臨海副都心エリアのアートフェス「ARTBAY TOKYO」レポート。人と場所が交差することで生まれる新たな体験
CREA WEB / 2024年10月11日 11時0分
「人と場所をアートでつなぐ」ことをテーマにスタートしたアートプロジェクト「ARTBAY TOKYO」。その一環として臨海副都心エリアを舞台に2024年9月27日(金)~10月6日(日)に「ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2024~Port of Dialogue~」が開催されました。
会期中は先進的なテクノロジーを使った体験型VRアートや、臨海副都心エリアをスタンプラリー形式で楽しめる参加型XRアートのほか、親子向けの作品制作ワークショップなどがズラリ。臨海副都心をより魅力的な“まち”へとするために毎年実施されている、体験型アートフェスティバル「ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2024~Port of Dialogue~」のレポートをお届けします。
「ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2024」は対話がテーマ
第3回目の開催となる今年のテーマは「Port of Dialogue 対話しよう。じぶんと、世界と、未来と。」。手にも見える、人にも見える、まちにも見える。1つ1つのアイコンが対話して重なり合い、意識的にそして無意識的に変わってひろがっていく。そんな色鮮やかでワクワクするアートフェスをイメージしています。
一般的なアート鑑賞は観て楽しむものが多いですが、今年はインタラクションを重視。自分たちがアクションを起こすと作品ができあがるような対話型のアートが豊富です。今までと違った新たなアートとの出会いを通じて対話が広がる…そんな風にアートを楽しんでみては。
ユニークで先進的なARTBAY TOKYO アートフェスティバル2024の代表的な見どころをエリアごとに振り返ります。
フラッグの一部を切り取ったブックカバーに包まれた200冊超の本との”対話”
◆世界との対話:「花の広場」エリア
国際展示場駅ロータリーの南側に広がる「花の広場」は、ARTBAY TOKYOアートフェスティバルの入口となるメインエリア。高さ4メートルもの外洋帆船のデザインをモチーフにした作品が並んでいて、遠くからでもよく目立ちます。現代アーティストである椿昇さんの作品《まるい水平線》です。
「ARTBAY TOKYO アートフェスティバル2024のアーティストとして「対話」というテーマをいただいたことは、パブリックアートのイノベーションを模索する私にとって重要なステップとなった。ついつい下を向いてしまうことが多いけれど、顔を上げて水平線を見て、水平線が丸かったんだというのを思い出してほしい。ここでは港にまつわる本を選書しました。キッチンカーも用意しているので、夕暮れ時にビールを飲みながらゆっくり対話をしてみてほしい」と椿昇さんは語ります。
帆のグラフィックを手がけたのは若手アーティスト松村咲希さん。グラフィックは、置かれている本のブックカバーにもなっています。
「日差しの色や風の流れ、方位磁石に見える矢印のモチーフなど、想像を掻き立てるような抽象的な絵画にしました」(松村さん)
よく見るとフラッグにはいくつもの数字が書かれています。なんだと思いますか? 2000以降が多いので、これから先の未来のことかな? と思いましたが「2000以上の素数」とのこと!
臨海副都心ということもあり、ここに置かれた本はすべて港町出身の作家や港町を舞台にしたもの。フラッグに描かれた数字同様、素数をテーマに223冊の選書が置かれています。選書したgood title books 店主の倉成英俊さんは、「東京が『日本最大の港』ということを再認識してほしいので、港町出身の作家の本を集めました。世界中の港にまつわる本を集めることで、世界中との対話ができるようになります。」と言います。
本は、その内容について家族や友人など誰かと“対話すること”を条件に、1日先着17名まで持ち帰ることができます。その際は、持参した書籍と交換することも条件。交換された新しい本がきっかけに、新しい対話が続くようにという思いが込められています。筆者が訪れた時に、パッと手に取ってみたら、湘南出身のアーティスト、桑田佳祐さんの本でした。お気に入りの一冊を探して、港にちなんだ本との対話を楽しんでみてください。
AR体験で迫力満点の“ピンクの猫”が映し出される
◆日常との対話:「石と光の広場」エリア
「花の広場」に隣接する「石と光の広場」エリアでは、つい写真に収めたくなるようなインパクトのある作品「ピンクの猫の小林さん」のAR体験を楽しめます。
