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「現場を愛し、愛されたい」「“芸能人”ではなく人間で在りたい」櫻井海音が俳優歴4年で確立した思考

CREA WEB / 2024年11月20日 11時0分


櫻井海音がチーフマネージャーから「一度だけ怒られた」のは……詳しくは後篇で。

 赤坂アカ氏と横槍メンゴ氏の共同名義で、2020年に週刊ヤングジャンプにて連載スタートし、コミックスの累計発行部数は1,750万部(2024年11月現在)を突破した【推しの子】がついに実写化。ドラマはPrime Videoで11月28日(木)21時より世界独占配信、その続きとなる映画は12月20日(金)より全国公開します。

 伝説のアイドル・アイ(齋藤飛鳥)の死の真相を追い、前世の記憶を持ったままアイの双子の子どもとして転生したアクア(櫻井海音)とルビー(齊藤なぎさ)が芸能界へ身を投じ、様々な思惑が交錯する光と影に飲み込まれていくストーリー。


©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 ©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

 本作で、母であるアイの死の真相を暴くため芸能界に潜り込むアクアを演じるのは、21年から本格的に役者業をスタートさせ、「君に届け」や「VIVANT」など、話題作への出演が続く櫻井海音さん。かねてより「原作の大ファン」と公言していた櫻井さんに、作品についての思いやアクアを演じるにあたっての心構え、俳優としての今の思いを聞きました。


「原作が大好き」だからこそ


©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 ©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

――【推しの子】について、以前Instagramで「ずっと原作を追っていて大好きな作品だった」と綴っていましたが、櫻井さんの原作の「推し」ポイントを教えてください。

 初めて読んだとき「芸能界」という世界をここまで繊細に丁寧に描いている作品は他にないと思いました。僕も含め、この業界で仕事をしている人が見ても圧倒的にリアルだし、生々しくもある。だけどそこにはそれぞれの正義があって、誰が正しいとか悪いとかではなく、いろいろな正義がぶつかり合う中で生まれてくる物語だなと感じました。

 しかも、それをちゃんと成り立たせるキャラクターたちの個性の強さと人間味がそれぞれにあるんです。そんな大まかなくくりがある中で、さらにサスペンスやミステリーなどの要素があるというのが新鮮でした。

――今のアツい話しぶりからも、本当に原作がお好きなのが伝わってきます。原作との出会いはどんなきっかけだったのですか?

 きっかけは、出演している「王様のブランチ」の漫画を紹介するコーナーでした。そこで【推しの子】が紹介されていたのをスタジオで見ていて「面白そう」と思って読み始めました。当時は原作本もまだ3巻くらいしか出ていなかったのですが、その後、アニメが始まって社会現象になって……。そんな流れも知っていた中で、今回のオファーをいただいたんです。


©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 ©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会

――そんな“社会現象”を巻き起こした作品の主演を背負われる率直なお気持ちは?

あるタイミングで肩の荷がふと下りた


櫻井海音さん。

 原作を読み始めた時から「もし実写化するならやりたいな」とずっと思っていたんです。だけど、まさか本当にアクアのオファーが自分に来るとは思っていなかったので、お話を聞いたときは驚きと喜びが同時にわき上がりました。もちろん主演という立ち位置に対するプレッシャーはありましたが、それ以上に「自分が大好きな作品で大好きな役をやれるというこのチャンスを手放したくない、他の人には渡したくない」という気持ちが強かったですね。

 現場に入ってからもプレッシャーはありましたが、撮影期間中、あるタイミングで肩の荷がふと下りた感じがしたんですよ。ほかのキャストやスタッフも含めて、全部署の方々が同じ方向を見て、同じものを背負っているんだと実感したというか。

 一人一人が【推しの子】に対する愛情やリスペクトの気持ちを持っていて、だからこそぶつかることもあるんですけど、そういうものが見えた時に「僕だけで作っているものではないし、僕だけが背負うものでもないんだな」と気づいたんです。


櫻井海音さん。

――ご自身の撮影がない日でも、ずっと現場にいたそうですね。

 とにかく原作が好きなので、一愛読者として「あのシーンがどういう風に実写化されているんだろう」と、自分がいないシーンが気になっちゃって(笑)。自分の撮影がない日でも、見に行きました。

 僕のモットーは「現場を愛して、現場に愛されたい」なんです。それはこの作品に限ったことではなく、どの現場でもそうしようと思っていることです。

――原作ファンとして、撮影中特に嬉しかったことは何かありましたか?

