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「手裏剣戦隊ニンニンジャー」のお父さん役に「電車男」のネット住民役もこなす名バイプレイヤー、矢柴俊博の素顔とは?

CREA WEB / 2024年10月11日 11時0分


矢柴俊博さん。

 穏やかな笑顔とメガネ姿で、さまざまな映画やドラマに出演してきた矢柴俊博。良き父親から陰湿な悪役までこなす、名バイプレイヤーである彼が、初の主演映画『本を綴る』公開を機に、自身のキャリアを振り返ってもらいました。


裏方志望から始まった俳優人生


矢柴俊博さん。

――幼い頃の夢は?

 学校の先生になりたかったです。当時流行していた「熱中時代」「3年B組金八先生」といった学園ドラマの影響もありましたし、その後にお世話になった中学校の先生の影響も大きかったですね。

――そこから、俳優を目指すようになったきっかけは?

 その後も、いろんなドラマを見るようになって、「北の国から」や「ふぞろいの林檎たち」の再放送を見たのがきっかけで、まずは脚本に興味を持つようになりました。それで「ふぞろい~」の脚本家だった山田太一さんのシナリオ本を読んだりして、山田さんにはファンレターも出しました。

 その後、高校生になると、銀座の映画館で映画をたくさん観るようになって、ジム・ジャームッシュのような監督にも憧れるようになりました。

――早稲田大学に入学し、演劇サークルに入られますが、そのときも脚本や演出をやられていたのですか?

 1年生のときは、脚本・演出をやっていました。それがだんだんペンを使って世界を表現したり、台本片手に誰かに指示するというより、「自分の身体を使って、直接演じた方が得意だ」ということに気付き始めました。

 その延長として、パントマイムについても勉強しました。演劇をやっている頃は演技をすることで、お金をもらえるなんてことはまったく考えられませんでしたね。小屋(劇場)を借りるなり、美術を作るなり、自分が出費するのが当然のことでしたから。

どこかで居場所を感じられた「ニンニンジャー」という作品


矢柴俊博さん。

――その状況が変わり始めるのは、TVや映画など、映像のお仕事に関わり始めてからですか?

 30歳が近くなり、一緒に芝居をやっていた仲間が就職したり、辞めたり、状況が変わっていったときに「異常なまでの情熱と労力を使っても、自分が作る演劇って面白くなくなっている」と感じ始め、完全に手詰まり状態になりました。

 それで事務所に所属し、映像のオーディションを受けるようになり、CMなどに出演しつつ、映画監督が開くワークショップを受けていました。そこで監督さんにパフォーマンスを認めていただき、作品に使っていただくという30代を送ることになりました。


矢柴俊博さん。

――個人的には05年に放送されたドラマ版「電車男」で演じられた、文学マニアのネットの住民役が印象的でした。

 ドラマ全体が注目されたことで、監督さんがメインキャラだけでなく、僕らが演じたネットの住民にもスポットを当ててくださったんです。それによって、世間にも顔を知ってもらえるようになりました。それが転機といえば、転機かもしれませんが、その後も『クライマーズハイ』「救命病棟24時」「手裏剣戦隊ニンニンジャー」、あと「鎌倉殿の13人」といった作品などで、小さな転機を迎えていったと思っています。個人的には、自分が思い描いていた役者になっていないので、まだまだと思っているのですが……。


矢柴俊博さん。

――ちなみに、「手裏剣戦隊ニンニンジャー」で主人公の伊賀崎天晴(アカニンジャー)と妹・風花(シロニンジャー)の父・伊賀崎旋風役を演じられたときの思い出は?

 テレビ朝日さん・東映さんから、「お父さん役でお願いできませんか?」と出演オファーをいただきました。ただ、僕は幼少期に特撮や戦隊モノをほとんど見てなかったこともあり、正直言うと最初は「どうしようかな?」という気持ちでした。でも、僕のお父さん役であり、天晴と風花の祖父でもある伊賀崎好天を演じるのが尊敬する笹野高史さんだと聞いて、「これは挑戦してみよう!」と。

 そうしたら、特撮ファンの方々がまるで自分のお父さんを応援するように、凄く支持してくだったんです。役柄的なこともあると思いますが、それまでの作品とはそこが大きく違いましたし、どこか居場所を感じられて、本当に有難かったです。今でも「『ニンニンジャー』のお父さんがこの作品に出ている」とか、SNSでつぶやいてくれる方がたくさんいるんですよ。

「脇役ファンタジスタ」を自称する理由


矢柴俊博さん。

――南部康雄を演じられた『SPACE BATTLESHIP ヤマト』など、山崎貴監督の作品にも出演されています。

 山崎監督も僕がワークショップに参加したことで、起用していただきました。きっちり練られた現場のスケジュールと、ストレスなく過ごせる快適なバックアップ体制、あと監督の明確なビジョンなど、当時からハリウッドに負けない大作の制作体制を作られていました。「ここに、ずっといられたら幸せだな」と思うような凄い現場でしたし、「役者を続けていてよかったな」と思いましたね。


