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リーリーとシンシン帰国1カ月間ドキュメント “ワクチン接種”“最終観覧は61倍”“グッズ完売”…

CREA WEB / 2024年10月6日 11時0分


上野動物園での最終公開日、9月28日(土)のリーリー(左)とシンシン。2頭は同い年で、中国・四川省の同じ施設で生まれ育った幼なじみ。(筆者撮影)

 リーリー(力力)とシンシン(真真)の予定より早い帰国が明らかになったのは突然のことでした。上野動物園で2頭の高血圧の症状が確認されたのは昨年9月。以来、日中の専門家が健康状態の把握などに努め、今年5月ごろから2頭の中国返還を選択肢のひとつとして、東京都と中国野生動物保護協会が協議してきました。

 返還が正式に決まったのは8月28日(水)。「決定後、すみやかに公表しました」(都の職員)という通り、小池百合子都知事が8月30日(金)午後の定例会見で公表しました。それでも帰国まで1カ月しかありません。

 翌日の8月31日(土)午前はリーリーとシンシンの観覧に約80分待ちの行列ができました。観覧時間は約3分。近年の2頭の観覧では、シンシンの子育て中などを除き、ほとんど並ぶ必要がなく、観覧できる時間も無制限の時が多かったので、大きな変化でした。


8月31日(土)のリーリー(左)とシンシン(右)。(筆者撮影)

検疫中は徹底的に隔離

 ジャイアントパンダを中国国外から中国へ送り出す際は、中国側が定めた衛生条件を満たす必要があります。日本の場合は30日間の検疫が必要で、その間は室内で飼育管理します。

 リーリーとシンシンの検疫は8月29日(木)をゼロ日として開始。検疫が始まると、飼育エリアでは、職員が白い防護服を着用して作業しました。検疫ではパンダの採血やレントゲン撮影などもします。

 上野動物園のパンダ舎の室内公開エリアは、パンダと観覧者の間をガラスで隔てているので、検疫中もパンダを公開できる環境です。非公開エリアには、パンダの寝室や、飼育係の管理エリアなどがあります。この非公開エリアも「リーリーとシンシン」「子どものシャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)」の間を遮断。「ベニヤ板で壁をつくり、人が行き来できないようにしました」(上野動物園の冨田恭正副園長兼教育普及課長)。リーリーとシンシンは、検疫中も体調を崩すことはありませんでした。

輸送箱のサイズは?

 リーリーとシンシンは、輸送箱に入って中国へ行きました。この輸送箱に入る訓練をスタートしたのは8月31日(土)です。

 輸送箱の幅×高さ×奥行きは、リーリー用が約1m×1.3m×1.8m。リーリーより体の小さなシンシンは輸送箱も少し小さくて、約1m×1.2m×1.7mです。2頭が2011年2月の来日時に中国から入ってきた輸送箱は老朽化しているので、新たにつくりました。

 渡航に向けて狂犬病ワクチンも接種しました。中国では犬ジステンパーウイルス感染症や狂犬病の発生が比較的多く、野良犬が入り込むなどしたらパンダも感染する恐れがあるためです。(参照「シャンシャンの狂犬病ワクチン接種に父親リーリーの精液保存、妊娠&出産」)


9月28日(土)のリーリー。(公益財団法人東京動物園協会提供)

9月28日(土)のシンシン。(筆者撮影)

輸送箱の中のシンシン。9月29日(日)。(公益財団法人東京動物園協会提供)

記念の公式グッズが大人気

 上野動物園を運営する東京動物園協会は、「リーリー&シンシンありがとう記念商品」を9月1日(日)から続々と発売。多くは発売から数日で売り切れ(一部は後に再販)、数時間で完売した商品もあります。SNSでは「地方から来て、何か記念になる品を買えればいいなと思っていたけど、売り切れで買えませんでした」といったように、売り切れを嘆く声や再販を求める声が続出しました。

 園内の飲食店で販売された、タンブラー付きデザートは1個1,200円。リーリーとシンシンそれぞれのデザインのタンブラーを求め、1個ずつ計2個買う人が続出し、こちらも数日で売り切れました。メルカリでは高額で販売されていますが、東京動物園協会は転売を禁じています。

 一方、無料で参加できる企画も用意されました。1つは、専用フォームを通じた2頭へのメッセージの送信。メッセージは中国野生動物保護協会と中国ジャイアントパンダ保護研究センターに届けられます。このほか、2頭の思い出と功績をパネルで紹介したり、職員による2頭への寄せ書きを掲示したりしています。メッセージの募集は終了しましたが、パネルは11月24日(日)まで、寄せ書きは10月31日(木)まで園内で見ることができます。


2頭の思い出や功績を紹介したパネル(左)と職員による2頭への寄せ書き(右)。(筆者撮影)

最終観覧の抽選倍率は61倍

 リーリーとシンシンの最終公開日が近づくにつれ、観覧の行列は一層長くなりました。筆者は9月下旬の3連休のうち、21日(土)は2時間10分、22日(日)は2時間50分、園内で並びました。23日(月)は午前7時10分ごろ、上野動物園の弁天門(パンダ舎に近い門)に到着。弁天門前の広場は、入園待ちの人で埋め尽くされていたので、案内に従い不忍池に沿って並び、午前10時55分ごろ観覧しました。

 最後の公開は9月28日(土)。上野動物園の前には長蛇の列ができたので、観覧受付は午前8時20分に終了しました。午前9時30分の開園の1時間以上前という異例の事態です。開園前に並んで観覧できたのは約2000人(弁天門前で約1500人、正門前で約500人)。SNSには、地方から飛行機や新幹線で向かっていて間に合わず、涙をのんだ思いをつづる投稿も相次ぎました。

 最終観覧となる午後3時~3時30分は、事前の抽選で当選した約200人のみが観覧。約1万2000人が応募して、倍率は61倍に達しました。


9月28日(土)に上野動物園・弁天門前で開園を待つ人たち。すぐに来園者でいっぱいになったので、不忍池沿いにも長い行列ができた。海外の報道機関も多数取材。(筆者撮影)

双子の滞在期限は2026年2月20日

 リーリーとシンシンの間には自然交配で4頭の子どもが生まれ、3頭が無事に育ちました。このうちシャンシャン(香香)は中国へ旅立ったため、上野動物園では3歳の双子のシャオシャオとレイレイが暮らしています。

 双子の滞在期限は、リーリーとシンシンの滞在期限だった2026年2月20日。東京都と中国野生動物保護協会によるパンダの保護研究の協力協定の期限です。

 シャオシャオとレイレイはきょうだい(どちらが先に生まれたかは不明)なので、繁殖できませんが、保護研究は繁殖に限りません。冨田副園長は「希少動物の象徴でもあるパンダを守ることの大切さを人々に伝え、行動につなげていく。この普及啓発が非常に大きな保護活動の一つだと考えています」と話しました。リーリーとシンシンは上野動物園からいなくなりましたが、2頭が残してくれたシャオシャオとレイレイの観覧などを通じて、引き続き、パンダの保全の大切さを伝え続けていく考えです。


9月28日(土)のリーリー。(筆者撮影)

9月28日(土)のシンシン。(筆者撮影)


中川 美帆 (なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(12カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo


パンダワールド We love PANDA

定価 1,650円(税込)
大和書房

文=中川美帆

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