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「立ち姿さえ簡単には真似できない」歌舞伎『あらしのよるに』モチーフ「食べちゃいたいそう」で体操の誠お兄さんが抱いた“夢”

CREA WEB / 2024年12月24日 11時0分

 12月28日11時から「疑似生配信」されることが決定した歌舞伎『あらしのよるに』。当日生出演される第12代・体操のお兄さんである福尾誠さん。前編でもお話いただきましたが、特典映像「食べちゃいたいそう」出演をきっかけに、初めて歌舞伎に触れたそうです。体操というスポーツを極めてきた福尾さんが初めて開いた歌舞伎、日本舞踊への扉。誠お兄さんならではの視点から、歌舞伎の魅力についても伺いました!


福尾誠さん ©松竹

——『あらしのよるに』を実際に観劇して、迫力に圧倒されたと仰っていましたね。

福尾誠さん(以下、福尾) 観劇前はやっぱり初めてなので不安もあって。原作は知っていたので、歌舞伎になるとどういう表現になるだろう、といったことは何度も考えていました。実際、そんなことを考えるひまがないぐらい、夢中でしたね。

ストーリーの中では動物しか出てきません。でも、舞台では全員人間が演じているわけです。歌舞伎の表現力の凄さを改めて感じました。


福尾誠さん ©松竹

——女方さんはどうでしたか?

福尾 舞台上で拝見するのは初めてで、でも今回は性別より、動物しか出てこない物語なことに圧倒されてしまって。おそらく歌舞伎には、姿勢とか手の形といった、動物の演じ方や見せ方の「型」がありますよね。子どもたちが初めて見ても、狼と山羊の物語だなって、原作を知らなくても伝わると思います。

——藤間勘十郎さんの指導はどうでしたか?

福尾 歌舞伎「あらしのよるに」の演出・振り付けの先生ですから、とんでもないほどの貴重な経験だ!と思いながらも怖かったらどうしよう……と思っていたんですけど(笑)、とてもお優しくて、むしろ優しすぎると思うくらい、丁寧に教えてくださいました。見得や動きを目の前で見せてくださって、迫力がすごくて!音ひとつとっても、やっぱり自分がやるのとは全然違いました。

「僕、もうちょっとトレーニングし直さないといけない」

——歌舞伎の場面で、踏み出した足が大きく音がすることがありますよね。

福尾 先生みたいに大きい音を出そうとするだけなら、力任せにやれば出ると思います。でも、先生はそういう音じゃない。体重の乗り方なのか、多分使う筋肉も違うのかもしれません。「なんでそんな音が出るんだろう!?」とずっと思っていました。

——アスリートの方はやはり、筋肉や運動の仕組みについて着目されるんですね。

福尾 今回の「食べちゃいたいそう」は分かりやすく、真似しやすい動きにはなっています。運動という視点から見ると片足でバランスを取るとか、ジャンプをするとか、そういったひとつひとつの動きにその運動としての意味も持っているなと感じました。激しい動きこそないですが、実際に踊っている僕は、皆さんが思う運動量よりかなり多いと思います。


がぶを意識した衣裳をまとった誠お兄さん ©松竹

——収録を見学していて、体幹が必要なたいそうだなと思いました……。

福尾 ぴったり止まる動きって、足腰の筋力がすごく必要だなと感じました。失礼な表現でしたら申し訳ないのですが、踊りにスポーツの要素が存分に含まれているんだなと。歌舞伎俳優の皆さん、本当に足腰が力強くて。アスリートよりも筋肉あるんじゃないかなあ、僕、もうちょっとトレーニングし直さないといけない、到底追いつけないレベルかもって思うほどでした!

——体操のお兄さんであり、アスリートでもある誠お兄さんでもそう思われるんですか!?

福尾 僕は、今回がぶを意識したかっこいい衣裳を着せていただいたんですけど、実は結構重いんです。いつもは半袖のラフな格好なので、びっくりしてしまって!歌舞伎俳優の皆さんはこれを着て、もっと重たい衣裳を身につけた上であれだけかっこよく、綺麗に立っているわけで、やっぱりすごい。実は真似したくて、鏡の前でずっと立ってみているんですけどね。

「もっと早く歌舞伎に触れたかった!」

——すごい努力ですね!

