「この年齢になったからやれる役もある」加藤和樹(40)が舞台人として目指すもの
CREA WEB / 2024年10月31日 17時0分
普段の多く演じる役柄とは大きく異なるポールという役を楽しみながら演じているという加藤和樹さん。コメディ作品への出演も含め、幅の広い作品、そして役柄選びはファンならずとも気になるところ。インタビュー後編では加藤さんの作品選びや役作りについて伺ったほか、プライベートでの毎日の過ごし方についてもお伺い。夏休みに行ったところとは……?
信念は、役を自分に近づけるという役作り
――加藤さんは本当に幅広い役柄に挑戦されていますが、作品選びや役作りなどに関して、ご自身のルールなどがあれば教えてください。
僕の基準は自分が本当にやりたいかやりたくないかという感じなので、やりたいと思ったらやっぱりやりたいし、でもその中でも確実に「これは絶対自分には合わないかも」と思うものはお断りしたりします。
基本的にはお話をいただいたときは、一度脚本を読ませていただき、まずは作品にどんな魅力があるか、自分の役がどんな役割を持っていて、どういう人物なのかというところで興味が湧くか。演じていくうえでは、役者なので演じるだけなのですが、自分から遠ければ遠い人物像であるほど面白いですね。
――以前お話を伺った際に、「役柄に、自分と同じものを探さない」と仰っていました。ご自身から遠ければ遠いほど、やりがいがあるという感じでしょうか。
僕の役作りの方法というか、ひとつ大事にしていることがありまして。演出家の白井晃さんから言われたのですが、「自分が役に近づくのではなく、その役を自分に近づけるんだ」ということです。似ているようで、全然違うんですよ。結局、“自分”というフィルターを通して演じるので、自分が役に近づいてしまうと、自分とはかけ離れたものになってしまうんです。
――ご出演中の『裸足で散歩』に限らず、コメディ作品を舞台で上演されるときに意識されていることや課題に思われていることはありますか?
どうしてもお客さんを意識してしまうというのが課題ですかね。コメディとお笑いの違いってなんだろう、と……。お笑いはお客さんを笑わせる仕事。一方で、我々はコメディというジャンルの作品をお客さんに届けるだけで、決して笑わせようとしているわけではありません。大爆笑が起こるわけでもないですし……。本当に、そういうところの匙加減が難しい。役者が演じながら笑いを取りに行ってはダメですから。
笑いを取りに行くというのは、もう役じゃなくて、役の中の自分の感情なんです。舞台の上で生きている人たちは、笑わせようと思って生きてないんですよ。若いときはどうしても欲しがっちゃって、「お客さんに笑ってほしい」と思ったときもありましたが、それは個人的な感情であって、お芝居には不要なものだと思うようになりました。ここで笑わせたいから面白いことをします、というのではなく、酔っぱらっている演技の状態でこうやるから面白い、という結果になればいいなって思いますね。
でもね、やっぱり笑ってもらえるのってすごく気持ちよくって。あ、これはちょっとダメだわ。クセになっちゃう……というのはあります(笑)。でも、お芝居の台本自体が面白い作りになっているので、基本的にはそれ通りにやれば面白いはずなんですよ。
――加藤さんは役柄的に“泣かせる系”の役や作品も多いと思います。そっちよりも笑わせるほうが気持ちいいですか?(笑)
気持ちいいですね(笑)。泣かせるお芝居というのが、これがまた難しくて。でももちろん、「泣かせよう!」というふうには思ってないですから……。そこはちょっと“笑い”とは違う部分で、こちらが真剣に、感情的になればお客さんももちろん泣けると思うのですが、これも笑いと一緒で狙いすぎるとダメなんですよね。自分に酔っちゃうとお客さんって冷めちゃうので。
自分は泣きすぎないくらいがいいです。本当に涙流すか流さないくらいの、その堪えている感じが一番泣けるんじゃないですかね。“笑い”と“泣く”というのは両極ではありますが、芯は同じだと思います。こちら側が笑うとか泣くとか気にせずに真摯に役に向き合ってお芝居をしていれば、お客さんが自然と泣いたり、笑ったりしてくださる。それこそ、僕たちが究極に目指すところです。
プライベートでは韓国語を猛勉強中! 夏休みには韓国でミュージカルを堪能
――今年40歳になられたということで、節目の年として舞台人として意識されていることはありますか?
