横浜中華街の賢者おすすめ 進化系麻婆豆腐【3選】 豆乳から作る出来立て豆腐、“白くて辛い”逸品も登場!
CREA WEB / 2024年10月9日 11時0分
いつの時代も“食のワンダーランド”として横浜中華街がもてはやさるのは、本場の技術を持つシェフたちによる独創的な“創作料理”が食べられるから。中華の王道料理である麻婆豆腐も中華街の敏腕シェフたちの手によれば、あっと驚く一品に!
麻婆豆腐が大好き! という人にほど注目していただきたい“進化系”麻婆豆腐を、横浜中華街を熟知するグルマンたちに案内してもらいました。おいしいのはもちろん、誰かに話したくなるようなユニークな味をご紹介します。
◆美心酒家の、エンタメ系「麻婆豆花」
「美心酒家は路地裏に佇む店ながら、中華街でイチ押しの広東料理店です」と、推しの隠れ家を教えてくれたのは「ホテルニューグランド」の副総支配人・谷口謙一郎さん。ここは、香港料理の魅力を最大限に引き出す土鍋料理や、香港麺などのおいしさで知られる小さな名店です。
「ここではスタッフが卓上で豆腐を作って目の前で仕上げてくれる、土鍋仕立ての麻婆豆腐が味わえます。餡の辛さはしっかりあるけど、キノコや赤ピーマンなど野菜の食感をほどよく残しているのと、数種の唐辛子をブレンドした深みのある旨みが辛さを和らげてくれます。さらに出来立ての豆腐で、餡の口当たりもマイルドに。豆腐の繊細な風味や甘みをちゃんと味わえる、素材を活かす広東料理の基本が守られた一品。絶対におすすめです!」(谷口氏)
豆乳から豆腐を作り、餡をかけて自分ですくって味わう。目の前で完成するライブ感もさることながら、豆乳の甘い香り、肉餡の花椒や唐辛子の香りなど、めくるめく目と鼻のおいしい刺激でワクワクと食べたい気持ちは最高潮に! 見た目は真っ赤で相当に辛そうだが、サラサラッと食べられるので、女性客の人気も非常に高いそう。
美心酒家(ビシンシュカ)
所在地 神奈川県横浜市山下町139-1 龍華ビル1F
電話番号 045-228-9888
営業時間 11:00~22:00(L.O.21:30)
定休日 水曜(祝日の場合は前後不定休)
アクセス みなとみらい線元町・中華街駅より徒歩5分
◆心龍の、爽やか辛い「元祖!石焼特製白麻婆豆腐」
お昼どきはランチメニューの多彩さと味の確かさで、コアな常連客の支持を集める上海料理店「心龍」。
「食べなきゃならんのは、この店が発祥と言われる元祖・白麻婆豆腐です。見た目は淡白そうな豆腐の煮込みですが、ふわっと香る花椒油の痺れと青唐辛子の辛さが追いかけてきて、食べ心地は軽快ながらもごはんが止まらなくなる。あっさりした見た目を激しく裏切ってくれる、まさに麻婆豆腐なんです」と熱く語るのは、横浜中華街をパトロールしてン十年という「麻婆刑事(デカ)」こと公務員X氏。
20年以上も前から愛される“白い麻婆豆腐”は、店主が家族と一緒に鶏挽き肉の辛くない豆腐あんかけを食べていた時に、鶏と豆腐で白くて辛い麻婆豆腐を作ったらおいしそう! とひらめき、試行錯誤して「心龍特製白麻婆豆腐(元祖)」(1.428円)を誕生させ、赤くないのにしっかり辛い“白麻婆豆腐”は瞬く間に人気を博し、横浜中華街の名物メニューとして今も名を馳せています。
そして、それをさらに進化させたのが、この新作「元祖!石焼特製白麻婆豆腐」というわけ!