 現場に赤坂(アカ)先生と横槍(メンゴ)先生が来てくれたことですね。「漫画家の中でもこんなフランクな人たちはいないよ」とご本人たちが自負されるくらいフランクな方たちで、「芸能界のこういうところを描いてほしいと思うことはない?」「実際はどんな感じ?」と聞かれたりしました(笑)。

――アクアを演じるにあたって、ご自身の中で「アクアはこうだ」と思っていたものがあったのでしょうか。

 それは常にありますが、そこにあまり自分の自我やエゴみたいなものはいれません。原作に対する愛とリスペクトを持ったキャストとスタッフが集まっていたので、「みんなで作っている」という実感もありましたし、好きだからこそ、原作に描かれているものを忠実に再現したかったんです。

 例えば、ひとつのシーンを撮る前に原作の同じシーンを読み返して「ここでアクアはどういう立ち方をして、どういう表情しているんだろう」とか、どこでセリフが改行されているかを見て、そこで言い方を少し変えたりするなど、徹底して演じました。

僕は「芸能人だから」と称されるのが大嫌い


櫻井海音さん。

――普段はあまり本心を見せないアクアですが、感情の機微をどのように表現しようと思われましたか?

 原作という正解があってそこに答えがあるので、それを忠実にやるだけです。アクアの声色や表情、アクアがどういう思いで芸能界に入って、アイのことや誰かわからない父親に対してどう思っているのかといった心情も含め、細かい所作などは事前に原作を読み込むという作業を撮影以外の日でもずっとしていたので、常に頭の中にアクアがいる環境を作っていました。

――2年前、CREAのインタビュ―にご登場いただいた際も「思考することが好きなので、俳優の仕事は楽しい」と仰っていましたが、今はどうですか?

 意外とその時からは変わっていないですね。元々思考することはすごく好きなので、どうすれば視聴者の方に分かりやすく伝えられるかなとか、何が求められていて、自分はどんな表現をするのが正しいのかなといったことを考える時間が好きなんです。

 最近はそれにプラスアルファして、現場での居方など芝居以外のことも、この2年で少しずつ確立されてきたのかなという実感があります。


櫻井海音さん。

――「現場での居方」というのは、具体的にどういったものなのですか?

 先ほども言ったように「現場を愛して、現場に愛される」ために、自分ができることは何か、「現場ファースト」でいるにはどうあるべきか、ということを探し続けています。自分が現場のためになる存在でいたいので、迷惑になることや負担のかかることは一切したくないんですよ。

 もちろん俳優なので、芝居で勝負することも大事だとは思いますが、僕は「俳優だから」とか「芸能人だから」と称されるのが大嫌いなんです。ひとりの人間として、同じ作品に向き合う仲間として、常に現場に対してのリスペクトと愛を持つことを忘れないようにしています。

――いつも何かを考え続けていると、ときに思考の迷路に迷い込むことはありませんか?

 それはあまりないですね。ドラマや映画の撮影って、まずは段取りをしてカメラテスト、その後本番という順番があるんですけど、段取りの段階でスミス監督、松本佳奈監督も含めてちょっとしたディスカッションをしたんです。そこで自分が求められているものと自分が表現できる範囲の塩梅を探って、それをテストで出す。そこで違っていたらまた変えて、本番には「これだ」というものを見つけられていることが多いです。

 僕は自分自身が納得しないままやっていることは何もないので、自分なりの答えをいつも本番でちゃんと出せていると思っています。【つづきを読む】

櫻井海音(さくらい・かいと)

2001年4月13日生まれ、東京都出身。2020年に俳優活動をスタート。近年の主な出演作に、映画『嘘喰い』、『バジーノイズ』、ドラマ「VIVANT」、WOWOW「アオハライド Season1」、など。

文=根津香菜子
撮影=松本輝一
ヘアメイク=高草木剛(VANITÉS)、吉沢実希
スタイリスト=藤井晶子

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