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「レイアースは海ちゃんが好き」マンガ家ふせでぃが“人生をかけて追う”モチーフとは

CREA WEB / 2024年9月27日 11時0分

 文春オンラインで連載中の漫画『死ぬまでバズってろ!!』。主人公・タパ子が告発系インフルエンサーとして有名になる過程と、彼女に翻弄された人たちの復讐劇がスリリングに描かれています。

 著者のふせでぃさんに、漫画家としてスタートするきっかけとなったSNSとの関わり方や、作品の変化などについて伺いました。


ふせでぃがSNSを始めたきっかけは?

――ふせでぃさんはInstagramにアップしたイラストから人気作家となりました。SNSを始めたきっかけは?

ふせでぃ 「絵を描く人」だと思われたかったからだと思います。美大を卒業してからすることがなくて、描いた絵を公開するようになりました。最初はほとんどフォロワーがいなかったけど、続けていくうちにありがたいことに人気が出ました。

――当時はイラストレーターとして活動していて漫画家を目指していたわけではなかったそうですね。

ふせでぃ 漫画家になるとは思っていなかったんです。漫画家はストーリーが必要だから頭がよくないとできない仕事だと思っていました。私はあくまで絵を描くのが好きだから、目指すとしたら絵師かなって。

 幼稚園の頃から絵を描くのが好きで、小学校のクラブ活動はイラスト部へ。中学では野鳥とか防災ポスターで毎年どこかから表彰を受けたので、「絵はうまいんだろうな」って自覚はありました(笑)。振り返ると「ふせでぃ、絵がうまいから漫画家になりなよ」って言ってくれる子は中学、高校、大学といたんですけど、「無理だよ。だって国語の成績2だもん」って返してました。


ふせでぃさん。

――美大を卒業して漫画家になるまでは、どんなことをしていたんですか?

ふせでぃ 代々木八幡にある耳鼻科の受付でアルバイトをしていました。イラストや漫画で食べていけるようになるまでの2年弱ほど、カルテの書き方とか医療事務の知識が少し身に付きましたね。今でも「めまいがある」と相談されたら「突発性難聴かもしれないから早めに耳鼻科へ行った方がいいよ」ってアドバイスできるくらい。院長先生が信頼できる方で、何かと理由を付けて今でも通いたくなります。

――イラストを描いていることは、職場で話題になったりしましたか?

ふせでぃ 若い看護師さんから、「これ、ふせちゃんの絵?」とSNSにアップした絵について聞かれたことがありました。でも私の心情は複雑で。初期の作品はポエムチックだったから、「めちゃくちゃポエマーだと思われてるんだろうな」って恥ずかしかったです。

漫画では主人公の引っ越し先にも注目!

――バズに疑問を感じてからSNSとは距離を置いたそうですが、最近はどんな風に利用していますか?

ふせでぃ 完全に見る側です。ネイルとまつエクと、賃貸物件ばかり。ずっと見ているから「この物件、また上がってきたな」と動きを覚えているくらいです。

 昔から、常にいい家を追い求めちゃうんですよね。今は少し落ち着いたけれど、2年に1度とか、更新を待たずに8カ月で引っ越すこともあったかな。家にいる時間が長いから、「こんなに安くて広い!」みたいな物件を見ちゃうと「もう引っ越しちゃおうかな」って思えてきて。間取りを見るのが好きなんですよ。

――今作でも、主人公が引っ越す描写がありましたね。

ふせでぃ そうなんです。古いアパートを出したり、デザイナーズマンションにしたり。漫画では螺旋階段のある物件が登場するんですけど、私も憧れで住んでみたいんです! タパ子はこれから成りあがっていくので、物件の変化も楽しみにしていてほしいです。部屋のインテリアはInstagramやPinterestを参考にしています。


『死ぬまでバズってろ!!』

『ドラゴンボール』のベジータにときめき

――漫画家を目指すにあたり、「これが自分の原点だ」と感じた作品はありますか?

