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【台湾・花蓮】アートと絶景を満喫! 花蓮跳浪芸術祭の展示スポットを巡る旅へ

CREA WEB / 2024年12月28日 11時0分


リニューアルを経て、モダンなデザインとなった花蓮駅。

 台湾東部最大の都市である花蓮は、山と海に囲まれ、大自然に抱かれた土地として知られています。台湾を代表する観光地である太魯閣峡谷もあり、以前は国内外から大勢の観光客が訪れていました。

 しかし、2024年4月3日にマグニチュード7.2規模の大地震が発生したことにより状況は一変。市内のビルが倒壊した場面は海外でも大きく報道され、花蓮全域が壊滅的な被害を受けたという印象が広がりました。実際のところ、被害はあったものの、それは局地的なものだったため、現在、市内やその周辺地域は落ち着きを取り戻しています。

 残念ながら、太魯閣峡谷のハイキングコースは長期閉鎖となっていますが、見どころはほかにもたくさんあります。2025年1月5日までは第3回を迎える「PALAFANG 花蓮跳浪藝術節ー星球爆裂觀測站」が開催されており、アートと自然に触れながらの旅を楽しむことができます。

 今回は、芸術祭の拠点をいくつか紹介しながら、花蓮の「今」をお伝えしたいと思います。


「花蓮縣石雕博物館」入り口にある、Iyo Kacawさんの作品「生命的穿透力」。

まずは花蓮市内にある海辺のアートスポットへ

「PALAFANG 花蓮跳浪藝術節ー星球爆裂觀測站」のメイン会場になっているのは、海辺に近い「花蓮縣石雕博物館」と「花蓮美術館」の2ヵ所です。

 花蓮縣石雕博物館は台湾初の石彫刻をテーマにした博物館であり、同じ敷地内には2年にわたるリニューアル工事を経て、2024年2月に再オープンした花蓮美術館もあります。

 今回の芸術祭のテーマはずばり「地震」。頻繁に余震が起こる中、人々がどのように郷土と向き合い、暮らしていたのかを主題とし、メイン会場では11組のアーティストが土地との共生をテーマにした作品を手がけています。そのほか、8つのサテライト展示場があります。


盧俊翰さんの作品「地鳴後滄桑」。地震後の花蓮の山の様子を色彩豊かに描いています。

 キュレーターは、アミ族のNakaw Putunさんをはじめとした4人。その中には地震研究の専門家である馬國鳳さんも含まれています。「MiDAS米崙地震研究ワークステーション」と協力し合い、詳細な地震データを用いて、科学とアートの融合を試みています。


花蓮市内にある地震観測所。「データを知ることで、過度に怖がることはなくなる」とNakaw Putunさん。

 花蓮縣石雕博物館の入り口には、アミ族のアーティスト、Iyo Kacawさんによる大型インスタレーション作品「生命的穿透力」が展示されています。太い蔓が地面から伸びていく様子を表現した作品には、「地震や台風が発生しても、この土地に根を張って生きていく」という強い意志が込められています。

 館内に入ると目に飛び込んでくるのは、牛の化石をモチーフにした考生物学の発掘現場のような作品。これは涂維政さんによる「地震博物館」という作品で、「地震が発生するのは大地の下で眠る牛が身を翻すから」という伝説に基づいて作り上げられています。


本物の化石のように見えるのがおもしろい「地震博物館」。

 そのほか、ブヌン族の若手芸術家であるAli Istandaさんによる、大ウナギ伝説をモチーフにした版画作品「山,與山」や、盧俊翰さんによる地震後の山の様子をパッチワーク風に描いた「地鳴後滄桑」などの作品もあります。


版画には、人々が村を再建する様子などが描かれています。

 一方、花蓮美術館には地震後の花蓮の様子をリアルに伝える作品が展示されています。一つは元報道カメラマンの鍾順龍さんと郷土史研究家の莊慕華さんによる写真で、もう一つは公共テレビ「公視」のドキュメンタリー番組「我們的島」です。こちらも見応えがある作品です。


