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フランスのビーチはコート・ダジュールだけじゃない!「サン゠ナゼールの海小屋」で知る大西洋側のフランス暮らし

CREA WEB / 2024年11月16日 11時0分

#313 Saint-Nazaire
サン゠ナゼール(フランス)


写真右下の白い小屋がサン゠ナゼールの海小屋、カルレ。海岸線に沿って連なっています。

 フランスのビーチというと、ニースやサン・トロペといった、地中海に面したコート・ダジュールの華やいだイメージ。さて、今回ご紹介するサン゠ナゼールは大西洋側。一体どんなビーチが待っているのでしょう?

 そもそも今回のフランスへの旅は、現代アートの街ナントで毎年夏に2か月にわたって開催される芸術祭「ル・ヴォワイヤージュ・ア・ナント」が目的。この期間は街のあちこちにインスタレーションがちりばめられ、ヨーロッパの人々を中心に100万人ものツーリストがやってきます。


アートで街おこしに成功したナント。毎夏、芸術祭を開催し、世界中から観光客が訪れます。

 今年の「ル・ヴォワイヤージュ・ア・ナント」のテーマは“木”。ふだん気にとめることもないけれどそこにある、そんな当たり前の名脇役、樹木にフォーカスしています。グララン劇場前の巨大な根っこや、植物園の中にそびえる巨大な木の男など、作品を探しながらの街歩き。歩けば歩くほど自分が街になじんでいく、そんな感覚がまた楽しい!


SF作家のジュール・ヴェルヌ生誕の地、ナント。それにちなんで、機械仕掛けの象のアートも。

船に乗ってサン゠ナゼールへ。船上でもアート鑑賞を

 ナントからサン゠ナゼールへはロワール川から船に乗って目指しました。この川下りでも「エスチュエール・ナント<>サン゠ナゼール」という芸術プログラムを開催。両岸に33点の屋外コレクションが常設されており、緩やかに流れる水辺の風景と共に、現代アートが次々と目を楽しませてくれます。


ナントからサン゠ナゼールへロワール川をくだる途上も、両岸にアートが。

 ナントから船に乗ること、約2時間。芸術プログラムも終盤に入り、オーク材の通信塔のオブジェを通り過ぎると、船はサン゠ナゼールの港に入っていきます。岸壁には工場群や石油コンビナートが立ち並び、巨大な貨物船が停泊する、大西洋に注ぎ込む河口の街に到着です。


工場群が岸に見え、サン゠ナゼールの港に船は入っていきます。

 サン゠ナゼールは20世紀半ばまで、海を隔てたアメリカとの航路によって、造船業や海運業で栄華を極めた港町。第二次世界大戦ではドイツ軍の潜水艦の要塞があったことから集中的に爆撃を受け、街の85%が壊滅してしまった過去も。それでもラ・アヴァンヌ地区の家並みには第一次大戦前の、華やかなりしベル・エポック時代の風情が残されています。


建造からほぼ50年を経たサン゠ナゼール橋。全長3356メートルはいまだフランス最長だとか。

閑静な住宅街、ラ・アヴァンヌ地区。歴史を感じる建物も。

 サン゠ナゼールにも巨大な屋外アートがあります。そのひとつが、“カニの爪”と呼ばれる海に延びた桟橋の間に設置されたコンクリートの作品。高さおよそ7メートルもの足とプルオーバー、そして消化器官のオブジェが、干潮時に干上がった浜辺に点在していました。風や波によって浸食されていくのも、アートなのだとか。


浜辺に3つのオブジェが点在しています。Le pied, le pull-over et le système digestif (足、プルオーバー、消化器官), Daniel Dewar & Grégory Gicquel, Saint-Nazaire, Estuaire Nantes<>Saint-Nazaire ©Franck Tomps / LVAN

サン゠ナゼールのビーチを探訪

 サン゠ナゼールには20のビーチがあり、海岸線には遊歩道が整備されています。散歩やサイクリングに気持ちよさそう。カフェやレストランが集まる、自動車が進入禁止のエリアもあり、海を眺めながらランチを楽しむ地元住民の姿も。海辺の街の暮らしを垣間見ることができます。


海に面したレストラン。海岸線をハイマツが縁取っています。

港近くにあるビストロ「ギャマン」。素材を生かしたクリエイティブな料理が美味です。

 海沿いのアルベール1世通りを、海を左手に進むと、サン゠ナゼールならではの印象的な風景に出会えます。それは通称「カルレ(Carrelets)」と呼ばれる海小屋の集まり。


竹馬のような足場が組まれた海小屋、カルレ。市街地近くには20軒ほどが並んでいます。

 浅瀬や波打ち際に櫓のような足場を組み、その上に小屋が載った造り。テラスに“カルレ”という名の“四つ手網”が設置されています。これは南フランスなどの伝統的な漁法で、テラスから手網を水中に沈め、しばらくしてから引き上げると、網の上に残された小魚やカニが獲れるという仕組み。漁師さんは獲物がかかるまで、小屋で待てばいいわけです。スリランカ南部の櫓漁と、スタイルが似ていますね。


テラスにあるハンドルを回して、四つ手網を操作します。

 このカルレは市街地近くには20軒ほどあり、うち2軒は1時間50ユーロでレンタルすることができるそう。室内は3畳ほどの広さで、テーブルとイスが1セットあるのみ。シンプルですが、それでも海の上で過ごす時間は、特別なひと時となりそう。いつかやってみたい、サン゠ナゼールならではの海の満喫法です。


カルレ内。波音に包まれて、海をすぐそばに感じます。

 サン゠ナゼールの20世紀中期の黄金期を知るなら、博物館「エスカラトランティック」へ。アメリカに向けて大西洋を横断した伝説の大型客船ノルマンディー号やフランス号の大航海を追体験できます。


館内には200点の展示が。カクテルが飲めるバーもあります。

 ランク別に分かれたキャビンや優雅なラウンジ、シルバーや皿、メニューが展示されたレストランなど、各展示室をめぐるうちに気分はいつしか紳士淑女に。当時の優雅な船旅の乗船者と気分が重なります。


博物館からの退出は、ゲストが乗った小さなボートをクレーンでおろす、当時の下船時のような演出です。

 ちなみに、『タンタンの冒険』シリーズの『ななつの水晶球』の物語でもタンタン、スノーウィ、ハドック船長が大西洋航路だった頃の、この地を訪れているとか。タンタンファンの聖地巡礼にもなりますね!

サン゠ナゼール

●アクセス パリからナントへ空路で約1時間10分、または列車で約2時間。ナントから列車で約1時間。ロワール川の川下り(芸術プログラム)では約2時間。

取材協力
ナント観光局 www.levoyageanantes.fr
サン゠ナゼール観光局 www.saint-nazaire-tourisme.jp/
フランス観光開発機構 www.france.fr/ja
エールフランス航空 www.airfrance.co.jp


古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●Instagram https://www.instagram.com/chieko_koseki/

文・撮影=古関千恵子

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