名前が「片岡明日香」、『めちゃイケ』にハマって…日テレ若手プロデューサーが語る数奇な運命「テレビしか眼中になかった」
CREA WEB / 2024年12月10日 11時0分
配信プラットフォームが活況を呈し、テレビの観られ方が大幅に変わりつつある今、番組のつくり方にもこれまでとは違う潮流が勃興しています。その変化の中で女性ディレクター/プロデューサーは、どのような矜持を持って自分が面白いと思うものを生み出しているのか。その仕事論やテレビ愛を聞く連載です。
今回は『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』『with MUSIC』『おしゃれクリップ』 などに携わり、入社6年目にして『女芸人No.1決定戦 THE W 2024』のプロデューサーに就任した片岡明日香さんにお話を伺いました。(前後篇の後篇/始めから読む)
エンドロールで「かたおかあすか」を発見して
――1996年生まれ、2019年入社でいらっしゃいます。片岡さんが就活をしていた時期のテレビ業界って、昔ほど“憧れの業界”ではないですよね?
全然憧れられてないですね(笑)。誰も目指してなかったです。
――その中にあって、なぜテレビを志望されたんでしょう。
恥ずかしいんですけど、私、名前が「かたおかあすか」なんですよ。
――あぁ! 『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)の片岡飛鳥さんと漢字違いですね。
私が小学生の頃ってフジテレビのバラエティが全盛期で、めちゃめちゃテレビっ子だったんです。『めちゃイケ』をずっと観ていて、そこで「私はテレビ局に行くんだ」って勝手に植え付けられて。
――その頃すでに片岡飛鳥さんを認識されていたんですか?
してました。エンドロールで知ったんだと思います。『めちゃイケ』の番組中で「アスカさん」って言われているのをよく聞いていて、「誰だろう」とずっと思っていたんです。それでエンドロールをよく見たら「片岡飛鳥」って名前があって、字は違うけど音が一緒だ! って。のちに「すごい有名な人だったんだ」と知りました。
――エンドロールをそんなにじっくり見ていたということは、制作への興味が強かったんでしょうか。
その頃はスマホもなかったんで、テレビしか見るものがなくて、文字とかテロップとか隅々の情報まで全部観ていたんですよ。当時観ていた映像の記憶はめちゃくちゃはっきり残ってます。それと、私は実家が本屋だったんで、家に本ばっかりあって。だからこそ逆に「本とは違う分野に行きたい」となんとなく思っていたのもありますね。
私は一個決めたらこう、というところがあって。子どもの頃の「テレビに行くんだ」という考えのまま、大学はマスコミに行けそうなところを選んで岡山から上京して、そのまま就職もテレビしか考えていなかったです。
――「かつて観ていたようなテレビを作りたい」と。
いや、「テレビを作りたい」というより、私は今27歳なんですけど、この世代の考え方として「楽しいことをずっとしていたい」が強いんですよね。小学生だった私にとって楽しいこと=テレビだった。だから「テレビを作りたい」が先にあったんじゃなくて、「楽しいことをしていたいからテレビに入る」なんです。その思想が大学生になっても解けなかった。なんでそれが解けなかったのは自分でもわからなくて、怖いです(笑)。
――大学で東京に出てきたら、もっと楽しいこともいっぱいあったのでは?
そうなんですよ。しかも、テレビ局で働いている人間がこんなことを言うのもよくないですけど、高校以降はテレビをあんまり観てないんです。中学校ぐらいまでしか観てない。でも「楽しかった」っていう子どもの頃の記憶がこびりついていて、そのままここまで来てしまいました。
カルチャーショックだった、テレビ局での「通過儀礼」
――夢を叶えて入ったテレビの世界で、驚きや違和感はありましたか?
実際入ってみると、楽しいものを作るための努力と熱量がえげつないなと思いました。あとは正直意外と地味な仕事も多いな、と(笑)。キラキラテレビ!というわけではなく、ほとんどが地道な積み重ねの作業です。
ただ、今でも『THE MUSIC DAY』や『THE DANCE DAY』『ベストアーティスト』『24時間テレビ』などの大型生放送番組の現場で、制作・技術・美術全てのジャンルのプロのスタッフが大集結して、一緒に番組を作って生の歓声を浴びると、「テレビってやっぱり楽しい!」と思います。そこは小学校のときの感覚のままですね。
――「面白いものを作る努力がえげつない」というのは、具体的にはどんなところですか。
日本テレビに制作で入社すると1年目は必ず『24時間テレビ』を担当するのが伝統なんです。通過儀礼みたいなものですね。全員で、めっちゃデカいカンペを作るんですよ。高さ4〜5メートルくらいの。ドラマ『ブラッシュアップライフ』でもオマージュされてましたね。
大きすぎて句読点や濁点はうまく印刷されないから自分たちで手書きで書いたり、本番はそのカンペをタレントさんの前で脚立に登って掲げて、指し棒で『負けないで』の歌詞を一文字ずつさらったり。
それだけの仕事で1カ月が終わるんです。鬼のカルチャーショックでしたね。テレビで面白いことをやるために、その裏ではこれだけ多くの人が大変な仕事をしているんだと入社してわかりました。
――その通過儀礼を経て、何が身につくんでしょう?
