鎌倉【手打ちそば さとう】 日本酒を“おためし”サイズで。レースのように繊細な衣の天ぷらも!
CREA WEB / 2024年11月17日 11時0分
鎌倉で旦那さんと暮らしながら、ハワイや沖縄、もちろん東京でも料理の本を作ったり、取材をしたり。料理編集者・赤澤かおりさんは、どんなに忙しくても元気いっぱいなのです。
忙しい毎日のなかで、ほっとするのはやっぱり、地元・鎌倉に戻って、もしくはおうちで目一杯働いて、お酒を飲む時間。基本的に前々から予約をとるよりも、その日のお腹に聞いて食べたいものと飲みたいものを求めて出かけます。
ふっと時間が空いたとき、ひとりでふらりと出かけた鎌倉で、女性ひとりでお酒を楽しむなら? 今回は「秋に楽しみたいおそばとお酒」をテーマに3軒を教えてもらいました。
魅惑の品書き札に「飲まずにはいられない!」
今年でオープン7年目の、扇ガ谷にあるカウンター席のみの小さなお蕎麦屋さん。秋になり、新蕎麦の声が聞こえてきて真っ先に思い浮かんだのがここでした。仕事仲間とサクッとお蕎麦を食べてからお茶でもしようと、久しぶりにお店を訪れたのですが、カウンター前にずらりと提げられたつまみが記された札に一撃。
しかもどれも墨で書かれた美しい文字!! これは飲まずにはいられないね、と昼間からくいくいといい調子で飲んでしまいました。
以前にも増して、季節を感じるつまみがかなり充実。当初は季節ごとに変えていこうと思っていたそうなのですが、お客さんから前のアレ、また食べたかったという声があまりにも重なったので、そういうものを残していくうちメニューにすべてを載せられなくなり、こうしてカウンター前に簾のようにひらひらとメニューが提げられるようになったのだそう。
なんだか手招きされているようで、じゃあ、これも、やっぱりこれも! と、追加し続けてしまいました。というのは言い訳で、少し涼しくなったからか、日本酒がいつも以上にじんわり染みておいしく感じてしまったというわけです。
こちらでは、日本酒を1合、2合だけではなく、“おためし”という、ちょっと飲みの注文ができるんです。試験官のような細めのグラスで飲む日本酒は、気軽で気楽で、くいくい飲めちゃうから不思議。ついつい、いろいろ頼んでしまいました。
こちらのお蕎麦は細くてうっすら蕎麦特有のあの色味が、味わいには蕎麦感がしっかりある、私の理想系。しかも、お蕎麦屋さんにありがちなちょっと盛りではなく、一瞬「え!?」と思うほど、しっかりした盛りで出してくれる太っ腹なところもいい~。
今日は、新蕎麦ということでシンプルに薬味せいろをオーダー。大根おろし、天かす、大葉、鰹節、みょうがを好みで合わせながら、ほろ酔いの体にすとんと落ちていくお蕎麦のおいしいこと。あー、大人でよかった。と、しみじみ思いました。
つゆは、本枯れ節と厚削りの鰹1本で勝負。スッキリとした味わいと旨みがお蕎麦本来のおいしさを引き立てます。温かいお蕎麦はもう少し複雑で、鰹に昆布、干し椎茸、鯖節、本枯れ節などを合わせたものを使っているそう。
私は温かいお蕎麦はあまり食べない派なんですが、ここのだけは特別で、季節を問わず、食べたくなってしまいます。それはこのやさしいかけ汁のせいなのかも知れません。
最近のお気に入りは玉子とじそばと、温かくはないけれど、かけ汁を楽しむなら繊細に細―く切った九条ねぎがたっぷりのった九条ねぎそば(1,200円)も捨てがたいんですよね……。
天ぷらの衣はまるでレースのよう
「本日の三種盛り」はひとりのときにおすすめ! これは、その日の気分で店主の佐藤さんが盛り合わせています。欲張りな私にぴったり。これにあとは季節の野菜の天ぷらを注文すれば、完璧です。徹さんの天ぷら衣は、きめが細かくて軽いのでいくらでも食べられるんですが、次の機会のお楽しみということで一日2種くらいまで、と決めています。
ダンナが一緒だとひとり2種類ずつにして、そのうちのどれかを天丼にしてもらい、半分ずつ食べるなんていう小技も使いますが、基本はひとりでゆるっと飲みたいので、それはたまの楽しみにしています。
それにしてもお蕎麦屋さんって、なかなか夜まで開いていないのがさみしい限り。みんなお蕎麦屋さんでガッツリ飲むなんてことをしたら、もっと夜までやってくれるお店が増えるのかしら!? 帰りしな、酔っ払った私がそんなことを徹さんに質問すると「そうですね~。でも、一日に蕎麦打ちできる量もありますしね」と至極真っ当な返事が帰ってきました。
確かに、おっしゃる通り。そうですね、欲張らないで、開いている時間を目指します。こちらの新蕎麦は12月くらいまで楽しめるそうですよー。
手打ちそば さとう
所在地 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-8-9 鎌工会館ビル1F
電話番号 0467-37-8381
営業時間 11:30~18:00
定休日 月・火曜
赤澤かおり(あかざわ・かおり)
料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)、編著に「いざ、豊島屋」(KADOKAWA刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美
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