矢柴俊博さん。

――そんななか、かつて自ら「脇役ファンタジスタ」のキャッチコピーを付けられていた理由を教えてください。

 自分には秀でた武器がないと思っていたので、個人で勝負するには多重性を演じ切るしかないんじゃないかと思っていました。だから、演じる役がいい人だろうが、悪い人だろうが、とにかくなりきる。それが僕にとっての生きる術だったんです。だから、それを逆手に取って「ファンタジスタ」と言ってしまおうと。今でも、善人役と悪人役の出演オファーは、半分半分ですね(笑)。


矢柴俊博さん。

――そして今回、初の主演映画である『本を綴る』。22年配信されたYouTubeドラマ「本を贈る」に登場した(新作を)書けない作家・一ノ関哲弘をふたたび演じられました。

「本を贈る」と同じ、篠原哲雄監督による作品ですが、ドラマを撮っているときは映画の話は決まっていませんした。その後、制作が決まり、お話をいただいたのですが、前は脇役だった一ノ関が主人公になっていましたが、僕の中ではスピンオフだという捉え方をしていました。そう思うことで、主演映画としての責任みたいなものから逃げようと思っていたんでしょうね。何度も声をかけてくださっている篠原監督の現場は本当に楽しいですし、一ノ関は真面目な物書きというよりは、ちょっととぼけたところもある感じなので、衝動に従いなから、アドリブを出したりして、気楽に演じることができました。

“受けの芝居”に集中した初主演映画


矢柴俊博さん。

――そんななか、今回演じるうえで大変だったことは?

 ドラマのときは「なぜ、一ノ関が(新作を)書けないのか?」ということは深掘りされてなかったのですが、今回彼が主人公になる以上、それをしっかり描かないと成立しないと思っていたので、監督や脚本家さんとかなり話し合いました。

 見どころとして、一ノ関がさまざまな場所で出会う本屋さんや人物たちのお芝居があると思いますが、いちばんの肝となるものに関しても、しっかり責任を持ちたいと。モノ作りがモノを作れない話って、これまでもいろんな人が挑んできたテーマだと思うんです。僕自身もモノ作りに行き詰まりを感じて、演劇から映像の道に進んだ人間なので、いい意味での複雑さとか、深さや曖昧さも取り込みたかったです。


©ストラーユ

――いわゆる初座長となる本作では、どのような新しい矢柴さんが見られると思いますか?

 脇役でやっているときは、どこか1ヶ所は作品を見るお客さんにとってフックとなる部分を作ろうと思ってやっているんです。でも、今回は自分のフックは置いておいて、僕が旅先で出会うキャラクターたちからいろいろなものを受けることで、お客さんもその人たちと出会ってほしいと思いながら、演じていました。俗にいう“受けの芝居”に集中させてもらっているわけですが、それが主演としての芝居なんでしょうね(笑)。僕の芝居が作品の評価にダイレクトに繋がったりもするのでしょうから、それはそれで怖いところもあります。

――今後の希望・展望を教えてください。

 いろいろな方を相手に受けのお芝居をしていくことで、自分の心も豊かになるので、これからもやっていきたいし、やらなきゃいけないと思います。セリフの量には関係なく、「そこにいるだけでいい」存在になりたいです。そうでなければ役者を続けていくことも出来ないだろうし、続ける意味もないだろうと思います。そのためにも、まだまだ若い役者さんに混ざってワークショップを受けるつもりですし、去年の支援学校での読み聞かせイベントや、以前開催した一人芝居のような自分から発信する企画もどんどんやっていきたいです。

憧れは巨大な空間を支配する先輩


矢柴俊博さん。

――ちなみに、憧れの先輩は?

 笹野さんや小日向文世さんなど、やはり「オンシアター自由劇場」出身の俳優さんには憧れます。演劇から映像の世界に来ても、とことん存在感があるし、一緒に共演させていただくと、「どうしたら、あんなふうに巨大なスタジオの空間を支配できるんだろう?」と思わせてくれるんです。だから、ずっと憧れ続けています。


矢柴俊博(やしば・としひろ)

1971年10月2日生まれ、埼玉県出身。早稲田大学在学中より劇団を主宰。俳優・演出家として小劇場界で活躍した後、映像の世界へ。近年の出演作にはNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22)、Disney+「ガンニバル」(22)、『ハケンアニメ!』(22/吉野耕平監督)、『ある男』(22/石川慶監督)、『おまえの罪を自白しろ』(23/水田伸生監督)、『Cloud』(24/黒沢清監督)などがある。

文=くれい 響
撮影=深野未季

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