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「運動部女子みたいになってしまう」髪を結ぶとき、不器用な人が間違ってやってしまっていること

CREA WEB / 2024年9月22日 11時0分

 まとめ髪やヘアアレンジに苦手意識を持っている方は多いのではないでしょうか。

「ポニーテールにしたつもりが、結ぶと運動部の中学生女子のようになってしまう」、「不器用だから、流行りのウェットスタイルのまとめ髪に挑戦できない」、「モデルやインフルエンサーの方は小顔だからサマになるだけで、私にはムリかも」。

 確かにギュッと一つ結びをすると、芋っ子になってしまいがち。しかし、実はいくつかのポイントをおさえるだけで、小慣れた雰囲気のヘアアレンジをマスターすることができます。

 そこで今回は、苦手な方も上手にアレンジできるようにするための基本的なお話から、すぐに取り入れられるアイテム、流行のウェットスタイルの攻略法に至るまでを、ご紹介します。


うまくできないのは、私が不器用だから?

 美容師としてお客様と接していると、まとめ髪などのヘアアレンジに苦手意識を持っている方がたくさんいることを実感します。

 苦手だと語る方は、「私は不器用だから」だとおっしゃることが多いのですが、まとめ髪がうまくできない理由は他にあるかもしれません。まとめ髪がうまくできるか否かは、実は「髪質」による影響が大きいのです。

 まとめ髪がやりづらい髪の特徴は、「直毛」「ツルツル」「多毛」の3つです。これらは特に日本人に該当しやすく、いずれか一つでも該当すると、まとめ髪などのヘアアレンジ全般がやりにくくなります。

「ツルツルした直毛」は、髪同士が絡まない

 例えば、「子供の頃から三つ編みが苦手だった」という方もいらっしゃると思いますが、そんな悩みを持つ方は「ツルツルした直毛」であることが多いです。

 アジア人は特に、ウェーブの少ない「ツルツルした直毛」の方が多いです。この髪質は、よく言えばアジアンビューティーなストレートヘアなのですが、ヘアアレンジが苦手な方にとっては、扱いにくい髪質です。

 そもそも、ヘアアレンジは「柔らかいウェーブ毛」の方がやりやすい。なぜなら、髪の毛が絡まりやすく、解けにくいからです。

 たとえば、「ツルツルした直毛」を三つ編みしようとすると、髪同士が反発してしまうため、簡単に解けてしまいます。解けないように毛束を引っ張りつつ編もうとすると、毛束を持つ手に力が入って、指もうまく動きません。

 対して、「柔らかいウェーブ毛」は、三つ編みが絡まって解けにくくなることから、力を抜いて編むことができます。ですので、美容室のヘアセットにおいても、ほとんどの場合コテやカーラーなどを使って髪にクセ付けして、扱いやすい髪にしてからセットを始めています。

 加えて、「ツルツルした直毛」をポニーテールなどにしても、毛先がツンツンしてお洒落に見えにくい傾向があります。

 ステキなポニーテールは毛先のウェーブがヒラヒラ揺れるイメージがあるため、ウェーブがある髪質の方が、ささっと結んだだけでもサマになりやすいのです。

「多毛」だと、ヘアゴムでは留まらず緩んでしまう

「直毛」や「多毛」だと、ヘアゴムがうまく留まらず、ヘアアレンジがやりにくい傾向もあります。一般的なヘアゴムで一つ結びをしても、圧が弱く段々と緩んでしまって、何度も結び直すハメになってしまいます。

 そのため、ヘアゴム選びでは、デザインよりもとにかく留まってくれることを重視する方も多いようです。バネのようにグルグルしたタイプがホールド力があって好評ですが、このデザインは中々お洒落になりにくいのが残念なところ。

