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オリーブハマチは秋が旬! 養殖発祥の海をクルージングで楽しむ【瀬戸内ジオ・ガストロノミー】

CREA WEB / 2024年10月11日 11時0分

 荒ぶることがほとんどなく、いつも静かに寄せては返すゆるやかな波のリズム。忙しい毎日を送る現代人の心に、瀬戸内の風景はやさしく寄り添う。瀬戸内海は本州と四国、九州の陸地に囲まれた狭い海域にたくさんの島があり、そのことが波のうねりを小さくし、この穏やかな美しさをつくりだしている。


遠くにぽつんと浮かぶ双子島。

 陸から眺める瀬戸の海もきれいだが、海から見る陸の景色もまた麗しい。瀬戸内海でクルージングアクティビティをおすすめするゆえんだ。そして海岸線にできた地形は、ハマチの養殖を成功に導いた。大地の成り立ちに根差した食文化を巡る旅、「ジオ・ガストロノミーツーリズム」を提唱する香川大学特任教授の長谷川修一先生と一緒に、香川県にある小さな港町、引田(ひけた)の地を探訪しよう。


海からしか見ることができない珍しい地層

 ブルンとエンジンを震わせてボートが動き出すと、心地いい潮風が頬を撫でる。引田の沖はおもしろい地層を見ることができるため、ジオサイト(地質の名所)を巡るクルージングが人気だ。


引田港を出発して左側を見ると……

堤防を彩るのは「東かがわ市湾岸アートプロジェクト」の作品。

 引田港を出ればそこは播磨灘。島影は遠く、「灘」らしい平らな海の上を滑るようにすすむ。やがて左側に、茶色と白の岩石が重なっている岩壁が見えてきた。


地球の歴史がはっきりと見てとれる「引田不整合」。

「これは、引田不整合と呼ばれています。下側の白い岩石は1億年前に地下の深いところで冷え固まってできた花崗岩。褐色のところは7000万年前ごろから堆積した和泉層群という地層です」と長谷川先生。長い時間をかけて風化と堆積、地殻変動による隆起や沈降を繰り返して今があることを、ジオサイトは教えてくれる。


ほとんど波のない静かな海。

白い建物があるあたりが、世界ではじめてハマチの養殖に成功した安戸(あど)池。

 もうひとつ、見逃せないジオサイトがあるという。見えてきたのは、白と黒のストライプ。


「鹿浦越のランプロファイア岩脈」と呼ばれるジオサイト。

 ここは花崗岩のマグマが冷える途中でできたひび割れに、玄武岩質の黒いマグマが入り込んでこのような縞模様になったという。


1942(昭和17)年に国の天然記念物に指定された。

 ふたつのジオサイトを巡る約1時間のクルージング。ボートを降りたら、古くから風待ちの港として栄えたレトロな引田の町を散策してもいい。


古い町並みとアートプロジェクトの融合も楽しい。

引田は連続テレビ小説『ブギウギ』の主人公のモデルになった、笠置シヅ子の生まれ故郷。

協力 NPO法人東かがわ観光船協会

https://www.hk-kankousen.com/

ハマチ養殖発祥の地でオリーブハマチに舌鼓

 外海に面していないために波が穏やかな瀬戸内海は、沿岸各地で魚介類の養殖が盛んだ。播磨灘に面した引田の安戸池では、1928(昭和3)年に世界ではじめてハマチの養殖に成功した。「安戸池は、砂洲によって海域が囲われたラグーン。自然にできた海水の池なんですよ」と長谷川先生。


野網和三郎氏が“獲る漁業”から“育てる漁業”を目指して、この海で養殖にチャレンジした。

 現在、この池での養殖は行われていないが「ソルトレイクひけた」として観光客に開放されている。


ハマチの餌やり体験 200円。

餌をやると勢いよく跳ねるハマチ。

 近年名をあげている、養殖ならではのオリーブハマチ。これはオリーブの葉を粉末にしたものを餌にまぜて一定期間与えて育てたハマチで、さっぱりした味わいが特徴だ。さらに、切り身にしたときに酸化による変色のスピードがゆるやかなので、プロの料理人からの注目度も高い。


事前予約をすればハマチの解体を見ることも可能だ。

ハマチのさばきかたも教えてくれる。

 オリーブハマチは毎年9月中旬から翌年1月ごろまでの期間限定で市場に出る。食事処ワーサン亭では、安戸池を眺めながら、このオリーブハマチをいただくことができる。


オリーブハマチ刺身定食 5切れ 1,000円。

ソルトレイクひけた

養殖について学んだりハマチの餌やり体験ができる「マーレリッコ」、地元の特産品販売と食事処の「ワーサン亭」、池での魚釣りを楽しめる「フィッシュフック」の3つがある複合施設。ハマチの解体は要問い合わせ。
https://saltlake-hiketa.co.jp/


長谷川修一(はせがわしゅういち)

東京大学大学院で地質学を専攻。香川大学特任教授・名誉教授。NHK番組「ブラタモリ」に出演し、香川県の案内人をつとめる。2019年に讃岐ジオパーク構想推進準備委員会を立ち上げる。大地の成り立ちから地域を見つめ、防災や地域振興、人材育成など各方面で精力的に活動中。
https://sanukigeo.org/

文・写真=請川典子

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