まるで“ウユニ塩湖”! 瀬戸内海の絶景と食文化に出会う香川の旅へ【瀬戸内ジオ・ガストロノミー】
CREA WEB / 2024年10月11日 11時0分
風土や歴史、食文化に注目しながら、おいしいものを目指して出かけようという「ガストロノミーツーリズム」。それに地球や大地という意味を持つ接頭語「ジオ(geo)」をプラスした「ジオ・ガストロノミーツーリズム」を提唱するのが、地質学のエキスパート・長谷川修一先生だ。
食文化の背景をジオの知識で深掘りすると、「なぜこの地方で、この料理がおいしいのか」が見えてくる。まずは瀬戸内海の絶景と、おいしい食文化の関係を考えてみよう。
香川県・荘内半島の紫雲出山は瀬戸内ジオとガストロノミーの重要ポイント
瀬戸内海らしい風景のひとつが、穏やかな波間に浮かぶ島々の景色。この島が集中する海域を「瀬戸」、島がないエリアは「灘」と呼ばれ、瀬戸内海は瀬戸と灘が繰り返し現れる。そして、瀬戸では速い潮流に鍛えられた鯛のような魚がおいしく、潮流がゆるやかな灘はカタクチイワシなどの良質な漁場となる。ではなぜ瀬戸と灘が生まれたのか。そんな疑問がわいてくる。
紫雲出山から海を眺めながら、1400万年前にここにあった景色を想像してみよう。まだ瀬戸内海は存在せず、火山活動でできた山々がランダムに並んでいたはずだ。そこへ300万年前にはじまった断層運動が左右にずれて起こり、山が集中するエリアと平らなエリアができた。そして1万年前、東西から海水が流れ込みようやく内海になったという。この東西から流れ込んだ海水がぶつかるのが荘内半島の沖、これを潮目と言い多くの魚が集まる良い漁場になる。
「瀬戸内海は生まれてたったの1万年。まだまだ赤ん坊ですよね」と長谷川先生は笑う。ジオ・ガストロノミーツーリズムは、おいしいものを食べながら遥か昔の大地に思いを馳せる、壮大なタイムトラベル体験でもあるのだ。
瀬戸内海で育まれた鯛に舌鼓
定食&酒場 とうかいや
網元としてはじまり、現在は水産会社を営む。イリコ工場だった倉庫をご主人の趣味であるロックのスタジオに改装し、食事処をはじめた。地元民に愛されている店。
https://www.fujita-suisan.co.jp/
父母ヶ浜に“あの写真”を撮りに行こう!
父母ヶ浜といえば、この写真。
燧灘に面した仁尾町に位置する、南北1キロにわたって続く干潟が父母ヶ浜。潮がひくと現れる潮だまりを利用して写真を撮る。
実はこの父母ヶ浜、かつて工場誘致のために埋め立てる計画があったという。「こんなに美しい自然をなぜ壊す?」と立ち上がった地域の人たちの努力が実り、計画は中止になった。今でも地域住民が「ちちぶの会」を結成し、清掃活動や美しい写真を撮る観光客の手伝いをしに土日を中心に浜に出ている。
父母ヶ浜
https://www.mitoyo-kanko.com/chichibugahama/
・絶景の見頃カレンダー2024
https://www.mitoyo-kanko.com/chichibugahama/#nav01
製塩業と海運業で栄えた仁尾の町をそぞろ歩く
父母ヶ浜のある仁尾町は遠浅の海岸での塩田による製塩業と、潮目という地の利を活かした海運業で栄えた町。町を見下ろす高台に城跡があり、古い町並みも残っているから、父母ヶ浜の夕暮れを待つ昼に散策するのも楽しい。
江戸中期に創業してから約280年、今でも地下水をくみ上げて酢の醸造を続ける田野屋の「仁尾酢」は、ぜひおみやげにしたい逸品だ。
田野屋 中橋造酢
http://ww8.tiki.ne.jp/~k-naka/sp/index.html
燧灘を一望するもうひとつの絶景スポット
父母ヶ浜のある仁尾町から南へ車で15分ほど、古くから名勝とうたわれている琴弾公園からの景色も美しい。園内には巨大な砂絵や寺院が点在し、2キロにわたって砂浜が続く有明浜は夏には絶好の海水浴場となる。「この砂浜は、近くの財田川が運んだ砂による海岸砂洲。同じような海岸線に見えても先ほどの父母ヶ浜とは成り立ちが違うんですよ」と長谷川先生。
有明浜から歩いてすぐの「道の駅ことひき」にあるカフェでは、「七宝山の清水」と呼ばれる湧水にこだわるコーヒーが飲める。
絶景散歩の途中にぜひ立ち寄りたい。
道の駅ことひき
https://michinoeki-kotohiki.com/
ことひきカフェ
https://kotohiki-cafe.com/
長谷川修一(はせがわしゅういち)
東京大学大学院で地質学を専攻。香川大学特任教授・名誉教授。NHK番組「ブラタモリ」に出演し、香川県の案内人をつとめる。2019年に讃岐ジオパーク構想推進準備委員会を立ち上げる。大地の成り立ちから地域を見つめ、防災や地域振興、人材育成など各方面で精力的に活動中。
https://sanukigeo.org/
協力 三豊市観光交流局
https://www.mitoyo-kanko.com/
文・写真=請川典子
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