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ジャズカメラマン・中平穂積さんを偲んで「新宿のジャズバーDUGは東京の文化的アイコン」

CREA WEB / 2024年12月7日 16時15分

 ジャズバー「DUG」創業者で、写真家の中平穂積さんが、12月1日、ご病気のため東京都内の自宅で亡くなり、葬儀が近親者で営まれました。

 中平さんは、1960年、日本大学芸術学部写真学科卒業。日本におけるジャズカメラマンの第一人者として活躍しながら、61年、新宿にてジャズ喫茶「DIG」、67年にジャズバー「DUG」を開店。同店は作家デビュー前の村上春樹さんらが通ったことで知られています。

 CREAでは、2017年「本と音楽とコーヒー」特集をはじめ、ご取材にご協力いただきました。編集部一同、心より、中平さんのご冥福をお祈り申し上げます。

 当時のインタビューがきっかけで、中平さんと交友を深めたカフェ愛好家のヴォーン・アリソンさんより、メッセージをいただきました。

After living in Japan for 20 years and exploring all the coffeehouses, Nakadaira san, legendary soul behind DUG, will always hold a special place in many many hearts. This place is not just a coffee shop and bar; it’s nothing short of a cultural icon of Tokyo. Nakadaira-san’s photography will live on forever - and let’s all hope DUG is always still here, mercifully unchanged, magnificent as ever.

Rest in Peace, Nakadaira-san.

And people! While alive in Tokyo, have a drink at DUG.

――Vaughan Allison

 20年間日本に住み、あらゆる喫茶店を来訪してきた私にとって、そして多くの人にとって、DUGの伝説的な魂、中平さんの存在は心の中に特別な場所を占めています。ここは単なる喫茶店やバーではなく、東京の文化的アイコンにほかなりません。中平さんの写真は永遠に生き続けることでしょう。そして、DUGがいつまでも変わることなく、素晴らしい存在であり続けることを皆で祈りましょう。

中平さん、安らかに眠ってください。

そして皆さん! 東京で生きているうちに、ぜひDUGで一杯楽しんで。

――ヴォーン・アリソン

故人を偲び、当時の記事を以下に公開させていただきます(記事の情報は当時のものです)。


 メルボルン出身で、日本のコーヒー文化を愛する話題のコーヒーブロガー・ヴォーンさん。「音楽が最高!」と足繋く通う、最愛カフェの2人のオーナーに会いに行きました。

ジャズ喫茶という
日本の文化を知りたくて

◆Jazz Cafe & Bar DUG(ダグ)


「DUG」オーナー中平さんと、在豪のジャズミュージシャンをプロモートするヴォーンさんは共通の話題も多い。「中平さんが山の最高峰だとすると、僕は道玄坂くらいですけど(笑)」。

 新宿の喧騒を払い除けるように地下へ潜ると現れる、ほの暗い琥珀色の空間。ここに時々通っては、ひとりレコードから流れるジャズに耳傾け、しっぽりコーヒータイムに耽るヴォーンさん。

 欧米でジャズといえば夜、お酒を飲みながらライブを観る、クラブやバーが主流。静かにジャズとコーヒーを楽しむ風景は、日本ならではの文化だという。


昼はカフェ、夜はバーとして。

「店ができた1960年代は、都内に20軒くらいあったと思います」と教えてくれたのは「DUG」オーナーの中平穂積さん。まさにジャズ喫茶が日本を席巻した頃だ。

「当時はまだレコードが高価で給料の半分くらいの値段でしたし、木造の家では大きな音で聴けない。そこでみんな、ジャズ喫茶に集まったわけです」と話す隣で頰を紅潮させて聞くヴォーンさん。


深煎りのコーヒー 650円。

 そう、彼にとってジャズ喫茶を営み、写真家として多くのミュージシャンを撮影してきた中平さんは、神様のような存在。

「それは、いいカフェのすべてに言えること」

 緊張の面持ちで「ライブ中だけでなく普段の、例えば彼らがコーヒーを飲んでいるような写真もありますか?」と尋ねると「僕はプライベートの時間に撮るほうが好きでね」と、中平さんは頷く。

「ライブ中は暗くて撮影しにくいこともあるけれど、一番の理由は、撮っていると全然音楽が耳に入ってこなくて、楽しめないから。僕はね、自分のことを写真家だと思ったことはない。でもみんながいい写真と言ってくれるのは好きだから」


店内では、中平さんの作品のポストカードや写真集の購入も可能。

 カフェオーナーや写真家である前に、まずはひとりの熱狂的なジャズファンであること。そのスタンスがヴォーンさんを熱狂させた。

「好きであることはとても大事。それは、いいカフェのすべてに言えること」


内装は建築家・岩淵活輝氏によるもの。

<今日の1枚>


今日の1枚。

『ライヴ・アット・ダグ』は伝説のジャズピアニスト、バリー・ハリスが1995年に来日した際、ベースの稲葉国光、ドラムの渡辺文男とのトリオで行なった「DUG」でのライブを収録したもの。

Jazz Cafe & Bar DUG(ダグ)
所在地 東京都新宿区新宿3-15-12
電話番号 03-3354-7776
営業時間 12:00~18:30(コーヒータイム)/18:30~23:30(バータイム) ※金土・祝前日は~翌2:00
定休日 無休
席数 40席
http://www.dug.co.jp/

Text=Mitsuharu Yamamura
Photographs=Wataru Sato

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