「雨に打たれて…」INI木村柾哉が初主演映画で体験した人生初の出来事
CREA WEB / 2024年11月3日 11時0分
帰国子女で知的な雰囲気のイケメン、しかもちょっと翳(かげ)がある……。高校時代、そんな男子がいたら、さぞかし高校生活が華やいだことだろう。グローバルボーイズグループINIのリーダー・木村柾哉さんが、初主演を務めた映画『あたしの!』で演じたキャラクター・直己は、いくつもの華やかなスペックを備えた「学校イチの王子様」。
映画の予告を観たファンからは、「キラキラしすぎて直視できません!」などの感想が届いているという。以前から芝居に関心があったという木村さんに、まずは演じた役柄との共通点から聞いてみた。
不器用だから八方美人になるのかも
僕が演じた御共直己は、誰に対しても分け隔てなく接するというか……。そこはもしかしたら似ているのかなと思います。ただ直己の場合は、自分が愛されているかもしれないとうっすら気づいていながら、自分の本音を外に出さない。それには事情があるんですが、みんなに優しくしちゃうから、どうしても八方美人な感じになってしまって、誤解されてしまうところもあると思うんです。
僕の高校時代は、この映画のようなキラキラのカケラもなかった(笑)。でも、誰に対してもフラットに接するというのは、一見器用なようで、不器用だからこそそうなってしまうのかもしれないな、なんて直己を演じながら少し感じました。
20代半ばで、憧れていたキラキラの青春を追体験
――「演じる」ことは、人間を深掘りしていく作業に他ならない。ヒロインであるあこ子は、「恋」と「友情」の間で揺れ動くが、木村さん演じる直己もまた、あこ子からストレートに感情をぶつけられる中で、自分の心に素直に生きることの大切さに気づいていく。「何を大切にして生きるべきか」。その答えは人それぞれだが、映画では、登場人物それぞれの「大切なもの」に気づいていく過程が、繊細に描かれている。
ただ、僕自身の高校生活とは違いすぎて、当時のことを思い出したことは全くなかったです(笑)。僕の高校生活は、ダンスに明け暮れた日々でした。部活動でダンスを始めてからのめり込んでしまって……。寝ても覚めてもダンスのことばかり考えていましたね。
部活をやったことで、一つの目標に向かって進んでいくときに、みんなの情熱が一つの塊になるみたいな感覚を体験できたことは、今もいい思い出になっていますし、今のグループ活動にも活かされている部分はあると思います。
第二の高校生活を送れた
――そう熱っぽく語ってから、「でも、演じていて特に嬉しかったのが、屋上で青春っぽいシーンを体験できたこと。僕の通っていた高校は、屋上に出ることができなかったので、屋上で寝転がったりしながら、本音をポロッと話したりするシチュエーションには憧れがありました。20代で、第二の高校生活を送れた感じです。高校生役がやれてよかった!」と、茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。屋上への憧れは、過去に観た青春映画や青春ドラマの影響だろうか?
いや、特に何かの作品からの影響というわけではないです。そもそも僕、10代のときに学園ものの映画は観たことがなくて。今回直己を演じるにあたって、今まで観たことのなかったジャンル……少女漫画が原作の恋愛映画をたくさん観たんです。同じ幸田もも子先生が原作の『センセイ君主』とか『ヒロイン失格』、あとは『オオカミ少女と黒王子』も観ました。『オオカミ少女〜』は、学校で流行っていたのか、「3回回ってお手からワン」っていうフレーズだけは聞いたことがあって、当時「何のことだろう?」と疑問に思っていたら、「あ、この映画だったんだ」と(笑)。
昔から、映画を観るなら、シリアスな人間ドラマとかアクションとか、そっち系に走っちゃっていたので、少女漫画の実写映画にどっぷり浸かるというのは、人生で初めての体験でした。過去にハマった映画ですか? シリーズものなら、『スパイダーマン』とか『スパイキッズ』。日本映画なら、昔から『クレヨンしんちゃん』が好きです(笑)。
――俳優として、学生時代を追体験できたことは楽しかったが、高校時代の自分にあって、今の自分にないものにも気づいたことがあったという。
それは……無限の体力です(笑)。直己の場合は、あこ子ほどは全力疾走してないキャラクターなので、僕自身が、「全力疾走感が出しづらいな〜」とか思ったわけではないですが、やはり以前と比べて、体力が若干落ち始めている自覚はありますね……。
高校生のとき、大人の方からよく、「若いうちだけだよ、そんなに体力が持つのは」「20代後半になったらいきなりガタッとくるよ」みたいなことを言われて、「はいはい」みたいに流していたんです。でも、今まさに、その大人の人たちの助言が真実だったと痛感しています。まさにすぎて、謝りたいです(苦笑)。
切実に、「こんな親友が欲しい!」
――さて、『あたしの!』は映画のジャンルとしてはラブコメだが、友情についても、主要キャラクター4人の感情の変化が丁寧に描かれている。直己の親友は、山中柔太朗さん演じるクールなイケメンの成田、あこ子にも、幼馴染みで正反対のキャラクターの充希という親友が。登場人物4人が、それぞれに自分や相手を尊重し合う過程は、切なくもスリリングだ。木村さんは、女の友情と男の友情に違いを感じることはあるのだろうか?
