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アイスランドが舞台のミステリーや「龍捕り」のファンタジー…年末年始はマンガの世界に浸りたい! hontoコミック担当・荻野晶さんおすすめ5選

CREA WEB / 2024年12月28日 18時0分

 待ちに待った年末年始。ゆっくり自分だけの時間を過ごせるという人も多いのでは。

 今回は、そんなお休みの間だからこそ読みたい珠玉のマンガ作品5選を、「CREA夜ふかしマンガ大賞」の選考委員も務めるhontoコミック担当の荻野晶さんにセレクトしていただきました!

 壮大なミステリーからファンタジー、青春スポーツマンガまで。気になる作品があれば、hontoで購入も可能です。hontoでは、「年末年始ビッグ感謝祭」も現在実施中。お得に楽しんで。


#1『北北西に曇と往け』入江亜季/KADOKAWA


『北北西に曇と往け』入江亜季/KADOKAWA

 北緯64度に位置する美しく過酷な島、アイスランドを舞台に繰り広げられる探偵活劇。両親の死後、アイスランドの祖父の家に身を寄せ、探偵業を営む17歳の御山慧はクルマや電化製品と会話できる能力を持つ。ある日、日本にいる弟・三知嵩が叔父夫婦殺しの容疑をかけられ……。

荻野さん推薦コメント

「今年の年末年始は長いお休みを利用して、旅行に行かれる方も多いのではないでしょうか。でも、忙しい、腰が重い、何もしないでだらだらしたい……そんな方にも旅行気分が味わえるマンガがあります! 圧倒的画力で描かれるアイスランドの雄大な大地、なんとも美味しそうな料理(主にお肉!)、美しく魅力的なキャラクターたち。旅行も食べるのも大好きな私にとって、何もかもが魅力的な作品です。

そしてなんと言っても緻密な作画! うっとり眺めてしまいます……。いつでも読めるように電子で持っているけれど、紙本の装丁も素敵で購入。巻数を追う毎に謎めくストーリーにも引き込まれ、次の巻が出るのを心待ちにしている一作です。

先日「漫画家・森薫と入江亜季 展 ―ペン先が描く緻密なる世界―」(世田谷文学館にて2025年2月24日まで開催中)に行ったのをきっかけに読み直していますが(果たして何周目だろうか……)、入江先生の描く世界は美しい。読切漫画を集めた作品集「旅」もおすすめです」

#2『空挺ドラゴンズ』桑原太矩/講談社


『空挺ドラゴンズ』桑原太矩/講談社

 空飛ぶ捕龍船「クィン・ザザ号」に乗り、宙を舞う龍を狩る狩人「龍捕り」たちの旅を描くファンタジー。龍の肉を素材とした料理がレシピ付きで紹介されるなど、異世界グルメものとしても楽しめるマンガ。

荻野さん推薦コメント

「同じ旅でも、実際に行くことはできない空想の旅に連れて行ってくれるのもマンガの醍醐味のひとつです。本作は空と龍に魅せられた乗組員たちの大冒険&世界グルメ紀行! とにかく作画が素晴らしく、美しく描き込まれた絵には感動の一言。漫画を読んでいながら芸術作品を観ているような充足感があります。ジブリ好きの方には特に刺さるかもしれません。

私自身絵に惹かれ読み始めましたが、美味しそうな料理、徐々に掘り下げられるキャラクターたち、ファンタジーの中にあるリアル……読めば読むほど味わい深く、何度も読み返しています。スピード感のある展開や、あっと驚くような仕掛けが求められる昨今ですが、この世界観に浸りながら、ゆっくりと、じっくりと、楽しむ時間は何にも代えがたい、と思わせてくれる良質な作品です」

#3『セシルの女王』こざき亜衣/小学館


『セシルの女王』こざき亜衣/小学館

 16世紀のイングランド、欲望と陰謀が渦巻く王宮が舞台。のちにエリザベス1世の重臣となるウィリアム・セシルの少年期からの活躍とエリザベス1世との絆を描いた本格歴史ロマン。

