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なぜ砂浜に道路標識が? 日本で唯一、“あること”が許された石川県のビーチを探訪!

CREA WEB / 2024年11月2日 11時0分

#312 Chirihama Nagisa Driveway
千里浜なぎさドライブウェイ(石川県)


大型バスも走行できる、観光道路の千里浜なぎさドライブウェイ。写真提供/羽咋市商工観光課

 旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」のユーザーによるビーチランキングで、アジア部門や日本部門においてランクインしている石川県の「千里浜なぎさドライブウェイ」。

 ここ数年は和歌山県の白良浜などもランクインしているけれど、それ以前は沖縄県以外のビーチがランキングに入ることは珍しく、気になっていました。なにやら日本で唯一、“車で砂浜を走れるビーチ”、とのこと。果たして、その魅力って?

 金沢駅から車で約40分。途上の「のと里山海道」の海沿いの道も、かなりゴキゲンです。日本海に沿ってまっすぐにのびる道路を、横目で海を感じながらのドライブ。BGMに合わせて、鼻歌も混じります。この「のと里山海道」は、「日本の道100選」にも選定されているそうです。

 今浜ICで下りて、看板に従って走ればすぐに見つかる「千里浜なぎさドライブウェイ」。今浜から千里浜にかけて日本海沿いに約8キロ続くビーチで、日本で唯一、普通車で走行できる砂浜の“観光道路”です。


今浜ICの近くにある千里浜なぎさドライブウェイの入り口。

 ここではノーマルタイヤの走行OK。軽自動車はもちろん自転車も走行可能で、大型観光バスも走ったりします。反面、ビーチでもあるので、夏は海水浴客もいますし、海沿いを散歩しに訪れている人もいます。注意して走行することが大切です。


人のみならず、鳥たちもビーチで思い思いに過ごしています。

 では、どうして「千里浜なぎさドライブウェイ」が普通車でも走行可能なのか? その秘密は砂にあります。0.2ミリメートルの小さい砂粒がムラなく広がり、水を含んで舗装道路のように締め固まった状態にあるのです。


たしかに砂粒が細かい! 湿っていると、コンクリートのように固いです。

 ただし、波打ち際に近すぎるとぬかるんでいることがあり、陸側に離れすぎると砂が乾いているため、スタックしてしまうことも。ちょっと薄茶色に湿った部分を走るのがコツのようです。

観光バスの運転手の個人的な行動がきっかけ…?

 走ってみました! 千里浜なぎさドライブウェイ、気持ちいい! 砂浜をランニングすることはあっても、車の速度で砂浜を走ることは初めての体験です。このスピード感! そして、この海の近さ。車の窓を全開にして、潮風や波音を感じながらのドライブ、なんて爽快!!


車は石川や金沢ナンバーが多いけれど、中には千葉ナンバーも。

サイドミラーに映るのは、車列ではなく、渚の景色。

名古屋からやってきたカップル。

 そもそも千里浜なぎさドライブウェイのはじまりは、1955年頃。「広々とした波打ち際を走ってみたい」、そう思った観光バスの運転手が実際にためしてみて、あまりの気持ち良さに感動。仲間うちでこっそり走っていたのが、いつしか話題となって観光コースになったそう。1966年からは夏の海水浴シーズンになると、道路交通法が適用されるれっきとした“公道”になります。なんと、30キロメートル制限の道路標識も立ちます。


砂浜に速度規制の標識。見慣れない風景……。写真提供/羽咋市商工観光課

 道路なので、基本的には通年、昼夜を問わず走行ができます。西に面しているので、水平線に太陽が沈む壮大なサンセットは感動的。また、夜明けの走行もこれがまた気持ちいいのだとか!


日の出とともに日本列島の東海岸から出発し、日没までに千里浜に到着するバイクのイベントも開催しています。今年は10月に終了。来年、ぜひ! 写真提供/羽咋市商工観光課

 ただ、天候や状況によっては、通行止めや規制になることもあります。たとえば西寄りの風が吹いたり、日本海で低気圧が発達したりすると、海が荒れ、波が走行エリアまで届くこともあるのです。訪れる際は通行規制情報(石川みち情報ネット)を確認すること。「規制なし」なら全面通行が可能です。

UFOの街、羽咋では宇宙人が博物館でアルバイト!?


ここが宇宙人サンダーくんのバイト先、コスモアイル羽咋。入り口に本物のロケットが展示されています。格安で、ほぼ輸送費のみで譲り受けたそう。

 千里浜なぎさドライブウェイと併せて立ち寄りたいのが、「コスモアイル羽咋」。宇宙を実際に旅してきた本物の宇宙船が展示されている、宇宙科学博物館です。

 そしてここに時折、みどり色の宇宙人サンダーくんも出没します。サンダーくんは地球へ観光に来ていたところ、UFOが故障して千里浜に不時着。目下、帰還のためにUFOの修理代を稼ぐべくアルバイトをしています(という設定)。

 館内の宇宙科学展示室には、旧ソビエトのヴォストーク宇宙カプセルや、米国のボイジャー惑星探査機、アポロ司令船など、「どうしてここに?」と驚きを隠せないような本物が展示されています。


ヴォストーク宇宙船。大気圏突入の再の熱によって焼け焦げた跡も。

 コスモアイル羽咋の営業主任、高野誠明さんにお話をうかがうと、実は、長いストーリーがありました。

 羽咋市の名刹、氣多大社の歴史を伝える書物に、どうもUFOではなかろうかと思える一文があり、“UFOのまち”としての町おこしを構想。予算0円からのスタートだったそうです。

 熱意と情熱で各方面に働きかけ、平成2年には「第1回宇宙とUFO国際シンポジウム」を開催。NASAやロシアから本物の宇宙飛行士も訪れた、世界的なイベントがこの羽咋市で!

 続いて、宇宙に関する博物館の建設を目指しました。指示を仰いだのは米国スミソニアン博物館の学芸員。そして学芸員からの言葉にショックを受けることに……。日本には本物の博物館はひとつもない、レプリカを置いていては、本物の博物館ではない、と。

 そこで、発奮。小さくても、本物を展示する博物館にしようと、あちこち駆け回り、交渉し、平成8年に実現したのが、このコスモアイル羽咋。


宇宙人へのメッセージが収録されたボイジャー・ゴールデン・レコード。製作者の博士に直接お願いして、ようやく譲り受けた貴重な品。

「来館者の多くが、最初はレプリカだと思っているものが、実はリアル。こういった都会ではない田舎の博物館でも、本物の展示物が揃っていることに感動していただいています」


アポロ司令船。実際に使われていたものと同じ部品、素材で組み立てられたもの。

 砂浜を走行できるドライブウェイに、本物の宇宙船を展示する“UFOのまち”。羽咋は熱い思いで、願いを叶える街のようです。


千里浜なぎさドライブウェイの砂は細かいのでサンドアートにも適しています。写真提供/羽咋市商工観光課

千里浜なぎさドライブウェイ

●アクセス 金沢駅から車で約40分

取材協力
羽咋市商工観光課


古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●Instagram https://www.instagram.com/chieko_koseki/

文・撮影=古関千恵子

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