年齢を重ねてきて、やはりそのときにしかできない役がありますし、この年齢になったからやれる役もあると思います。さすがにもう『テニスの王子様』の跡部は出来ないと思いますし(笑)。でも実はこのポールという役は26歳設定なので、本当は結構厳しいんです。
そこを何とか頑張ってやっているという(笑)。役者として若い役もできるし、年齢を重ねた役もできるというのがベストだと思います。そして、年齢とともにやれる役の幅がもっと広がっていったらいいなと思っています。
――加藤さんは舞台のときにご自身でお差し入れの料理を作ると伺ったことがありますが……。
コロナ前は結構やっていましたけど、今はやってないんです。『ファントム』のときは城田(優)にお弁当を作んなくちゃいけなかったので作りましたね(笑)。でも、もうそろそろやってもいいかなって思っています。
――そういったお食事の面も含めて、舞台人というのは体調管理が必須だと思うのですが、これだけは体調管理に欠かせないということはありますか?
睡眠とストレッチですね。これはもう何においても大事ですね。あとは食事……、というか食事の摂り方です。稽古中は役によってはあまり食べなかったりというのがあるのですが、本番中は結構朝ご飯をしっかり摂ります。マチソワの間はあまり食べ過ぎないようにしたりとか……。身体が重くなっちゃうタイプなので、どのくらいのバランスで食事を摂るのかというのは結構気にします。
裸にならないといけない役のときは抑え気味にしたりはしますが、基本はあまり変わらないです。不足しがちなものを気にしながら、補うようにしています。
――お忙しくてオフはあまりないのかと思いますが、最近ハマっていることは何でしょうか?
サウナはもうずっと行ってますね。朝に行くときもありますし、身体の疲れが取れますし、頭もすごくリフレッシュできるので、ハマってます。
――プライベートでチャレンジしていることはありますか?
今、韓国語を勉強しているので、もう少し頑張って、喋れるようになりたいですね。僕自身が韓国ミュージカルに出演することが多いですし、韓国にミュージカルを観に行ったりするんです。友人も向こうにいるので、コミュニケーションが取れたほうが、もっと世界が広がるかなと思っていて。
実際、日常会話程度が話せるだけで「あー、なるほど!」と思ったりすることもたくさんあります。韓国にミュージカルを観に行ったときに、聞き取れないのがすごく悔しくて。ちゃんと理解できるようになりたいと思っているんです。
7月と8月併せて、トータルで1カ月間くらい韓国にいたんです。ちょうど、僕が来年出演する『フランケンシュタイン』をやっていたので、全キャストの組み合わせを観ようと思って、全部で6回観ました(笑)。演じる役者さんによって役の解釈もまったく違いますし、セリフの感じも全然違って刺激になりましたね。あと、今話題になっている『ベルサイユのばら』も観ましたよ。すごく良かったので、これから観られる方は、ぜひ!
――最後に読者へメッセージをお願いいたします。
忙しい毎日の中で、エンタメとして観る作品としては、めちゃくちゃライトで気軽に観てもらえると思います。ちょっと疲れちゃったなっていうときに元気がもらえて、温かい気持ちになれる作品だと思うので、ぜひ気分転換のような感覚で観に来てください! 何も考えずに笑えると思います。下準備もなしで、本当に気軽に来ていただければ嬉しいです。
加藤和樹(かとう・かずき)
1984年10月7日生まれ、愛知県出身。2005年にミュージカル『テニスの王子様』で跡部景吾役を演じて脚光を浴びる。翌年の2006年4月にMini Album『Rough Diamond』でCDデビューを果たし、歌手活動もスタート。毎年CDリリースや日本武道館ほか、日比谷野外音楽堂などで毎年単独ライブや全国ライブツアーを開催するなど、音楽活動を精力的に行っている。2009年からは韓国、台湾、中国でCDデビューを果たし、上海や北京、韓国でもライブを行なう。俳優としてはドラマ・映画・舞台など幅広い分野で活躍。2021年4月アーティストデビュー15周年を迎え、「ローマの休日」ジョー・ブラッドレー役、「BARNUM/バーナム」フィニアス・テイラー・バーナム役の演技に対して第46回菊田一夫演劇賞・演劇賞受賞。ミュージカル界においては、ミュージカル『レディ・ベス』(2014年、2019年)、ミュージカル『タイタニック』(2015年、2018年)、『1789 -バスティーユの恋人たち-』(2016年、2018年)、ミュージカル『フィスト・オブ・ノースター~北斗の拳~』(2021年)、ミュージカル『キングアーサー』(2023年)など、話題作への出演が引きも切らない。2025年1月にはミュージカル『フランケンシュタイン』に出演予定。
文=前田美保
写真=深野未季
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