荻野さん推薦コメント

「時間が取れる年末年始だからこそ、物語の世界観に浸りながら読み耽りたい……。本作はそんな欲望を叶えてくれるマンガです。服装や調度品などが丁寧に描かれ、かなり史実に基づいた内容で展開されるため、16世紀のイングランドを堪能できます。

現代の日本人の感覚ではわかりにくい、王族、貴族の感覚、そして複雑な時代背景が描かれているのになんともわかりやすく、物語としての完成度が高いので、歴史ものが初めての方にも、もちろん歴史ものが好きな方にも、おすすめです。

彼らが何を思ってこうなっていったのか? 読み進めていくと、登場人物全員が運命に翻弄され、苦しみ、ただ必死に生きるひとりの人間であったことを感じて涙します。現代の私たちでもきちんと共感でき、思想や感情が根付いたキャラクターたち。没入するにはぴったりの一作です」

#4『最強の詩』宮田大介/集英社


『最強の詩』宮田大介/集英社

 熱量たっぷりの青春スポーツマンガ。限界集落で育った山田金山は、高校の部活動でラグビーと出会う。ルールも知らないフィジカルモンスター金山が、型破りなラグビーで世界レベルの天才たちを凌駕し、高校ラグビー界を大きく揺るがすことに……。

荻野さん推薦コメント

寒い冬だからこそ熱いスポーツマンガが読みたい!! 読み始めた瞬間に、これこれこれ! 待ってました!と、ページを捲る手が止まらない熱量。フィジカルモンスター(というか化け物)金山の圧倒的主人公感。ラグビーのルールを全く知らずに読み始めましたが、なんだこれ、めちゃくちゃ面白い! こんなに熱いのに、物語の緩急もばっちりで、息切れしないで読めるのがすごい。

真っ直ぐ王道でありながら今の時代の風を感じる、声を大にして大好きと言いたい作品です。この記事が公開される頃は、全国高校ラグビー大会真っ最中ということで、私も初観戦してみたいと思います」

#5『寿々木君のていねいな生活』ふじもとゆうき/白泉社


『寿々木君のていねいな生活』ふじもとゆうき/白泉社

 15歳の高校生、寿々木薫は強面だけどお菓子づくりと植物の世話が好きな心優しい少年。自分に自信が持てなかった寿々木が、小柄で腕っぷしが強い美少年の春名新との出会いをきっかけに変わっていく。ギャップあるふたりの友情と、コミカルな学園生活を描いた青春グラフィティ。

荻野さん推薦コメント

「朝からハーブティーを淹れ、妹の人形のお洋服をつくり、嬉しいことがあるとお菓子を作ってしまう寿々木くんは、穏やかで優しいのに、強面の見た目とのギャップ故に自信がなく、周りの目を気にしがち。そんな寿々木くんが、腕っぷしの強い美少年・春名くんや、クラスの皆とともに過ごす中で、徐々に心を開き、笑顔が増えていくのがもう可愛いくて愛おしくて……!

お母さん感溢れる寿々木くんと、みんな良い子で素敵なギャップを持っている登場人物たち。じんわり心に沁みて、1年の締めくくりや、新たなスタートの際に、穏やかな気持ちになれる一作です。年末年始くらいは丁寧な生活を心がけたいと思っているのですが、寿々木くんのお母さんと同じ「豆を挽くより寝ていたい」というタイプなので、寿々木くんを見ているだけで満足してしまう予感です……」

荻野 晶(おぎの・あき)さん

hontoコミック担当。話題作からBLまでマンガ全般をこよなく愛し、月に100冊以上読む雑食派。マンガのキャラクターを讃えるアワード「マガデミー賞」の審査員も務める。
honto https://honto.jp/

文=大嶋律子(Giraffe)

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