白麻婆豆腐の具は鶏肉、豆腐は上品な絹ごしで、使う油は控えめとヘルシー。筆者・嶺月も「心龍」の麻婆豆腐には注目し続けていますが、今回進化した“石焼バージョン”にも心を掴まれました。熱さと辛さがグンと増しているので、それに負けぬよう干貝柱を入れて濃厚さを出し、しっかりとした旨みに繋げているのはさすがです。
青唐辛子と花椒油で、辛さと痺れはバシバシ感じますが、鋭くシャープな辛さは爽やかな風のよう。隠し味のパセリで、さらに爽快な余韻が口中を吹き抜けます。塩気は強くなく、あくまで貝柱の旨みと青唐の辛さで勝負!といった感じ。スタンダードな白麻婆豆腐と、今回写真で紹介しているアツアツ石鍋バージョンの両方を食べ比べしてみるのも楽しそう。
心龍(シンロン)
所在地 神奈川県横浜市中区山下町146
電話番号 045-681-5717
営業時間 11:00~15:00 17:00~21:30(L.O.21:00) ※土・日曜・祝日は通し営業
定休日 無休
アクセス みなとみらい線元町・中華街駅より徒歩5分
https://shinron.gorp.jp/
◆華正樓 新館の、上海風の甘旨辛い「麻婆豆腐」
神奈川県民に根強く愛されている「華正樓」は、昭和14年創業の老舗。高級店ですが、新館ではアラカルトで気軽に名店の味を楽しむこともできます。
「全国的にも非常に珍しい、上海スタイルの麻婆豆腐が味わえます。花椒などの辛さはありながら、上海料理ならではの“甘み”を感じるのがユニーク」と語る「ホテルニューグランド」副総支配人・谷口さん。
豆腐の水分を抜くために、しっかり豆腐を煮込んで味を含ませ、仕上げに砂糖を加えるという独自のレシピ。煮汁は脂っこさを感じさせない軽やかなサラサラ系で、粗挽きの豚肉をかみしればピリッとした辛さの後に甘い余韻が広がる他にはない味わいです。あえて辛さに甘みをぶつけるという、老舗の挑戦と矜持を感じる一品に仕上がっています。
辛いものが好き! という人は辛さの度合いを調節してくれるので、スタッフに相談してみて。
「以前に華正樓で腕を振るっていた敏腕シェフが戻ってきて、2023年より調理部長に就任しました。細部まで料理を見直し、本来の華正樓の味に戻したようなので、今後もこちらの店から目が離せません」(谷口氏)
華正樓 新館(カセイロウ シンカン)
所在地 神奈川県横浜市山下町164
電話番号 045-661-0662
営業時間 11:30~最終受付20:45(L.O.21:15)
定休日 無休、年末年始
アクセス みなとみらい線元町・中華街駅より徒歩3分
https://www.kaseiro.com/
●教えてくれたのは……
「ホテルニューグランド」副総支配人・谷口謙一郎
東京都生まれ。「帝国ホテル」「ウェスティンホテル東京」などで、マーケティング・広報などを歴任。現在は横浜のクラシックホテル「ホテルニューグランド」で副総支配人を務める。無類の中華料理好きで、特に「ウェスティンホテル東京」時代はホテル内のレストラン「龍天門」から続々とヒットメニューを提案。現在は都内から横浜に通勤しながら、横浜中華街のみならず、市内の中華料理店のパトロールに余念がない。
食いしん坊・公務員X
愛媛県生まれ。暮らしも仕事もすべてが横浜駅~横浜中華街付近の50代前半公務員。持ち前の食いしん坊&調べ尽くさずにはいられない気質から、中華街全域の調査にも余念がなく、その粘り強い姿勢を「横浜(ハマ)の中華街刑事(デカ)」と呼ぶ者も。精緻で豊富な知識は、都内の食通から情報を求められるほど。ときには「とんかつ」「デパ地下」「アニサキス」などを追っている。
ライター・嶺月香里
東京都生まれ。横浜中華街の1年を通した連載を手がけるなど、中華街を取材し続けて10年以上。老舗の名物はもちろん新店にも積極的に足を運び、中華街の深淵を日々探索中。酒と肴と動物性たんぱく質が主食で、ウナギが大好き。CREA WEBで「教えて! ウナギ大好き、ウ大臣」のコラムをあげている。食以外では「温泉」と「恐竜・鉱物」がライフワーク。
文=嶺月香里
写真=鈴木七絵
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