 更に、「多毛」だと、アレンジをする毛束の一つ一つが太くなり、毛束が指で掴みづらいことも多いはずです。

 そのため、どうしても「多毛」だとヘアアレンジの難易度は上がってしまうのです。

まとめ髪をするときの、最低限のポイント

 まとめ髪には、どんなスタイルであっても共通する大事なポイントがあります。苦手意識のある方は、このポイントを見逃しているのかもしれません。

 そこで、一番基本的なヘアアレンジと言える、一つ結びする際に一番大事な見た目のバランスについて解説します。

 見た目のポイントは2つ、「前からの見え方」と「横からの見え方」です。

【前からの見え方】トップをつまんで三角にするのがセオリー

「前からの見え方」の第一歩は、トップの毛束をつまんで引き上げ、シルエットが三角形になるように意識することです。ふんわり系アレンジが定番化したことで、多くの方が実践するようになったテクニックですが、簡単にバランスよく見せられる常套手段です。


トップのフォルムが三角形になることを意識

 この際、ゴムで髪を縛った後にトップの毛束をつまんでも、引き上げにくく頭皮も痛めやすいので、縛る前に片手で毛束を緩めておいた方がストレスなく引き上げることができます。引き上げる位置は「前髪の後ろ」か、前髪がない場合は「一番てっぺんの部分」を意識するのが良いでしょう。

「一番てっぺんの部分」がふんわりすると、同時に後頭部もふんわりするため、後頭部が絶壁に見えにくく、「横からの見た目」も良くなります。

 この「トップを三角にする」と見た目が良くなる理由は、頭が「卵型」に丸く、バランスがよく見えるようになるからです。

 東アジア系の頭は、「ハチ(頭の上の両サイドの骨張っている部分)」が張っていることが多く、ギュッと縛ると頭が四角く見えやすくなります。

 ピチッと結ぶとバランスが悪く、全身に対して頭が大きく見えてしまいがちな理由はこれです。

 これをトップが「ふんわり」するように毛束を引き上げることで、トップのフォルムが三角に変わると、全体が「卵型」のように見え、ハチを目立たないようになります。すると、全体がバランスよく、スッキリして見えるようになるのです。

【横からの見え方】結び目の位置で印象は様変わりする

 一口に一つ結びといっても、「結び目の位置」によって印象は様変わりします。

 美容業界では、「顎の先」から「耳の一番高いところ」を結んだ上の点を「ゴールデンポイント(GP)」と呼びます。例えば、この「ゴールデンポイント」の位置に合わせてポニーテールをするとバランスよく見えやすいとされるなど、ヘアアレンジでは特に意識されている場所です。

 しかし、実際は、ヘアアレンジをする際にゴールデンポイントより低い位置で結ぶ方が多いかと思います。なぜなら、ゴールデンポイントより上に結ぶとかなり子供っぽく、キャラクター性の強い印象になるからです。例えば、一昔前に流行した「盛り髪」には現実離れした華やかさがありましたが、これも結び目がかなり高い位置にあったからです。

 下の図は、お団子スタイルの結び目の位置の変化を表しています。結び目の位置が少し違うだけで、見た目に大きな変化が起きることがわかるでしょうか。


お団子スタイルも、結び目の位置で印象が大きく変わる

 結び目の位置が高いと「活発、カジュアル、幼い」印象に、低いと「控えめ、シック、大人」な印象になります。近年は低めにまとめるスタイルがトレンドですが、4.5.6ぐらいの違いでも、意外なほど見た目に影響します。

 このように結び目は、一段ズレるだけで印象が変わります。「自分がなりたいイメージと、なにか違うな?」と感じる方は、実はこのバランスが少しだけズレているのかもしれません。

まずは必須アイテムで苦手を解消しましょう

 苦手意識を乗り越えて、ヘアアレンジに再度挑戦してみたい。そんな方に向けて、ヘアアレンジを簡単にしてくれる便利アイテムを紹介します。まずは、これら3つの必須アイテムを利用してみましょう。

①ヘアオイル、バーム、ヘアクリームで扱いやすく

 まとめ髪をする上でヘアオイル、バーム、ヘアクリームは最重要アイテムです。なぜなら「見た目の印象」と「扱いやすさ」の両方を簡単に改善できるからです。

 これら油分を与えるスタイリング剤は、付けるだけで艶感やまとまりが生まれます。すると、無造作に結んでもバサバサ感は少なくなり、束感が出ることでキレイな立体感が出やすくなります。