鍾順龍さんと莊慕華さんによる地震後の集落の様子を伝える写真。

風光明媚な七星潭でユニークな魚グッズをお買い物

 美術館でアートを満喫したら、海岸線が美しい「七星潭」を訪れてみましょう。白い砂浜とコバルトブルーの海がどこまでも広がり、身を置くだけで癒やされるはずです。


花蓮らしい青い海が広がっている「七星潭」。

 七星潭ビジターセンターには、魚の食育と持続可能な漁業を推進する「洄遊吧FISH BAR」が併設されています。ここは花蓮出身の若者、黃紋綺さんが仲間と開いた店で、海洋教育に関する体験講座などが催されています。

 ここはサテライト展示場の一つで、2階では東海岸に棲息する鯨の写真が眺められます。こちらは写真家の陳玟樺さんによる作品です。


鯨の生態がわかるダイナミックな写真が展示されています。

 ユニークなのは、1階のギフトショップで魚をモチーフにしたグッズが販売されているところ。かわいらしいピンバッジや布小物などのほか、鰹節味のポップコーンやふりかけ、さらにはジンまであります。ほのかに塩味が感じられるジンですが、意外と飲みやすく、なんと2024年の「World Gin Award」コンテンポラリー・スタイル・ジン部門で金賞を受賞したという逸品です。スピリッツ好きの方は試してみてはいかがでしょうか。


世界的にも認められた珍しい鰹節味のジン「醲琴酒-鰹魚」。

お土産になりそうな、いろいろな魚グッズがあります。

 なお、花蓮は鰹節産業で栄えた歴史を持っています。近くには、これをテーマにした「七星柴魚博物館」もあります。

のどかな田園風景が広がる花東縱谷、鳳林集落へ

 花蓮県の中部、鳳林にも芸術祭のサテライト展示場があります。鳳林は花蓮駅から在来線の各駅停車で40分の距離にある、のどかな田園風景が広がる集落です。


中央山脈と海岸山脈に囲まれた鳳林の街。

 日本統治時代には官営移民村として整備され、日本からの移民も大勢暮らしていました。集落の外れには、神社遺跡が郷土史跡として保存されています。

 現在は客家系住民が多く暮らしており、駅周辺には客家料理の食堂もあります。展示場となっているのは、駅から少し離れたピーナッツ食品店の「美好花生」。ここのオーナーは1ページ目でご紹介したカメラマンの鍾順龍さんで、数年前に家族と一緒に故郷へ戻り、現在はピーナッツ農家を営んでいます。


故郷に熱い思いを抱く鍾順龍さん。

 店では、ピーナッツ菓子やピーナッツバター、ピーナッツ味のソフトクリームなどを販売しています。ギャラリーも併設されており、ここには家族のスナップや畑の様子など、身の回りの風景を撮影した写真が展示されています。

 畑の中にポツンとある一軒ですが、地震前は大勢の行楽客が遊覧バスに乗って訪れていたとのこと。現在、その数は激減しているとのことですが、「ピーナッツのように大地に根を下ろして生きていく」という鍾さんの思いは変わらないそうです。


台湾の人たちにも人気の「美好花生」のピーナッツ。

「美好花生」の商品は台北市内のセレクトショップなどでも購入できますので、ぜひチェックしてみてください。パッケージも素敵なので、お土産にも喜ばれるはずです。


かわいらしいパッケージに入ったピーナッツ菓子。

アミ族の文化に触れられる海岸線にある港口集落へ

 花蓮から台東に向かう海岸沿いでは、青く輝く海を眺めながら旅が楽しめます。また、この一帯はアミ族を中心に原住民族の人々が数多く暮らしており、彼らの奥深い文化に触れられます。


山と海を眺めながら、花蓮の沿岸部を進みます。美しい車窓が続きます。

 海蝕地形で知られる「石梯坪」の近くにある「Makotaay(マコタアイ)生態藝術村」も、今回の芸術祭のサテライト展示場の一つです。ここはアミ族の人たちが30年のやり取りを経て国から取り戻した土地であり、2020年からアーティストによるワークショップや音楽祭などが開かれています(イベントは主に夏場に催されます)。


