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浦井健治が語る、井上芳雄は「先輩であり、兄のような存在」ともにミュージカル界の未来を見据えて…

CREA WEB / 2024年11月21日 11時0分


浦井健治さん。

 シリアスなストーリーもコメディも飄々と演じてしまう浦井健治さんですが、長い間演劇界でトップランナーとして走り続けてきただけあって、舞台に対する情熱は人一倍熱いものをお持ちです。インタビュー後篇では、数々の作品で共演している井上芳雄さんのお話やこれからの演劇界についてもお話しを伺いました。


ミュージカル作品の性質が変わってきている!?


浦井健治さん。

――浦井さんはミュージカルのみならず、ストレートプレイにも積極的にご出演されています。向き合うときの気持ちの違いはありますか?

 喉のケアとか、細かいところの違いはあるかもしれませんが、僕は20年近くミュージカルとストレートプレイをやってきて、どっちをやっていても、やること自体は変わらなくなってきました。相乗効果で、どちらもより貪欲になったり、表現しなくてはいけないことがより深く広く、また、求められるものも高くなったりしていますが、井上芳雄さんをはじめとする、両方に出演している役者さんたちは、みんな同じ感覚だと思います。

 ただ、歌というものに関して、ちゃんと歌わないといけないのは最低限の技術としてもちろんありますが、作品によっては“歌を歌う”と、作品の質感と合わないということがあるんです。セリフと歌の境目というか……。歌がセリフと同じように聞こえないと、まったく別物になってしまうという作品が増えている感覚はありますね。

――ミュージカル作品が変わってきているという感じですか。

 例えば、映画になっているような王道のミュージカル作品だと歌のシーンだけで10分くらいあったりしますよね。歌があって、踊りがあって、タップを踏んで、次の芝居シーンに行く、みたいな。でもここ数年、いや、十数年は歌の中にお芝居があって、お芝居の中に歌があって、行き来している、もしくは同時に進行している、みたいな作品が増えているような気がします。

「明らかに芳雄さんがやっていらっしゃることは別次元」


浦井健治さん。

――井上芳雄さんのお話が出たので、井上さんのお話もぜひ。来年の『二都物語』の上演が発表されました。井上さんとの再演ですね。

 前回が12年前ですから、干支が一周しました(笑)。共演自体は2022年の『ガイズ&ドールズ』ぶりなので、そこまで久しぶり感はないですね。

――浦井さんにとって井上芳雄さんはどのような存在の方でしょうか。

 先輩であり、兄であり、常に時代を引っ張ってくれている方です。芳雄さんからしたら僕は後輩なのに、同志とか、同世代とか、いつも「一緒に」というふうに言ってくれています。

 ミュージカル愛が幼少期からある方なので、その未来を見据えて、自分のポジションで何ができるかに尽力されています。プロデューサー目線もあり、そういう能力に長けているので、司会業やバラエティなど、演技とは異なる仕事を行う意味もすべて咀嚼して活躍されていると思うんです。そういう人ってなかなかいないですよね。

 芳雄さんのような方が、楽しみながら一緒に歩んでくれるのは、本当にすごい時代だと思います。僕はタイミングが良かったと、心からそう思っています。

板の上に行ったときもニュートラルでいられる秘訣


浦井健治さん。

――浦井さんご自身は、このミュージカル界をどういう方向に持っていきたいと思っていらっしゃいますか?

 芳雄さんの代演で出演した『スジナシ』を観てくださった方はわかると思いますが、僕はそんなに言葉を持っている方ではないんです(笑)。それが多分、いいか悪いか僕のポジションなんだと思います。でも、演出家の方々が「浦井でやってみたい」と仰ってくださって、突拍子もないところを楽しんでくださっているのであれば、そこは、自分を信じていいのかもしれないと思っています。

――そのお話を伺って、劇団☆新感線で演じられた“シャルル王子”を思い出しました(笑)。

 ありがとうございます。「浦井、なんかいいじゃん」って思ってもらったときは、やはりプロデューサーや演者の先輩が自分をそう見せてくれているのは間違いないと思うので、すごくありがたいと思っています。その数珠繋ぎで、こういったポジションを任せていただけていますし、それを25年やってきているわけですから。

――舞台を降りて素の自分に戻られたとき、役はうまく抜けるタイプですか?

 声質や話し方、言葉選びなどがセリフに近しいものになるかもしれないですが、それをやり続けている自分が、実はニュートラルなんです。セリフをブツブツ言い続けているときもニュートラルということは、板の上でもニュートラルでいられるということなので、それが“緊張しない”ということに繋がっていくんです。ずっと地続きで、オンオフという状況に持っていける。

 王という人物を王に見せるのは、周りがそう見ているから。オンオフも変わらずセリフを唱えていることで、一緒に演じている方々が、自然と僕を役柄として見てくれるんじゃないかと思います。

――『天保十二年のシェイクスピア』の観劇を楽しみにしているCREA読者へメッセージをお願いできますか?

 ミュージカルや演劇、ライブというモノに皆さんが惹かれる理由を考えたら、コロナ禍を経験したのもひとつあるんじゃないかと思うんです。その場の空気を一緒に共有することは特別なこと、普通のことじゃないんだということに気が付けたからこそ、今のエンターテインメントがあるんじゃないかなって。

 チケット代は決して安い訳ではないので、一回の公演の重みというものを常に考えていなくてはいけないと思いますし、その一回が繋がっていくことで数百年先にも繋がるんだと思うんです。シェイクスピアもそうやって今まで続いてきたと思いますから。

 今回の座組として東京以外にも大阪、福岡、富山、愛知に行きますので、よかったらぜひ何回か観ていただき(笑)、今日はこの役、次回は別の役に注目、というふうに楽しんでもらえると嬉しいですね。そして、「明日も頑張ろう!」と思ってもらえるような、よりキラキラした輝きを獲得していただけるような演劇体験になればと思います。

浦井健治(うらい・けんじ)

1981年8月6日生まれ、東京都出身。2000年『仮面ライダークウガ』(EX)で俳優デビュー。2004年『エリザベート』ルドルフ皇太子役に抜擢。以降、幅広いジャンルの作品に出演。第22回読売演劇大賞最優秀男優賞、第67回芸術選奨文部科学大臣演劇部門新人賞など数々の演劇賞を受賞。舞台以外にも、23年3月には3rdアルバム「VARIOUS」をリリースし、東京・大阪にてソロコンサートを開催するなど多彩な活動を展開している。

文=前田美保
写真=佐藤 亘
スタイリスト=吉田ナオキ
ヘア&メイク=荒井秀美

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