「ピンクの猫の小林さん」は、2007年から活動を続けている「デコレータークラブ」の作品のひとつ。決して全貌を捉えられない大きな猫がまち全体を覗き込む違和感や驚きを味わえるのが魅力です。これまでも箱根の彫刻の森美術館や横浜の金沢区でビッグサイズの「ピンクの猫の小林さん」を展示してきました。
制作者の飯川雄大飯さんが今回のAR体験について語ります。
「東京都で、厚み50m、幅400m、高さ270mになるサイズを展示するプランを提案していたのですが、実現できずにいました。そこで将来大きな作品を実現するためのきっかけになればとARで表現してみたんです。東京ビッグサイトから顔やしっぽを出すインパクト満点の『ピンクの猫の小林さん』。他にはないインタラクションを楽しんでみてください」
展示されているSTYLYのアプリをダウンロードし、QRコードを読み込むと大きな「ピンクの猫の小林さん」がワシントンホテルと東京ビッグサイトの間に出現します。猫の姿は時間によって変わり、3パターンあるので、どんな姿をとらえられるかは、その時のお楽しみ。つい「可愛い~!」と言いたくなるインタラクションは必見です。
このエリアには、デコレータークラブの活動を紹介する4つのギャラリーも展示されています。実は、ギャラリーの外にいくつか置かれているバッグパックも作品のひとつ。持ってみると20キロ以上もする重いバッグなのです。この《ベリーヘビーバッグ》という作品は、作品と言われるまで認識できない見た目と、見た目と持ってみた感覚のギャップを楽しめます。
また、ギャラリーには《ベリーヘビーバッグ》を運ぶ《新しい観客》の映像も流れています。一昨年、兵庫県立美術館から大阪国立美術館の間を50人が行き来した記録を残している作品で、観客の人にアクションを起こしてもらい、それを作品に繋げる新しい試みでアートを盛り上げています。
ARボールが臨海副都心エリアを駆けめぐる
◆街との対話:「花の広場」「石と光の広場」「夢の大橋」「夢の広場」など計6カ所
ExMetaClubによる「Circulation Balls XR」は、「花の広場」「石と光の広場」「夢の大橋」「夢の広場」など計6カ所を周遊しながらさまざまな風景にARボールが映り込む様子が楽しめる周遊型アート。
XRアプリ「STYLY(スタイリー)」でスマートフォン越しに臨海副都心の風景を見ると、まちのあちこちに巨大なARボールが出現。レインボーブリッジやモノレールなどを代表する見慣れた臨海副都心エリアの風景に、無数の真っ赤なボールが駆け巡る様子は、思わず誰かに見せたくなってしまいます。
特にこの企画のメインエリア「夢の広場」で展開するExMetaClubが慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科と共同で開発したXRと触覚が融合するアートワークに注目。細胞のような巨大ボールの中に入るイマーシブな体験が待っています。
エリアの移動はのんびり歩いて散策もいいですが、「ARTBAY TOKYO」に合わせて実証実験が行われたスローレジャーライド「OSAMPO」での周遊も他ではできない体験でした。最高速度6km/hのモビリティによるおさんぽ感覚の移動によって、潮風や木々の緑を感じながら、各種アート作品を巡ることで臨界副都心の魅力がさらに深まります。
資源に注目した親子で楽しめるワークショップも
日本科学未来館では、親子で楽しめるワークショップが開催されました。7階では、工場などから生まれる端材を使ったワークショップ「ハザイの回転寿司屋」をオープン。さまざまな表情や触感を持つ捨てられるはずの端材(ハザイ)を使ったユニークなお寿司を実際につくることができます。
海洋の絶滅危惧種である渡り鳥をモチーフにしたステーショナリー制作のワークショップも開催されました。都民の鳥「ユリカモメ」は渡り鳥。渡り鳥のエキスパートである山階鳥類研究所の澤祐介先生をお迎えしながら渡り鳥とその環境について楽しく学び、小物入れをアーティスティックにデコレーションしていきます。
毎年、芸術の秋に合わせて、臨海副都心とアートが出会い、これまでにない、新たな体験を創造する「ARTBAY TOKYO アートフェスティバル」。
アート好きの方はもちろん、秋のお出かけにもぴったりな体験型アートフェスティバル。2025年はどんな新たな世界を私たちに提示してくれるのでしょうか。
アートフェスティバルだけでなく「ARTBAY」では、さまざまな提案で臨海副都心の魅力を創造しています。何か新しい体験をしてみたい、そんな時は臨海副都心を覗いてみるのはいかが。
ARTBAY TOKYO
https://artbaytokyo.com/
文=桐生 奈奈子
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