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【大船ひとり飲み】新鮮な魚介と赤星の生ビール。新しくなった駅前のシンボル“かんのん食堂”へ!

CREA WEB / 2024年12月8日 11時0分


定食飲み、できます。

 鎌倉で旦那さんと暮らしながら、ハワイや沖縄、もちろん東京でも料理の本を作ったり、取材をしたり。料理編集者・赤澤かおりさんは、どんなに忙しくても元気いっぱいなのです。

 忙しい毎日のなかで、ほっとするのはやっぱり、地元・鎌倉に戻って、もしくはおうちで目一杯働いて、お酒を飲む時間。基本的に前々から予約をとるよりも、その日のお腹に聞いて食べたいものと飲みたいものを求めて出かけます。

 ふっと時間が空いたとき、ひとりでふらりと出かけた鎌倉で、女性ひとりでお酒を楽しむなら? 今回は鎌倉駅から横須賀線で2駅の「大船」。実は、ひとり飲みに最高すぎるエリアなのです! 今回は最高に癒される食堂飲み。


酒好きのオアシス・通称“かんのん食堂”


昔からずーっと駅前のお店。新しくなった店構えはこんな感じ。

 まだ20代だった頃にここを訪れるのは、ちょっと勇気がいりました。今でも、ここを訪れると大船の市場と古本屋をぶらりと流した後、緊張してガラガラと扉を開けたあの頃を思い出します。

 古本屋さんで手持ちの本を売ってはまた買って、残ったお金でサクッと飲んで帰ろうというのがいつものパターン。でしたが、濃い木の色で囲まれた風情ある店内にいるのは、ほとんどが年輩の方ばかり。自分にとってはおじいちゃんのような方のなかにまじり、一丁前に飲むのは結構難儀なことでした。

 それでも挫けず、幾度となく通ってきたのは、お店の年期の入った佇まいと店員さんたちの気取らない対応が好きだったから。早くこの空気に馴染める大人になりたいと思ったものです。

 あれから約30年。幾度となく通い、果たして馴染めているのかは謎ですが、今もこうして時々、ひとり夕方飲みを楽しませてもらっております。

 そんなここは、JR大船駅から徒歩1分。大船観音とは反対側に出てすぐの、魚屋さんも営んでいる居酒屋さんで、現在四代目となる女将が切り盛りする食堂部分と、弟さんが仕切る魚屋さん部分があるところ。魚料理のうまさは言わずもがなの「活魚料理 かんのん」、通称「かんのん食堂」。昭和12年創業、現在四代目が切り盛りする現在も、昼間から気持ちよく杯を交わす熟練の常連たちで賑わっていました。

 ここでの飲みはまず、いくつかある小鉢を頼み、それから定食を注文してさらにそのおかずでも飲むという、ガッツリ飲み。ビールも、蕎麦屋(前シリーズもご覧ください!)では大人ぶって小瓶にしていましたが、ここでは大瓶か生ビールをジョッキで。


ふわふわの「しらすおろし」670円。

 まずはしらすおろしで駆けつけ一杯。それからサクサクに揚がったアジフライをいただきながら、さらにビールをぐびぐび。このアジフライに添えてあるマカロニサラダにソースがちょっとついたりしたのを、合わせながら食べるのがいいんです。

 ちなみに生ビールはサッポロ。大瓶は赤星という私の好みのビールというのもうれしい限り。


湘南といえばアジ! ビールといえばアジフライ! 800円。生ビールは650円。

 小腹が満たされたら間髪入れずに定食を注文。一番人気とお店の人がいう刺身定食は、こんなにすごいのに1,300円! と思うお得な定食。今日は赤身、中トロ、カンパチ、帆立も入ってこのお値段。太っ腹~!

 添えられたれんこんのきんぴらや香の物をつまみながら、ビールをもう1本。それから刺身をつまみとして堪能。ちょっと飲みすぎたかなと思ったら、白飯をひと口パクリとして立て直し。この繰り返しで、最後は味噌汁と白飯で〆ています。


香の物ときんぴらもついた刺身定食はお店の一番人気。ご飯も丼でモリッと出てきます。1,300円。

このキリッとした角が新鮮さを表しております。

昼からお酒を楽しむ面々で満席!


思わず、くーっとなります。

 冬の昼下がり。木枯らし吹く大船の街をよそに今日は飲むぞ~! というお客さんですでに満席。すごい熱気。圧倒されすぎないようにマイペースで飲まないと、と自分に言い聞かせるも、お隣のテーブルが気になってしまう。つまり、人が頼んでいるものが気になってしまうんです。おいしそうだと、すぐ「それなんですか?」と聞いて追加注文してしまうから、いつまでたっても飲み終わらないということに。

 今日も店内は、いい感じのおじいちゃんチームとおばあちゃんチーム、早上がりしたような会社員の方のひとり飲み(男性も女性も)など、バラエティにとんだお客さまがギュギュウでした。


新しく建て直し、明るくなった店内。奥が座敷で、手前がテーブル席。

 鎌倉好きならご存知の方も多いと思いますが、かつてこちらのお店はもらい火によって全焼してしまい、地元はもちろん、ファンの方たち(私も!)がそれはそれは悲しみ、がっかりしたという過去がありました(ぽっかりあいた更地になった土地の前で拝んでいる人を見かけたこともありました)。が、数年後、見事に復活。みんなどんなに嬉しかったことか。それもこれも女将と弟さんの努力の賜物。

 気さくで明るい女将の話によれば、その昔、この魚屋さんはおじいちゃんとおばあちゃんが駆け落ちして始め、その後に魚が名物となるこの食堂を併設したのだそう。なるほど、駅前の食堂が地元の方にも、観光客の方にも愛されるのは、そんな熱い想いと共に生まれたお店だったからなのか~と、納得。そして、その想いは今もなお、四代目となる女将さんたちに引き継がれ、今日も威勢よくお店を切り盛りされていました。


これがレジ前のホワイトボード。要チェック!

 最後に。ガラガラと扉を開けたら席に座る前に、レジ前のホワイトボードのチェックをお忘れなく。ここに、見落としちゃならない本日のおすすめがズラリと並んでいますので。うっかり見落としていると、お支払いのときレジ前で「あー、カキフライも白子ポン酢も食べたかったー」と、私のように悔しい思いをすることになりますからね~。


テーブルと座敷席に加え、ちゃんとひとり席用のカウンターもありますのでご安心を。

 次回は、本日の煮魚(この日はめばる、カレイ、鯛の3種)にプラス400円で定食にできるものを注文したいと思います。煮汁がつまみにもなるので一石二鳥! と、ホワイトボードを見るだけで、また今度飲むことを考えてしまう自分が怖い。

活魚料理かんのん

所在地 神奈川県鎌倉市大船1-9-8
電話番号 0467-45-1848
営業時間 11:30~20:00(19:00L.O.)
定休日 水曜、不定休

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)、編著に「いざ、豊島屋」(KADOKAWA刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

文=赤澤かおり
写真=榎本麻美

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