歩く速度だから見える京都。カフェ「ha ra」、本屋「Cava books」、鴨川デルタを巡り、出町を楽しむ京都旅
CREA WEB / 2024年12月19日 11時0分
三方を山に囲まれる京都は、実は日本でも屈指のアウトドアシティ。北西には愛宕山、北東には比叡山、さらに足を延ばせば、雲取山や峰床山、と気軽に行ける低山から豊かな自然に満ちた山まで。町と山の距離が近く、山から下りてきたら、あら銀閣寺。なんて出会いがあるのが古都・京都の魅力です。
比叡山で紅葉を堪能した後は、下山して、京都の町歩きを楽しみます。比叡山の麓・八瀬と出町を繋ぐ鯖街道を通り、京都の市街地へ。都へ向かういにしえの道でありながら、今もなお人が行き交い賑わう出町を町歩き。
》京都は歩くと、もっと楽しい。比叡山山歩き篇を読む
下山後は自然を感じる穏やかなカフェ「ha ra」へ
下山の後は、やさしいスイーツとコーヒーで小休止。カフェの町・京都でもひと際穏やかな空気が流れる場所がカフェ「ha ra」です。
鴨川デルタからすぐ、河原町通り沿いの「ha ra」は京都で20年間愛されてきたカフェ「efish(エフィッシュ)」で最後の店長を務めていた原こころさんがオープンしたお店。木を基調とした店内は、ヴィンテージ家具やうつわなどが調和し、やわらかな光と雰囲気に包まれています。
町と自然が繋がる京都らしく、この「ha ra」も店の奥の窓からは庭の緑がのぞき、鴨川の気配が感じられます。
「『efish』で働いていた時から、自然を感じられる場所でお店を開きたいと決めていました。ここは京都御所や下鴨神社も近いし、鴨川もすぐそこ。天気がいいと、比叡山も見えるし、大文字山だったら30分ぐらいで行けちゃうんです。私もついこの間、夕方に大文字山に行って散歩をしてきました」(原さん)
井上さんは下山後ということもあり、チャイとキャロットケーキをセレクト。スイーツは「efish」で原さんとともに働き、現在は京都を拠点に菓子作りを続ける「HORNO(オルノ)」のものを提供しています。
無農薬の人参を使ったキャロットケーキはまさに滋味あふれるおいしさです。
「素材のおいしさが感じられる味わいで、しっかりと食べ応えもあるけど、ペロリと食べちゃいました。スパイスの効いた温かいチャイとの相性も抜群で、ホッとしますね」(井上さん)
オープンの10時から絶え間なくにぎわう「ha ra」は出町柳を訪れた人をやさしく包み込む安息所。ハイク帰りに一息つきに立ち寄るお客さんも多いといいます。
活気ある商店街を歩いて、ワクワクする本屋「Cava books」へ
「ha ra」でほっと一息ついたら、再び町歩き。少し北、鯖街道の起点の方へ戻って、出町商店街へ行ってみましょう。
出町商店街は京都でも有数の規模を誇る商店街。巷でいわれるシャッター商店街なんてなんのその。飲食店から雑貨屋、食料品店……。個性豊かな店がひしめく通りは多くの人で賑わっています。
歩いていると、ついついいろんなお店で買い物してしまう、魅力溢れる商店街です。
お目当ては映画上映施設・出町座、そしてその中にある本屋「CAVA BOOKS(サヴァ・ブックス)」です。
店名の「サヴァ」は鯖街道のサバとフランス語の「Ça va」(やあ、といったような挨拶の言葉)から取ったもので、ここで出会った本がきっかけや出発点になったらという思いから名付けられたのだそう。
「他の書店ではやってなさそうな品揃えにするよう、心がけています。大学が近くにあるという土地柄もあって、文字量の多い、読み応えのある本が人気ですね」とは、店主の宮迫憲彦さん。
約2000冊の本は、すべて宮迫さんがセレクトし、陳列しているのだそう。
対談集の本などが好きだという井上さんもじっくりと本を手に取り、気になる本を探していました。「なんだか、誰かの家の本棚を覗いているみたい」と井上さん。それもそのはず「サヴァ・ブックス」では、面陳(表紙を見せる陳列方法)の形はとらず、すべて背表紙を見せる形で本が陳列されているのです。
「家で本を並べる時には、みんなこういう風に本を並べるじゃないですか。これが自然な本の佇まいなのかなと思いますし、タイトルだけで手に取ってほしい、という思いも込めてこういう陳列にしています」(宮迫さん)
悩んだ結果、井上さんはいしいしんじさんの絵本『まあたらしい一日』を購入。「一日の始まりから終わりまで、いつどこでこの本を開いても、まあたらしい物語を届けてくれる本です」と大満足。
「本って、どこで買っても同じものではあるけど、こうして旅先で購入すると、その旅の思い出と一緒に持ち帰ることができるんですね。家に帰って読み返す時に、思い出がよみがえるのも素敵です」(井上さん)
京都市民の憩いの場所「鴨川デルタ」で旅をのんびり振り返る
「せっかく出町柳を訪れたなら、鴨川に行ってみたらいいですよ」との宮迫さんのすすめもあり、旅の締めくくりは鴨川デルタへ。
美しく夕陽に染まる鴨川デルタには、ラクロスの練習をする人、川の中でガサガサをする人、買い物帰りの人、のんびりと休む人、とさまざまな人が行き交っていました。
鴨川デルタといえば、やっぱり飛び石。亀の形をした飛び石や千鳥の形をしたものなどもあり、駆け抜けるだけでワクワクします。買い物帰りのおばあちゃんも川を渡るためにぴょんぴょんと跳ねていきます。
京都の山を歩き、町を歩き、行き交う人とすれ違う。京都が持つ、さまざまな表情を歩く速度でゆっくりと眺めることで、普段とまた違う京都の魅力が見えてきます。「京都の町と山、そして人々の暮らしと自然。京都の両面を覗けたような一日でした。次はギターを持ってお邪魔しに行きます」(井上さん)。
歩くと、もっと楽しい京都。今度の旅の参考にしてみて。
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井上園子(いのうえ・そのこ)
1998年10月17日、神奈川県出身。2022年よりアルバイト先のオーナーの一声をきっかけに音楽活動を開始、両親の影響で聴き馴染んでいた60〜70年代のフォーク、ロック、ブルース、カントリー、ブルーグラスといったスタイルの音楽をベースに、日常の一コマを独特な視点で“言葉”に置き換えた唯一無二の世界観を三畳一間から産み出すシンガー・ソングライター。茅ヶ崎FMにて「井上園子のごあいさつ」(毎週金曜日 20:00-20:30)のパーソナリティーも務める。9月にファーストアルバム『ほころび』がリリースされた。
Instagram https://www.instagram.com/inouesonoko_infotoka/
https://www.mammut.jp/
文=CREA編集部
写真=佐藤亘
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