そのときは思考停止でとにかくやるしかなくて、とにかく目の前のことにがむしゃらで。でも、のちにディレクターになったときに、「演者さんのカンペを見やすくする」という作業ひとつがどれだけ重要だったかに気づくんですよね。気づかないうちに叩き込まれている。
――「思考停止でやるしかなかった」と言いながらも、その状況を客観的に観ていた印象を受けました。やはり「もうちょっとどうにかならないのか?」という思いはあるのでは?
あります。1年目でその経験があったので、完全に振り切れてしまい(笑)、「こうしたい」「ああしたい」を言えるようになったんです。テレビ業界での女性の生き抜き方を知ったというか。
理不尽だなということに心を埋め尽くされるよりも、精神に高嶋ちさ子さん、心にギャルと粗品(霜降り明星)を飼って手を動かすしかない。それが前篇で話した、『THE W』の認知度を高めるために意見を出し続けていたことにつながるんですけどね。
なぜ同世代や女性がバラエティをやめていくのか
でも全員が全員そう考えるわけじゃないので、バラエティの制作から女性がいなくなっちゃうんでしょうね。「これは私の幸せじゃない」「これは私のQOLを満たせていない」ってちゃんと気づける。
気付けるのもすごいことだと思います。私は諦められないから、しぶとく残っているんじゃないかって。負けず嫌いなんでしょうね、多分。
――仕事の中で達成感を覚えたりめちゃめちゃ楽しかったりする瞬間があることで、諦めずに済んでいるんでしょうか。
もちろん日々担当している業務の中で内心ガッツポーズをする瞬間はあって、そういうときは達成感があります。『笑コラ』のスタジオで所(ジョージ)さんが自分が作ったVTRで爆笑してくれた瞬間、音楽番組で担当したアーティストさんから「演出すごく良かった!」とお褒めの言葉をいただいた瞬間、『24時間テレビ』の中継車演出をやり終えた瞬間とか。
ただ、それはご褒美って感じかなぁ。目標、なんなんだろう……でもやっぱり、私は『めちゃイケ』で育ったから「とにかく何も考えずに笑える番組を作りたい」というのは根底にありますね。
――ご自分で企画を立てて実現された経験はあるんですか?
ピースの又吉(直樹)さんの『遠回りな答え』というコント番組をつくりました。又吉さんのところに芸人やアイドルが悩み相談に来て、その悩みを解決すると見せかけて変な方向に話が膨らんでいって、でも最終的には解決する、みたいなコントですね。ひとつの話がねじれていった挙げ句にもとに戻るようなストーリーが好きなんです。
ドラマみたいなコント特番をやりたいと思っていたときに、編成から「なんでもやっていいよ」と言われたので企画をねじ通して、放送作家のオークラさんに台本を書いていただいて。朝まで一緒に台本作業をしました。
――やりたかったことを実現させた経験は、その先の目標を明確にしてくれそうなものですが。
これは個人的な反省になっちゃうんですけど、やってみて気づいたのが、自分がやりたいことをやると数字をガン無視したアートみたいな番組になっちゃうんですよね。だから『遠回りな答え』は、めっちゃマニアックな番組になってました。
テレビっ子だから、普段やっている『笑コラ』のVとかはちゃんと“テレビ”を作れるんですよ。でも自分主導になると多分、「このほうが美的に美しい」みたいな考えが強すぎるんでしょうね。テレビの演出家としては致命的です(笑)。 頑張って欠点を直すべく、修行しています。
――前篇で『THE W』に関して、美的な観点を活かして宣伝戦略を練ったという話を聞かせていただきました。番組の宣伝を目を引くものにするという点においては、その観点は生きたのでは。
そうですね。だけど、それがまだテレビ制作に応用できてないっていう……(笑)。私は自分が先導して作っていくことより、みんなで一緒に何かを作るのが好きなんです。大型特番をみんなで一緒に作っていって、そのピースとしてそこにいるのが好きで楽しい。
大きい番組でこそ言いたいことを言って、やりたいことをやり通していこうと思ってます。そしていつかは土曜日の8時に自分の演出番組を持ちたいです。日テレの片岡明日香として!
片岡明日香
日本テレビ番組プロデューサー・ディレクター。2019年日本テレビ入社。担当番組は『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』『with MUSIC』『おしゃれクリップ』『女芸人No.1決定戦 THE W』『THE DANCE DAY』『THE MUSIC DAY』『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』など。
文=斎藤 岬
写真=平松市聖
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