊代はWEB決済、現地では現金のみ


 「めぐる旅」と「こもる旅」をテーマに47都道府県のひとりにいい温泉宿68軒、旅の目的地になるサウナと蒸し湯10軒など、最旬の温泉スポットを特集した「楽しいひとり温泉。」は、「CREA」2024年秋号でお読みいただけます。

文=山村光春(BOOKLUCK)
写真=西山 勲

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