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100歳を超えても健康でい続ける秘訣は? 98歳で筋トレを始めた父が頑なに守る一つの“習慣”

CREA WEB / 2024年11月10日 11時0分

 自身の両親の認知症介護を描いた大ヒットドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』の監督、信友直子さんの新刊『あの世でも仲良う暮らそうや 104歳になる父がくれた人生のヒント』が好評発売中。

 先日11月1日に104歳を迎えた直子さんの父・良則さんは、なんと98歳の時に筋トレを始めたそう。100歳を超えてもなぜ健康でいられるのか? その答えは、良則さんのある“心意気”の中にありました。


98歳でトレーニングを開始


トレーニング中の良則さん。

 103歳にして、ますます意気軒高な父。その健康長寿の秘訣を、他にも思いつくままにあげてみましょう。

 まずは、よく食べるのはもちろん、よく運動すること。

 父は今も週に1度、近所のクリニックのリハビリフロアでマシントレーニングをしています。エアロバイクを漕いだり、プーリーという上半身を伸ばしながら鍛える運動をやったり。


トレーニング中の良則さん。

 もともとは「筋力をつけて、脳梗塞の母が家に帰って来た時に支える」ことを目標に、98歳で始めたトレーニング。これが母亡き後もまだ続いているんです。なぜかというと、リハビリフロアのスタッフや周りのお年寄りたちから、

「お父さん、すごいねえ」

 と、感心や羨望のまなざしで見てもらえるから。言葉を換えれば、みなさんにおだてられて、調子に乗って今も続いているわけです。

頑張る姿がお年寄りたちを刺激?


トレーニング中の良則さん。

 たとえばエアロバイクなら、父は10段階のうち5の負荷で5分間漕ぐのですが、その勇姿(?)に周囲のお年寄りたちはざわつきます。

「わしもこういうふうに年をとりたいもんじゃ。ちいと元気を分けてもらおうかの」

 そう言って父に握手を求め、「ご利益もろうたわ」と喜色満面の人もいて、父の人気ぶりには驚かされます。他にも、

「103歳のお父さんがこうに頑張りよってのに、私なんかが年じゃ言われんわ。見習わんといけん」

 と張り切る70代、80代の方も多く、なんだかクリニック全体が活気づいてきたようです。他のお年寄りが父に触発されて頑張る姿を見ると、父も他人様のお役に立っているんだなあ、と嬉しくなります。

バリアフリーならぬ「バリアあり」の利点


玄関で手を振る良則さん。

 そして父は、日常生活の中でも、こまめに体を動かしています。実家は昭和の一軒家ですから、家の中は段差だらけ。バリアフリーならぬ「バリアあり」の家なのですが、これが父の健康維持に役立っているのです。

 実は以前、実家をバリアフリー工事する計画もあったのですが、母のためにやめたという経緯があります。

 ちょうどその頃に母の認知機能が衰えてきたので、ケアマネジャーさんから、

「せっかくお母さんが、この家を自分の家じゃと思うて安心して暮らしよるのに、手すりやスロープをつけて様子が変わったら、『ここはウチじゃない。ウチに帰りたい』と徘徊が始まってしまう危険性もありますよ。お母さんがこの先も安心して暮らすには、家の中の模様替えはせん方がいいと思います」

 とアドバイスを受けて、敢えて段差があるままにしたのです。これが結果的に、父の足腰を強くしてくれました。玄関の土間をよいしょと上がったり、深いお風呂によいしょとまたいで入る。そうやって知らず知らずのうちに日常生活の中に運動が組み込まれていったのです。

「今できよることはやり続ける」が健康の秘訣


布団上げ下ろし中の良則さん。

 また父は、103歳の今もベッドではなく布団に寝ています。私は上京してからずっとベッド愛用者なので、「ベッドの方が楽よ」と何度も勧めるのですが、父は頑として布団派。いわく、

「ベッドにしたら、座った姿勢から立ち上がるだけになるじゃろ。じゃけど布団なら、床に寝とるところから全身を使うて、よいしょと立ち上がるけんの。これがわしの全身運動になるんじゃ」

 なるほど、そう言われればごもっとも。

 そして、最近こそ回数は減りましたが、100歳くらいまでは、毎朝布団を畳んで押し入れにしまい、毎晩引っ張り出して敷く、というのも続けていました。

 そんな父のポリシーは、

「今できよることを『年じゃけん』言うてやらんようになったら、次やろうと思うた時に、もうできんようになる。自分を甘やかしたら、しっぺ返しがきて困るのは自分じゃけんの。『今できよることはやり続ける』これがわしの健康の秘訣じゃ」

 その心意気、あっぱれ!

 私は秘かに決心しています。自分が年老いた時には、父を見習って「できていることはやり続ける」を習慣づけようと。

 お父さん、大事な教えをありがとう。

信友直子(のぶとも・なおこ)

1961年、広島県呉市生まれ。父・良則、母・文子のもとで育つ。東京大学文学部卒。テレビ番組の制作会社勤務を経て独立、フリーディレクターとして主にフジテレビでドキュメンタリー番組を多く手掛ける。2009年、自らの乳がんの闘病記録である『おっぱいと東京タワー~私の乳がん日記』でニューヨークフェスティバル銀賞、ギャラクシー賞奨励賞などを受賞。2018年に初の劇場公開映画として両親の老老介護の記録『ぼけますから、よろしくお願いします。』を発表し、令和元年度文化庁映画賞文化記録映画大賞などを受賞。2022年には続編映画も公開した。現在は全国で講演活動を精力的に行っている。

文・写真=信友直子

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