朝ドラ「舞い上がれ!」の水島役を経て、6年がかりで製作した主演映画が公開 佐野弘樹
CREA WEB / 2024年10月25日 11時0分
NHK朝ドラ「舞い上がれ!」(2022年)で、お調子者のパイロット候補生・水島役を演じ、一躍注目を浴びた佐野弘樹。2018年から6年がかりで製作し、主人公を演じた映画『SUPER HAPPY FOREVER』が現在公開中の彼が自身にとって大きな財産となった貴重な体験を振り返る。
バイト先の先輩に誘われ、演技の世界へ
――幼い頃の夢は?
一番最初は、ピカチュウというか、ポケモンになりたいと言っていたと思います(笑)。その後、小学3年生のときに友だちの誘いで、サッカーを始めて、「プロサッカー選手になりたい」と思うようになったのですが、6年生の時にギリギリ県選抜に行けなくて、「プロになるための壁が高すぎる」と半ば諦めてしまいました。それでも高校卒業まで、サッカーを続けていました。
――その後、上京して大学生のときには、モデル活動をされていたそうですね。
原宿界隈を歩いていたとき、美容師の人や雑誌の編集部の人に声をかけていただき、読者モデルのようなことをやっていましたが、特に事務所には入っていませんでした。
それで大学3年で就活を始めようと思ったとき、当時バイトしていたカフェの先輩から「舞台(演劇)をやるから、興味あれば、一緒にやらないか?」と誘われたのを機に、芝居を始めることになりました。
――それまで、お芝居をしたことはなかったんですよね?
「これで就職しなくていい」程度の軽い気持ちで、いきなり小劇場の世界に飛び込んだので、右も左もわからなくて……。とにかく滑舌の発声法から始めて、演出家の言うことを聞いて、いろいろやりました。
そのうち、演技の面白さみたいなものに気付き始めて、「声をかけてもらえるかぎり、この2年間はこの環境に身を置こう」と思うようになりました。それで6~7本ぐらい舞台に出たのですが、「事務所に所属して、マネジメントしてもらわないと、映像の仕事に出るのは難しいかも……」ということが分かったんです。
それで、雑誌「デビュー」と「映画24区」とのコラボよるワークショップオーディションを受け、今の事務所に入ることになりました。
みんなの潤滑油となる水島役を演じた「舞い上がれ!」
――事務所に入った当初、2018年当時の状況はいかがでしたか?
1ヶ月に数回あるオーディションにチャレンジしていたのですが、そのうちに「時間もあることだし、ただ待っているだけじゃなく、自分たちで映画を作って発表した方がいいんじゃないか?」という考えも強まり、それで映画祭で知り合った俳優・宮田佳典くんと一緒に、後に『SUPER HAPPY FOREVER』となる映画の企画を始動させました。
宮田くんと2人で「自分たち主演で映画を撮ってもらうとき、ワクワクする監督は誰か?」と話し合い、『息を殺して』『泳ぎすぎた夜』を撮っていた五十嵐耕平さんにお願いすることを決めたんですが、そのときは監督と面識がなかったんですよ(笑)。
――その後、約6年間に及ぶ『SUPER HAPPY FOREVER』の製作が動く中、22年にはNHK朝ドラ「舞い上がれ!」に出演。「航空学校編」における福原遥さん演じるヒロイン・舞の同期・水島祐樹役を演じられました。
「舞い上がれ!」のオーディションを受け、参加させてもらったことは、僕にとって大きな転機になりました。やはり朝ドラは、放送後の反響がとんでもなかったです! 地元の人や友だちのお母さんにまで出演したことが広がっていたほかにも、本当に街で声をかけられることもたびたびありました。いちばん驚いたのは、山口に行ったときに、山口宇部空港で、実際のパイロットの方に声をかけられたことでした。
――福原さんや目黒蓮さんなど、同世代の俳優が多い現場において、どこかお調子者キャラの水島を演じられたことについては?