 更に、不必要な後れ毛も出にくくなり、結ぶ作業をしている際中も髪が手に付いて扱いやすくなるなど、いいことだらけ。

 これらのアイテムの粘度の順は下記の通りです。

■【サラサラ】ヘアオイル→バーム→ヘアクリーム【もったり】

 ヘアクリームは、髪に指通りのよさが残りつつ少しもったりした触感になるので、まとめ髪に慣れていない方には特にオススメです。髪がスルスルと滑ることが減り、扱いやすさが段違いによくなります。

②小さいヘアゴムは、何個も使う

「ヘアゴム」というと、手首に回しておける大きめのものがポピュラーですが、指2〜3本が入る程度の小さく透明なヘアゴムもオススメです。

 髪をしっかりホールドでき、髪に絡みつくことは意外と少ないです。多くの場合パック売りで、1パックにたくさん入っているため、複数使いしやすく、細かく結んでまとめることができます。1個1個は切れやすいのですが、安価なため使い捨てする感覚で利用しましょう。

③くるりんぱスティックで、手際よく

 ヘアアレンジをする際の「簡単テクニック」として広く知られるようになった「くるりんぱ」は、結び目をくるんと入れ込むことで雰囲気が一変するテクニックです。

 これを更に簡単に行うための道具「くるりんぱスティック」をご存知ですか? 「くるりんぱスティック」の輪っかに毛束を通して引き抜くだけで、簡単でキレイなくるりんぱを作ることができます。ご存知ない方は、ぜひ動画を検索してみてください。

「くるりんぱスティック」の最大の利点は、くるりんぱが簡単に何回もできることです。小さいスティックを利用すれば、小さいくるりんぱも簡単。三つ編みが苦手な方でも、「小さいヘアゴムで結ぶ→スティック→くるりんぱ」の繰り返しをすると、一見してくるりんぱには見えない華やかなアレンジも可能になります。

ふんわり系スタイルとウェットスタイルの違い

 すでに定番化したふんわり系アレンジですが、依然として人気です。バランスよく見えやすく、アレンジの難易度が低いからこそ多くの人に取り入れられているので、今後も普遍的に支持されることでしょう。ヘアアレンジ初心者はぜひ挑戦してみてほしいスタイルです。


ヘアアレンジ初心者は、ぜひ難易度の低いふんわり系アレンジを

 一方で、近年流行中の「ウェットスタイルのまとめ髪」は従来のふんわり系スタイルとは対照的に、ピチッとタイトな印象にしているのが最大の特徴です。

 このニュアンスをステキに取り入れたいけれど、ウェットスタイルでは、先述した「トップをつまんで三角にする」テクニックが使えないのでは? と感じている方も多いはず。

 実は、ウェットスタイルの最重要ポイントは、「コームでとかす」ことです。髪にしっかり目にヘアオイルをつけた後に、一度コームで髪の表面を整えた状態からアレンジを始めると、雰囲気が出しやすくなります。


ウェットスタイルの最重要ポイントは「コームで髪の表面を整えること」

 そして「トップをつまんで三角」は、控えめにやっても充分効果があります。顔周りはピチッと髪の表面を整えることを意識しつつ、トップはつまんで引き上げると、バランスのよいヘアアレンジになります。

 その際に、従来のふんわり系アレンジのときよりもトップから引き出す毛束を減らし、引き出し具合を控えめにするのがコツです。

 また、「直毛じゃないとウェットスタイルはできない」ということでもありません。元々ウェーブがある方でも「コームでとかした髪の表面」が整って見えていれば、ウェーブ具合が残っても、雰囲気よく仕上がります。

 個人的には、むしろピチッとし過ぎないようにすることを意識した方が、ウェットスタイルを上手に取り入れられると思います。


モードなウェットスタイルでも、トップはふんわりさせるとバランスよく見える

ヘアアレンジは、覚えればずっと使える

 まとめ髪やヘアアレンジはやり方を一度覚えておけば、今後もずっと使うことができます。

 流行のスタイルも我々美容師からすれば、「昔からあるスタイルの応用、派生版」として見えています。トレンドは少しずつ変化しますが、テイストが変わっていくだけで、大事なポイントはほとんど変わっていません。

「慣れ」には時間をかける必要がありますが、苦手意識がある方も、身に付けば一生、です。ぜひ、諦めずにチャレンジしてみてください。

文・イラスト=操作イトウ

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