ふせでぃ 小さい頃は団地に住んでいてあまり裕福ではなかったし、親が「物を増やしたくないから」と、本はそこまで多くなくて。唯一、母が高橋留美子さんの作品が好きで、それだけは置いてありました。『人魚の森』とか『らんま1/2』とか。中でも、『Pの悲劇』は私も大好きでしたね。それが原点かな。

 好きな作品だと『HUNTER×HUNTER』とか、『美少女戦士セーラームーン』とか、『20世紀少年』。友達の家で読んだ種村有菜先生の漫画からも影響を受けていると思います。アニメでは、『美少女戦士セーラームーン』とか『魔法騎士レイアース』が好きでした。『魔法騎士レイアース』は龍咲海ちゃんというキャラクターが好きで、レンタルビデオ屋で何度も借りましたね。CLAMP先生は世界観と美術が神です。


ふせでぃさん。

――最近読んだ漫画で印象的だったのは?

ふせでぃ 『ドラゴンボール』です。少年漫画の勉強がしたくて、改めて全巻揃えたんですけど、2日で読み終わりました。アニメも面白いですが、マンガはその2000倍面白かったです!

 構図とか絵の描き方も勉強になりましたが、何よりキャラクターですよね。ベジータに「王子!」ってときめいていました。あの作品はロジックだけでなく、鳥山明先生の天性の力を感じて改めて尊敬しました。

「面白い原作が描けるようになりたい」

――漫画を描くときのモチベーションは?

ふせでぃ ネームと作画で違います。ネームは、できれば人が見たことがないものを目指したい。一方、作画は自分が楽しむっていうのを大切にしています。絵を描くことが好きなので、逆にそれがつまらなくなるときついはずですね。

 キャラクターも大切で、前作の『悪いのはあなたです』では主人公が不倫に巻き込まれる受け身タイプだったので、自分からバズりに行く行動派のキャラクターを主人公にしました。

――ふせでぃさんの初期の漫画作品は人の心の機微が中心でしたが、最近はストーリーにも重心が置かれた印象があります。どういう変化があったのでしょうか。

ふせでぃ 面白い原作を描けるようになりたい。その一心ですね。

 自分の幅を広げるために流行っている作品はできるだけ観るようにしています。最近だとNetflixドラマ『地面師たち』とか劇団四季の『美女と野獣』とか。なるべくお金を使って自分の感情を動かしています。

――作品を観る時はメモを取る方ですか?

ふせでぃ メモを取ることもありますけど、基本的には良かったところを言語化して、話すようにしています。

――漫画の作画作業で、映像作品を流したりしますか?

ふせでぃ 私は作画の時に映画とかを流しながら作業するのが難しくて。場面ごとに音楽を変えたり、YouTubeの自己啓発系動画とか、日本の歴史・世界史とかを流したりしています。

人生をかけて追う「女の子」というモチーフ

――ふせでぃさんは昔から女の子のイラストを発表していました。当時と現在で共通するコンセプトはありますか?

ふせでぃ 女の子を描くのが好きなんです。昔、美大の授業で「何のモチーフに魅力を感じるか」を発表したことがあるんですけど、その頃から「女の子」って言ってましたね。

――どういうところがモチーフとして惹かれるんですか?

ふせでぃ 女性は曲線がきれいだから、ふくよかな子でも、瘦せてる子でも、やっぱり描いていて楽しいですよ。顔もまつげも、全部が好きです。描く上では、年齢とか体形とか、何でもポジティブに受け止められるかも。好きなところを探しちゃいます。


ふせでぃさん。

――最近もグループ展に参加されていましたが、漫画制作との違いは?

ふせでぃ グループ展などでイラストや絵画作品を展示するのは自分が楽しむ趣味の時間に近いです。ファンに会いたくて参加している部分もありますね。私が漫画家になる前から来てくださる方もいて、一緒に年を重ねられることがうれしいです。交流を通して「まだ好きでいてくれる人がいる」ってメンタルセットしています。

――ふせでぃさんにとって大切な時間なんですね。最後に、今後の目標をお聞かせください。

ふせでぃ 自分の最善を常にぶつけて、これからもエンタメを極めていきたいです。やっぱり人の反応が好きなんですよね。読者の方から「泣きました」と感想をいただくと、してやったり!とニヤニヤすることもあります(笑)。読者の方には貴重な時間を使って漫画を読んでいただいているので、感謝しかありません。ありがとうございます。

ふせでぃ

七夕生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学卒業後、女の子の切ない恋模様を描いたイラストをSNSで発表。その際のイラストを漫画形式でまとめたことを機に、漫画家として活動を始める。著書に『悪いのはあなたです』『明日、世界が滅びるかもなので、本日は帰りません』(以上文藝春秋)、『全部失っても、君だけは』(講談社)など多数。

文=ゆきどっぐ
撮影=石川啓次

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