作詞で等身大の言葉を紡ぐMANATOとLEOが「B E:FIRSTにいるからこそ」と語る、メンバーとの会話とは【全文公開】
CREA WEB / 2024年11月15日 11時0分
CREAがはじめてひとり温泉を特集して7年。8年目となる今年はコロナ禍を経て、進化する“温泉地”を舞台に、めぐる旅を大特集します。いまこそ、めぐるか。それでも、こもるか。さあこの秋こそ、楽しいひとり温泉へ!
そして、特別版のカバーには、BE:FIRSTのMANATOさんとLEOさんを起用し、「言葉をめぐる旅」をテーマに、通常版と特別版あわせて22ページにわたってインタビューを展開。通常版では「Story A」、特別版では「Story B」と、それぞれ異なるインタビューをお楽しみいただけます。どちらもお見逃しなく!
CREA WEBでは、「CREA」2024年秋号のコンテンツの一部を大公開します!
なぜ BE:FIRSTから生まれる「言葉」は多くの人の心を揺さぶるのか――。このStory Aでは、MANATOとLEOが自身と「言葉」の出会いや、大切にしていることを語る。
そして、Story B(同日発売の特別版掲載)ではいくつかの「言葉」をキーワードに、新たな道を切り拓き続けるBE:FIRSTの現在地を明らかにする。
【LEOと“言葉”】燃え殻さんの本は自分のすぐ隣で起こっていることのよう
大人になることを意識し始めた19歳のとき、「こんな大人にはなりたくない」と思う出来事があった。苦い気分を引きずりながらたまたま入った本屋で、一冊の本のタイトルが目に飛び込んできた。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』。著書名には「燃え殻」とあった。思わず手に取り、ページを捲っていくうちに一気に物語の中に引き込まれていった。小説を最後まで読めたのは生まれて初めてのことだった。
「小さいころは漫画ばかり読んでいて、10代後半に何度かベストセラー小説に手を伸ばしたんですが、だいたい10ページぐらい読んだところで、『無理だ』と思ってやめてしまっていて……。でも、燃え殻さんの本は最初から自分のすぐ隣で起こっていることのように感じられたし、登場人物たちの感情が自分の感情とシンクロする瞬間が何度もありました。物語の中にいろんな音楽が出てくるので、それが想起させてくれる感情もあったと思います」
以来、LEOさんは燃え殻さんのファンになり、それまで苦手意識のあった小説やエッセイにも手を伸ばすようになった。BE:FIRSTとしてデビュー後、ファンであることを公言するようになってからは、燃え殻さんのラジオにゲスト出演する機会にも恵まれた。23年に刊行された『ブルーハワイ』には、燃え殻さんとLEOさんとのサシ飲みエピソードも綴られている。
【MANATOと“言葉”】朝の10分読書で図書室に通うように
小学3年生のとき、学校で朝の10分読書が始まった。生徒が各々好きな本を持っていき一斉に読書するだけのシンプルな習慣。MANATO少年は、それがきっかけで、自主的に図書室に通うようになった。
「そのころから『かいけつゾロリ』みたいな冒険ものが好きでした。一度面白いと思って夢中になったら、授業の合間の休み時間も読んだりして……。あと、基本謎解きは昔から好きです。ミステリーでちりばめられた伏線をもとに、自分の中で先の展開を勝手に思い描いて、最後見事に裏切られるのが快感なんです(笑)。中学から高校にかけては、家に父親の買った『告白』があったのがきっかけで、湊かなえさんの本は結構読みました。自分の想像を遥かに超えた人間の怖さみたいなものにゾクゾクして、すごく想像力が刺激されます」
一旦ミステリーを読み始めたら、どんなに忙しいときでも1日に10~15分は、続きを読む時間をつくっている。
「ミステリーって、時間が空いたら名前とか関係性がわかんなくなっちゃうので(笑)。途切れないように、飛行機や新幹線での移動時間とか、起きてちょっと時間があるときに、少しずつでも読むようにしています」
小学3年生からの10分読書の習慣が今も染み付いているのだろうか。でも、流石にそのころは、将来自分が歌詞を書くようになるなんて思っていなかったのでは?