女性同士だと、仲が深まれば深まるほど、会話のテーマが増えていく。逆に男性は、減っていくというか……言葉数が少なくなっていく印象があります。そこが逆だなと感じます。男同士だと、話さない方が居心地はいいんですけど、女性の場合は、共感ポイントを増やしていくことが居心地の良さに繋がるのかな? とか。あくまで僕の印象ですが、そういうところはある気がします。
直己と成田の関係も、直己の家に4人で集まったとき、成田だけ残って後片付けをするシーンがあるんですよ。そこで成田が、それまで見られてなかった直己の顔が見られて、親のように安心するんですが、成田の直己への愛が伝わってきて、僕もすごく好きな場面です。成田が女子だったら間違いなくくっついてますし、実際に僕もこんな親友が欲しいです!
こんなに自分のことを好きでいてくれて、表面には見せていない深い部分まで理解して、気にかけてくれていて、周囲の関係性をいい方向に持っていってくれる親友。成田最高です(笑)。
お芝居の「正解のわからない面白さ」
――実際にはそこまでディープな関係の親友はいないという木村さん。INIのメンバーの中で成田に近い人を尋ねると、少し考えてから「(田島)将吾と(尾崎)匠海ですかね」と照れくさそうに答えた。では、木村さんが考える親友の定義とは?
言葉では説明しづらいんですが、何よりも“波長が合う”ことが大事なんじゃないかと思います。例えば、小さい頃からずっと一緒に過ごしていた幼馴染みが、社会人になって、全く違う道を歩んでいても、一緒にいて居心地が良かったらそれは親友と言っていいんじゃないかな。
10代の頃は、学校や部活があるから、共通の趣味や悩みなんかを通して一緒にいることが多いですよね。でも、そういうわかりやすい共通点がなくても、一緒にいたいと思えるなら波長が合うってこと。“波長”って、その人たちにしかわからないものだから、付き合っていく過程で、「自分はこいつのことめっちゃ大切に思ってるな」とか、答え合わせができるかもしれないですよね。
カットがかかるまで、直己という役に入り込んだ
――今回の映画を通して、あらためて芝居の面白さに気づいた木村さん。その面白さの極意は、「自分じゃない自分になれること」――。普段の生活にはないワクワクとドキドキを体験できたこと以外に、役に没入できた瞬間があったことも驚きだったという。
元々、お芝居に挑戦してみたい気持ちはありましたし、アジアには歌手でダンサーで俳優、みたいにマルチに活躍するアーティストの方は大勢いるので、今回の作品に入る前も、歌やダンスのスキルがお芝居に活かせることもあるのかな? と考えたりしたんですが、実際には、そこは繋がっているようで繋がっていなかったです(苦笑)。歌にはメロディやリズムがあって、ダンスには振り付けがある。でも、お芝居ってセリフはあっても、そのリズムもメロディも強弱も決められていなくて、全て自分の解釈次第なので、正解がわからないんです。
プレッシャーもありましたし、難しかったしずっと必死でしたけど、普段の自分じゃない自分が顔を出す瞬間があって、だからこそ、人にワクワクやドキドキを届けられるのかなと思いました。
今回で言うと、雨の中で4人が自分たちの感情をぶつけ合うシーンがあって。普段なら、そこまで雨に打たれてびしょ濡れになってまで、自分の内面をさらけ出すことってないと思うんです。でも、実際に演じてみたら、雨に打たれることで、生まれてくる感情があるというか……。カットがかかるまで、直己という役に入り込めていたみたいで、演じた記憶がないんです。監督の「カット!」の声を聞いて、「あれ???」って我に返りました(笑)。人生で初めての体験でした。
木村柾哉(きむら・まさや)
1997年10月10日生まれ。愛知県出身。日本最大級のサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」で、“国民プロデューサー”によって選ばれた11人組グローバルボーイズグループ「INI」のリーダー。TBSドラマ「君の花になる」(2022年)で俳優デビュー。本作が映画初出演・初W主演となる。身長175cm、血液型B型。
衣装クレジット
ジャケット 95,700円(税込)
シャツ 49,500円(税込) /すべてETHOSENS(ETHOSENS of white sauce 03-6809-0470)
文=菊地陽子
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=Sayaka(MASTER LIGHTS)
スタイリスト=TOGO MANAMI
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