Makotaay生態藝術村は、アーティストが滞在し、活動する場となっています。

 ここには、結婚を機に花蓮へ移住してきたイラストレーターの黃海蒂さんの作品「嶋」などが展示されています。こちらは、遺棄された木材とヒビの入ったガラスでさまざまな形の島を作ったもの。島々が地震を経て新たな旅路に就く様子が描かれています。


絵本のような世界に魅せられる作品です。

 また、朱威龍さんの科学とアートを融合した作品「石海共鳴」もあります。こちらは湿地の中にあり、木に吊るされた石が沼の中で上下に動く仕掛けが設けられています。


ぽちゃぽちゃと池の中に石が入っていく様子に、ほのぼのとします。

 Makotaay生態藝術村がある石梯坪へ行くための花蓮からのバスの本数は限られており、便利ではありません。ただその分、手つかずの自然が残っている土地なので、機会があればぜひ訪れてみてください。


事前に予約をすれば、アミ族の人たちによる地元料理も味わえます。

 日本と花蓮は、地震や台風といった天災が多いという共通項があります。彼らの作品を目にすると、きっと心が揺さぶられるはずです。力強く前を向いて生きる人々からパワーをもらえることでしょう。花蓮を訪れる機会がありましたら、これらのスポットを訪ねながら自然とアートに触れてみてはいかがでしょうか。


海と山に囲まれた花蓮。絶景が広がります。

PALAFANG 花蓮跳浪藝術節ー星球爆裂觀測站

今回で3回目を迎える芸術祭のタイトルにある「PALAFANG」とは、花蓮に暮らすアミ族の言葉で「お客様を迎える」「訪問する」という意味。メイン会場は花蓮縣石雕博物館と花蓮美術館の2ヵ所で、そのほか海岸線や花東縱谷に8つのサテライト展示場が設けられています。開催期間は2025年1月5日(日)まで。

●花蓮縣石雕博物館

所在地 花蓮縣花蓮市文復路6號
電話番号 03-822-7121
開館時間 9:00~17:00
休館日 月曜
入館料 大人20元
アクセス 台鐵花蓮駅からバスで約30分、車で約15分

●花蓮美術館

所在地 花蓮縣花蓮市文復路4號
電話番号 03-822-7121
開館時間 9:00~17:00
休館日 月曜、祝日
入館料 無料
アクセス 台鐵花蓮駅からバスで約30分、車で約15分

●洄遊吧FISH BAR

所在地 花蓮縣新城郷七星街32號
電話番号 0910-443-888
営業時間 10:00~17:00(夏季は~18:00ごろ)
定休日 火、水曜
アクセス 台鐵花蓮駅から台湾好行310太魯閣線に約30分乗車し、七星潭バス停で下車。下車後、徒歩約10分。または、花蓮駅から車で約11分。

●美好花生

所在地 花蓮縣鳳林鎮中和路46-1號
電話番号 0933-528-448
営業時間 10:00~17:30
定休日 水曜
アクセス 鳳林駅から徒歩約23分、車で約4分

●Makotaay生態藝術村

所在地 花蓮縣豐濱鄉港口村石梯灣123-2號
営業時間 10:00~17:00
定休日 不定休。春秋冬は予約制。ただし、2025年1月5日(日)まで屋外展示は毎日開放。
アクセス Makotaay生態藝術村と石梯坪へは、花蓮駅から花蓮客運1140(1日8本)、1145(1日5本)に乗車。所要約2時間半。
※イベント情報などはFacebookをご参照ください。
https://www.facebook.com/MakotaayAV


片倉真理(かたくら まり)

台湾在住ライター。1999年から台湾に暮らし、台湾に関するガイドブックや書籍の執筆、製作に携わる。そのほか、機内誌への寄稿や女性誌のコーディネートなども手がけている。

文・撮影=片倉真理

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