「そうですね。小学校のころからこの世界を目指してはいましたけど、歌詞を書くことまでは想像していませんでした。ただ、昔から読書感想文とかはよく褒められていたんですよ。原稿用紙に向かって思ったことを言葉にまとめる行為自体には、昔から苦手意識はなかったですね」
歌詞やメロディーを考えるときのコツ
フィジカルエリートなのに、どちらかというとインドア派だという。最近は、家にこもって歌詞やメロディーを考える時間も増えたが、そういうときのMANATOさんなりのコツは「寝かすこと」。
「たぶん『アーティストあるある』だと思うんですが、自分が書いた歌詞やメロディーを時間が経ってから見直すと、結構気持ち悪い思いをしたりする(笑)。一発でスラスラ書けたとしても、あとになってメロディーにはめていく文字を少なくしたり、場所を入れ替えたりするのは日常茶飯事です。
曲作りのとき僕はだいたいメロディーから先につくるんですが、そのときは『宇宙語』っていって、ラリラリラリラ~みたいな、何語でもない言葉を乗せていくんです。たまにパッとめちゃくちゃハマるワードが降りてくることがあって。0を1にするときって、偶然や閃きが大事になったりするのかな、なんて」
「書く」ときの自分たちについて語り合うと…
昨年の全国高校サッカー選手権大会の応援歌「Glorious」の歌詞を、SKY-HIさんと共作したLEOさん。一方、「Glorious」の作曲にも関わり、歌詞はもとよりメロディメーカーとしても活動の幅を広げるMANATOさん。等身大の言葉を紡ぐことに定評のあるふたりが、お互いが知らない「書く」ときの自分たちについて語り合った。
MANATO LEOは、書くときってどうしてる? お気に入りの場所とかあるの?
LEO あー、一時期お気に入りの喫茶店はあったね。カフェで書いたこともあったけど、オープンカフェだったから、夏場は暑くて書けなかったりして(笑)。結局、秘密基地みたいな昔ながらの喫茶店で書いたりしてたかも。でも、基本的には雑音がない場所が好きなので、家で書くことのほうが多いかな。何も音がない静かな状態で書くのが好きだね。MANATOは?
MANATO 僕もできるだけ人がいないところのほうが集中できるので、いざ書くときは自分の家が多い。けど、歌詞を書くときに閃きをくれるのは、何気なく街中を歩いてる人だったりする。「あの人、なんか気になるな」と思ったら目で追って、その人のバックグラウンドを想像したりとか。だから、書くヒントは割と街中に転がっているとは思う。
LEO 妄想をよくしてる?
