【秋ドラマ】「もう号泣ですよ」定時制高校を描く話題のドラマ『宙わたる教室』 原作者・伊与原新が選んだ名場面ベスト5
CREA WEB / 2024年12月3日 17時0分
定時制高校の科学部を舞台にした、窪田正孝主演のドラマ10『宙わたる教室』(NHK総合 火曜22時ほか)。「秋ドラマ」の各種ランキング上位に挙がる実力派の本作には、原作者の伊与原新さんも番組放送後、自らのXに
ヤバくないですか、ドラマ
自画自賛じゃなくて、澤井さんの脚本、役者さんたちの演技、制作陣の皆さんの熱意。素晴らしすぎないですか
もう号泣ですよ
窪田正孝さん、目の動きだけであれだけ多彩な表現ができるの、やっぱり天才
あと、小林虎之介さんの岳人のしゃべり方、好っきゃわぁ
『宙わた』半端ないって
面白くてめっちゃ泣かせるもん
そんなんできひんやん普通
と投稿するなど、太鼓判を押している。そんな伊与原さんがご自身で選んだ『宙わたる教室』の名場面とは――。
第1話「夜八時の青空教室」
岳人の学業不振の理由がディスレクシアだと判った場面
岳人を演じる小林虎之介さんの迫真の演技からは、子供の頃から文字をうまく読めず、周囲からは馬鹿にされ、努力が足りないと言われて、ずっと苦しみ続けてきた感情が、数倍になって伝わってくるというか、もうびっくりしました。
岳人 「今さらそんなこと言われて……どうしろっつんだよ。……何年無駄にした? 10年? いやもっとだよ! 俺が喜ぶと思った? 前向きになれるとでも思ったかよ?」
ディスレクシアを指摘する理科教師・藤竹役の窪田正孝さんは、実はこの前のシーンで、退学届をうまく書けない岳人のことをじっと冷静に観察しています。そこが科学者らしさにあふれていて、ふたりの緊張感をはらんだ一連のシーン全てが素晴らしいです。
第3話「オポチュニティの轍」
佳純が火星探査車・オポチュニティについて屋上で話す場面
起立性調節障害を抱えて、保健室登校を続けるSF小説好きの1年生・名取佳純を描いた第3話「オポチュニティの轍」は、もともと原作でも人気の高い話です。
ただ原作では、藤竹と佳純がオポチュニティについて話す場面は物理準備室になっていますが、ドラマでは高校の屋上になっています。そのことで火星には今も動かなくなったオポチュニティがいることを想起させられるので、さらにいいと感じました。
佳純 「……寂しいだろうな」
藤竹 「そうですか? 僕はそうは思わないです」
その後、藤竹の説明によって孤独の象徴だと考えていた、壊れた探査車の見方を佳純は変えることになります。ものの見方が考え方によって変わってくる――小説では地の文で書かれていることが、ドラマでもさらに細やかに描かれています。
第4話「金の卵の衝突実験」
教室のうるさいじじいだった長嶺が過去を独白する場面
青年時代、高校に通えず働くしかなかった70代の長嶺は、名優・イッセー尾形さんが演じています。
その過去を教室で話す独り芝居には、ただただ圧倒されました。怒りがベースにあるわけですけれど、その怒りの表し方は誰にも真似のできないものだと思います。
長嶺 「若い頃私を動かしていた怒りはね、外に向かってた。今は、自分に向かってます。許せない、自分が。なぜ私じゃなく、妻なんだ!」
年齢とバックグラウンドの違いで、激しく対立していた長嶺と岳人は、これ以降、だんだん歩み寄っていきます。
経営していた町工場で、長嶺が岳人に「飯、食うか?」と誘う場面(第7話「浮遊惑星のランデブー」)もジーンと来てお勧めです。
第6話「コンピューター室の火星」
コンピューター部部長の要と弟の子供時代の回想場面
これもドラマのオリジナルの部分です。全日制の生徒でコンピューター部部長の要は、弟が家庭内で暴れたことで、高校受験に失敗。家でプログラミングすることもままならず、弟の衛に憎しみさえ感じています。
そんなときに小学校の頃、自分が弟にプレゼントした自作のゲーム機を発見し、当時のふたりの関係を思い出すんですね。
衛 「――これ、兄ちゃん作ったの?」
要 「そうだよ」
衛 「……すげえ。兄ちゃんかっこいい」
兄を尊敬する弟と、弟を可愛がっている兄……自分の子供たちを見ていると、喧嘩ばかりしてそんなことは全然ないんですが(笑)、その後、壊れてしまったそのゲームを直して、弟の引き籠もっている部屋の前にそっと置く。
弟を理解しようとしはじめた要の姿に胸が熱くなりました。
第7話「浮遊惑星のランデブー」
大学院時代に藤竹の依頼で、同期の相澤が模型を作る場面
人間の頭と身体って直結していて、ものを作ることによるリフレッシュの効果って絶対にあると思っているんです。
ふたりの恩師の伊之瀬先生の口癖も「手を動かす」ですし、実際、僕もコンピューターの前でデータ処理ばかりしていて疲れ切ったとき、野外に出て岩石を採ったり地層を測ったりすると、頭がスッキリして思考が深まるのをよく感じていました。
藤竹 「作ってくれよ、そういうの得意だろ?」
相澤 「そんなヒマないんだよ。自分でやれ」
藤竹 「俺はそんな器用じゃないよ」
相澤 「は?」
藤竹 「データばっかり睨んでないで、手を動かせ!」
僕も大学院時代は、それこそ「院生部屋」に1年中いたんですが、そこには先生は滅多に来なくて、先輩や同期といろんな話をしながら濃密な長い時間を過ごしました。
現在はJAXAで大きなプロジェクトを任されている相澤が、昔完成させた探査機の模型を今も自分の研究室に飾っていて、それを眺める場面もすごく意味深ですよね。
さて、本インタビューの時点で伊与原さんがドラマ『宙わたる教室』を視聴したのは第8話「メテオライトの憂鬱」まで。第9話、第10話で、さらに原作者や視聴者を泣かせる名場面が繰り広げられることを大いに期待したい!
文=文藝春秋出版部
写真提供=NHK
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