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兼好法師の哲学に触れる温泉宿 南紀白浜「くろしお想」で、美しさの本質を見つめるひとときを

CREA WEB / 2024年9月29日 11時0分

 CREAがはじめてひとり温泉を特集して7年。当時は「女性がひとりで温泉なんて!」と驚きを持って受け止められたこのテーマも、いつしか珍しくない光景となりました。

 好評発売中の「CREA」2024年秋号では、コロナ禍を経て、進化する“温泉地”を舞台に、めぐる旅を大特集しています。


心が動く瞬間を見つめ直す

●くろしお想[和歌山/白浜温泉]


和の植物を取り入れたアプローチ。

ピクトグラムはアートディレクター・山口崇多氏によるもの。

 三大随筆の一つ『徒然草』に、こんな一節がある。「花は盛りに、月は隈無きをのみ見る物かは。雨に向ひて月を恋ひ、垂れ籠めて春の行方知らぬも、なほ、あはれに情け深し」。

 この「桜は満開、月は満月だけが価値のあるものだろうか、花や月に憧れる気持ちこそが趣深いのだ」という兼好法師の哲学を汲み取り、コンセプトにした宿が南紀白浜の丘の上にある。


開放的で明るいロビー。テーブルとベンチには、土の中に眠っていたという、樹齢100年を超える紀州杉を使用。

 古くからあった保養所を、地元の紀州材などをふんだんに使って再生。

 地域に綿々と受け継がれてきた文化と、建物が刻んできた歴史が伝わってくる空間からは、有機的な営みが感じられるだろう。


館内の階段途中に設けられた窓からも、雄大な自然を感じられる。

ベッドの向こうに南紀白浜の絶景が広がる部屋「暁近く成りて」。寝具は生地に温泉ミネラル成分を含んだ「YUAMI」を採用。

 エントランス、ロビー、客室、温泉。宿のどこにいても、心が満たされていくのだ。

 大きな窓から見える海、山、そしてそこから差し込む光や影からは、兼好法師が説く、本質的な日常の美しさに触れられるはず。

千年以上の歴史を持つ白浜温泉の湯と料理を味わう


食事はミシュラン一ツ星を持つ日本料理店「てのしま」の林亮平シェフ監修。夕飯のコースメニューは季節によって変わる。写真は「熊野牛のアスパラごはん」。

檜浴槽の源泉かけ流し貸切風呂。贅沢な時間を過ごそう。

 土地の歴史を紐解きながら生み出された日本料理を味わい、千年以上の歴史を持つ白浜温泉の湯に癒されたあとは、徒然なるままに、心と向き合い言葉を紡ぐ時間を過ごすのはどうだろうか。


感情と向き合い、想いを綴るひとときを。紀州手漉き和紙「保田紙」のオリジナルレターセットはおみやげにも。

各部屋に、地元の書店「ivory books」が書くことや暮らし、アートなどをテーマに選書した本が3冊ずつ置かれている。

 インスピレーションが生まれる「余白」のある空間で、自分らしい過ごし方を見つめ直すのもいい。朝昼夜と、表情を変えていく景観の美しさに身を委ね、マインドフルな時を過ごすのもいいだろう。


宿がある丘を下ったところにある、南紀白浜の絶景ポイント「円月島」。

「食事と温泉で癒された」だけでは決して終わらない、独創的な滞在をここ「くろしお想」で。

くろしお想

所在地 和歌山県西牟婁郡白浜町1155
電話番号 0739-42-3555
ひとり料金 1泊2食付き41,800円~
ひとり対応 通年可
客室数 11室
食事 夕 食事処/朝 食事処
アクセス 熊野白浜リゾート空港、またはJR白浜駅よりタクシーで約10分


 「めぐる旅」と「こもる旅」をテーマに47都道府県のひとりにいい温泉宿68軒、旅の目的地になるサウナと蒸し湯10軒など、最旬の温泉スポットを特集した「楽しいひとり温泉。」は、「CREA」2024年秋号でお読みいただけます。

文=高田真莉絵
写真=岡本佳樹

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