福尾 どうしても、立ち姿がまるで違うんです。きちんと知識があって努力をされてきたからこそですよね。立っている姿でさえ簡単には真似できない。衝撃でした。僕自身は体操をかれこれ数十年やってるので、きれいに立つことはできるはずです。でも、それと歌舞伎はまた違った立ち方で、歩き方も独特。

 あの美しさを習得するためには、毎日きちんと継続をする努力が何よりも必要であるなと感じました。


「食べちゃいたいそう」を踊る福尾誠さん ©松竹

——自分の身体をコントロールする、体操という競技のアスリートならではの視点かもしれませんね。

福尾 本当に今まで体操しかやってきておらず(笑)、今回、大人になって初めて歌舞伎に触れました。もっと早く経験してみたかったとすごく感じたんですね。もっと早く教えてほしかった!おそらく、皆さんも歌舞伎にハードルが高いというイメージはあるんじゃないかな?と思います。だから、配信という形で、映像の中で歌舞伎を知ることができる今回の機会が、初めて触れる「歌舞伎デビュー」の機会になってほしいですね。

 きっと子どもたちだけでなく、お父さんお母さんも初体験の人も多いと思うんですよ。今回はやさしいガイドもついているので、分かりやすいですし、ストーリーがわかっているというアドバンテージもあります。僕としては、迫力や雰囲気を実際に体感していただきたいので、ぜひ劇場で観劇してみてほしい!とも感じたのですが、まずは映像で世界観に触れる、400年続く伝統芸能を体験をしてもらえたら嬉しいです。

——本当に真摯に取り組まれたということが伝わってきました。

福尾 体を動かす表現をしてきた僕が、今回このコラボで伝統芸能の表現を経験させていただいて、日本人としても誇りです。情報が解禁されたら自慢したいなと思います。世界中の人々に自慢したいくらい!

 初めにお話を伺った時は、僕でいいのかなという思いはよぎりました。でも、やるからには短い期間ではありましたがかなり練習もさせていただきましたし、とにかくできる努力は重ねたつもりです。歌舞伎で表現する機会をいただいたことで、今まで自分がスポーツを通じて学んできた努力の大切さを改めて感じられましたね。

——日々の鍛錬が必要なのは、アスリートも歌舞伎俳優も同じですね。

福尾 舞台に本当に感動して、出演してみたいとすら思いました!でもあの舞台は本当に毎日毎日、とんでもない努力をし続けた人だけが立つことのできる場所だとも感じて。日々の努力の有無が、如実に出てしまうのが歌舞伎の舞台なのではないでしょうか。僕はまだ不勉強なのですが、これだけかっこいい表現ができるってことは、想像を超えるほどの努力をされている方たちの集まりなんだろうなと。「伝統芸能」の一言で表しきれない何かがあると思いました。もはや、ヒーローオブヒーローですよね。かっこよかったです。

――収録含め長丁場の取材となりましたが、疲れた顔を見せずにこやかに、時に顔を和ませながらインタビューを答えてくれた。お茶の間で子供たちを楽しませてくれたその姿は、今回の特典映像でも、存分に見せてくれるはず。子供たちにきっと、歌舞伎への楽しさを伝えてくれるでしょう。

歌舞伎『あらしのよるに』疑似生配信 詳細


ナビゲート:福尾誠(誠お兄さん)、佳山 泉(イヤホンガイド解説者)
■配信日時:12 月 28 日(土)午前 11 時より配信スタート
■アーカイブ配信:12月29日(日)10時~2025年1月13日(月)午後11時59分まで
■配信場所:歌舞伎オンデマンド (https://s.shochiku.co.jp/27y9)
■配信内容:やさしい解説音声付き本編開演前、幕間、終演後は誠お兄さんとイヤホンガイド解説者による生トークも!
■特典映像:「食べちゃいたいそう」
■チケット:5,000 円(税込) +システム利用料 220 円 12 月 21日(土) 14 時 00 分より発売開始(https://s.shochiku.co.jp/JhJG)
※チケットは 2025 年 1 月 13 日(月・祝) 20 時 00 分まで発売
※一度チケットを購入いただくと、12月29日(日)10時~2025 年 1 月 13 日(月・祝) 23 時 59 分までアーカイブ視聴可能
〈収録公演〉歌舞伎座 十二月大歌舞伎「あらしのよるに」 出演:中村獅童(がぶ)、尾上菊之助(めい)、尾上松緑(ぎろ)ほか

文=宇野なおみ

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