MANATO かもしれない(笑)。でも、歌詞書くときって、テーマ決めがいちばん難しくない? 少なくとも僕は0を1にする作業がいちばん難しいと思っていて、「この人のこれが何か引っかかる!」ってなったら、そこから付随する言葉を広げていけるし、その言葉自体にどういう背景があるのかとか、一つの幹からバーツて枝葉が広がっていく。そうやって、ひとりの人をモチーフにして、物語を膨らませていくことが多いし、そのやり方が自分に向いてるのかなって思う。
LEO 脳内でストーリーをつくっていくのは、すごく僕のやり方と似てる! ただ、僕の場合は、常に何個か人格のスイッチみたいなものがあって、物作りをするときのスイッチが入ると、自分の周りから一切の音とかが消えて、自分を取り巻く空間が何か……無とか真空になって、自分だけの世界になるっていうのかな。そういうスイッチが入ったときが、自分の中で最高の書くタイミングなんだよね。
でも、スイッチが入るのが移動中なのか家にひとりでいるときなのかカフェなのかっていうのはケースバイケースで。すごく落ち着く、静かな空間にいても書けないときは書けない。
MANATO BE:FIRSTの楽曲って、自分の経験を投影させることが多いからね。今までも、メンバーそれぞれが経験してきた過去の痛みとか葛藤を言葉にしてきたけど、もしかしたら自分の奥底をとことんまで覗いて深掘りしていくのがLEOのやり方で、僕の場合は、自分の中にある感覚や感情を自分以外の他者と結びつけて、共感とか共鳴できる部分を探っているのかもしれない。
LEO 前々からさ、MANATOは壁がないって思ってたけど、今わかった! MANATOは、人の受け入れ能力がめちゃくちゃ高いんだよね。僕が自分を真空にしてひたすら自分を掘り下げている間にも、MANATOは他人の人生を受け入れているという……。アウトプットするものは似ているのに、アプローチの仕方が真逆で、そういうところが僕にとっては異次元な感じがして面白いんだってことが。
MANATO いやでも、誰でも受け入れるわけじゃなくて、僕がここまで壁のない状態でみんなと接することができるようになったのは、B E:FIRSTのメンバーがあまりに面白いからだと思うよ。それぞれに、音楽にかける情熱や才能は溢れているのに、もし音楽以外の道に進んでいたらと思うと、僕も含め誰ひとりうまくいっているイメージが湧かない(笑)。
本当にこれまでの人生で関わってきたことのない人間が6人いるから、一緒にいて退屈しない。アーティストとしてだけじゃなく、プライベートの会話も面白くて、ついつい「それで?」「それで?」って話の先が気になっちゃう。ついでに自分のことも話しちゃうから、人生でここまで毎日楽しく会話のキャッチボールができているのは、B E:FIRSTにいるからこそだと思う。
LEO 打てば響く奴らだよね。それぞれに会話の中で鳴らす音は違うけど、コミュニケーション能力はみんな高くて。ただ、揃いも揃って自由人だから、さっきMANATOも言ったように、オフィスみたいなところで働くのは苦手だと思う。最近は有難いことに、文章を書くようなお仕事の依頼も増えてきたけど、そういうときでも器用にパソコンを操れるメンバーがいない(笑)。僕もちゃんとした文章を書くとき以外は、iPhoneのメモ書きで凌いでる。
MANATO 僕も、効率とか容量の関係で結局今はスマホ様様だね。スマホの方が早いし、誰かと共作するときドキュメントで一緒に見られたりするから。誰かが書いたものに、「もうちょっとこうした方がいいんじゃない?」って話しかけることもできるし。オーディション中にグループごとに作詞の審査があったときは、ケータイ没収されて紙に書いて、あれはあれでよかったし、元々紙に書くのは好きなんだけど、結局作業効率のよさに負けて(笑)。
LEO 僕は、手書きだと脳のスピードに間に合わない。とくに、エッセイや文章を書くときは、自分の頭の中では映画みたいにストーリーが流れているんだよね。その場面をどれだけ原稿化できるかの勝負なので。その風景を忘れないうちに文字に落とし込めれば僕の勝ちです(笑)。
MANATO(まなと)
2001年4月29日、福岡県生まれ。SKY-HI率いるBMSG所属の7人組ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」のメンバーとして2021年にデビュー。
LEO(れお)
1998年9月8日、東京都生まれ。SKY-HI率いるBMSG所属の7人組ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」のメンバーとして2021年にデビュー。
撮影をしたのは……
まちライブラリー@MUFG PARK
寄贈された書籍を介して育まれているコミュニティスペース。書籍には寄贈者からのメッセージも添えられている。
所在地 東京都西東京市柳沢4-4-40
https://machi-library.org/where/detail/8096
文=菊地陽子
写真=末長真
スタイリング=安本侑史
ヘア=大城祐樹
メイク=千葉彩子
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