水島はみんなの潤滑油というか、みんなを繋ぎつつ、その場を機能させるような役どころだったので、現場では明るく楽しく演じることを心掛けていました。脚本に、彼がお調子者である背景もしっかり描かれていたのも有難かったです。
主演の福原さんは、誰よりもいちばん忙しくて、セリフ量もあるはずなのに、誰よりも気を配られていて、疲れた表情を一切見せなかったんです。福原さん以外の方も、みなさんプロ意識が強い方ばかりで、第一に「どうすれば、この作品は良くなるんだろう?」と考えられていて、かなりの熱量を感じました。
教官役の吉川晃司さんとは、プライベートでも連絡を取り合って、ご飯に連れて行ってもらいました。
6年がかりで製作した主演映画が公開
――『SUPER HAPPY FOREVER』の製作、「舞い上がれ!」の出演と並行して、『町田くんの世界』(19年)、『愛にイナズマ』(23年)、『本心』(24年)と、石井裕也監督作に3作出演しています。
石井監督は意識して、僕を呼んでくださっているのか分からないですが、僕の中では、少しずつ、でも着実に役が大きくなっている気がしています。石井監督は、毎回要求される演出内容が違っていて、まったく読めないんです。
居酒屋のシーンに出てくる詐欺師グループの一人を演じた『愛にイナズマ』では、4人のうち2人が素人の方だったこともあり、そこでのアドリブなどが難しかったことを覚えています。
――ふたたび、『SUPER HAPPY FOREVER』のお話に戻ります。パイロット版(短編)から日本とフランスの助成金を得て長編の製作へと発展した本作では、妻を亡くしたばかりの佐野を演じられています。
「舞い上がれ!」の撮影後ぐらいのタイミングで、パイロット版と長編のシナリオが完成し、それを持って、いろいろなところへ話を持っていき、長編の製作に繋げていきました。僕は奥さんを亡くした経験はないこともあり、そこはあまり考えないようにして、現場の空気を掴みながらやっていくことを心がけました。
役名など、五十嵐監督が僕のパーソナリティを落とし込んでくれた作品の中で、意識したのは奥さんを亡くした佐野の疲労感を出すということ。あえて、歩いたり、モノを取ったりするスピードを遅くしています。
――「舞い上がれ!」で佐野さんの存在を知った方に向けて、『SUPER HAPPY FOREVER』では、どのような佐野さんが見られる作品だと思いますか?
今回は青春期が終わった大人たちの物語ですから、全然お調子者じゃないです(笑)。だから、まったく違う僕の一面を見られると思いますが、水島と共通する愛らしさみたいなものは垣間見られるかもしれません。人生の中で6年もかけて、映画製作するような経験は、この先ほとんどないと思うんです。
だからこそ、とても大きな財産になりましたし、協力してくださった方には感謝しかないです。それと同時に、自分たちからやりたいことを行動に起こせば、どんなに時間がかかっても、なにかしら形になることは分かったので、今後も機会があれば、1からモノ作りをしてみたいです。
「この人に任せれば大丈夫」と思われる俳優に
――俳優としての今後の希望や展望、また憧れの先輩について教えてください。
とにかく「この人と一緒に仕事をしたい」「この人に任せれば大丈夫」と思われる俳優になりたいです。それから、いつまでも人に感謝し続けられるような謙虚な気持ちを持ちつつ、ユーモアもあるような人間になれたらいいですね。
ずっと作品作りしてきた宮田くんも素晴らしい俳優さんですし、憧れの俳優である役所広司さんと共演して、いろいろ話を伺ってみたいです。「どんな生活をしているんだろう?」「どういう世界が見えているんだろう?」と気になってしょうがないんです。
佐野弘樹(さの・ひろき)
1993年12月8日生まれ。山梨県出身。ドラマではNETFLIX「FOLLOWERS」(20)やNHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」(22)、夜ドラ「未来の私にブッかまされる!?」(24)にレギュラー出演。主な出演映画に、主演を務めた櫛田有耶監督『焼け石と雨粒』(22)のほか、石井裕也監督『町田くんの世界』(19)、タナダユキ監督『浜の朝日の嘘つきどもと』(21)、鎌田義孝監督『TOCKA [タスカー]』(22)、石井裕也監督『愛にイナズマ』(23)、『本心』(24)などがある。
文=くれい響
写真=平松市聖
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