「華やかな時期から落ちていっても、それは誰しもが通る道」望海風斗が明かす退団からの“不安だった”5年間
CREA WEB / 2025年1月18日 17時0分
インタビュー後編では『イザボー』から始まり、『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』、そして初のアルバムを出すなど、大忙しだった望海風斗さんの近況を振り返っていただきました。さらに最近のリフレッシュ方法やハマりものなど、望海風斗さんの“今”を大解剖! 普段なかなか伺えないプライベートのお話もたくさん話していただきました。
望海さんにとって、転換期となった2024年
――『マスタークラス』では、新しい“望海風斗”に出会えそうで嬉しいです。演じるのはマリア・カラスの晩年ということで、キャリアとしては下降してきた時代です。
宝塚時代に『20世紀号に乗って』という作品を演じましたが、その作品も落ちぶれたプロデューサーという役柄でした。その時に、すごく眠れなくなっちゃったんです(笑)。男役で10年以上やってきたタイミングだったので、今の自分は自分なのか、プロデューサーのオスカー・ジャフィなのか、わからなくなって。
――演じている期間は、役柄が抜けないタイプですか?
普段はそんなことないのですが、オスカー・ジャフィに関しては精神的にちょっと来ましたね。あれだけ人を笑わせていながら、自分の中では全然解決していない問題が山積みで……。「あれ、もしかして、これって自分の問題じゃないの?」みたいなことを途中から思い始めたら、もう居てもたっても居られない状態でした。
私も年齢を重ねてきて、よいときばかりじゃないことも段々分かってきています。でもすべてが完璧なわけじゃないのが人生なので、自分の人生をどういうふうに進んでいくか、みたいなことをマリア・カラスからも教えてもらっている感じです。
一番華やかな時期から少し落ちていったとしても、それは誰しもが通る道だと思うので。彼女の言葉のひとつひとつを読み進めていきながら、すごく勇気をもらいました。
――2024年に、何か新しく始められたことはありますか?
パーソナルトレーニングに行き始めました! ジムというよりは自分の体と向き合ってボディメイクしていくみたいな、とても素敵なトレーナーの方に出会えたので、行けるときは週一ペースで通っています。時間を見つけて、身体と向き合う時間がすごく楽しくなりました。
もともとは『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の再演のためにちゃんと体を作りたいと思ってスタートしたんです。それまでもピラティスに行ったりしていましたが、気持ちが途切れて、なかなか続けられなかったので、良いタイミングで先生にも出会えて本当に嬉しいです。
――望海さんにとって2024年はどんな一年だったのでしょう?
真っ赤な一年でしたね(笑)。色で表現すると本当に真っ赤。『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』を2年やって、ひとつの大きな区切りがきたので、今年が変わり目だった気がします。
オーディションから考えたら、すごく長い期間関わってきましたし、この作品という目標があったから退団後もずっと頑張り続けることができたと思います。それをやり終えたという達成感がすごく大きいですね。
あとは『イザボー』というオリジナル作品に挑戦できたのも大きかったです。みんなで“未知”のところに冒険しにいく感覚というか、カンパニー全員で立ち向かったという達成感を『イザボー』では得ることができました。宝塚を辞めてからは新しく作るオリジナルミュージカルに参加する機会がなかったので、それも楽しかったです。
――望海さんにとって大きな手応えのあった『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』ですが、今振り返られて、成長を感じた部分や課題を感じたところなどはありますか?
23年の公演が終わったときは結構課題を感じていたのですが、24年のスタートまでの間にアルバムでポップスを歌う機会もあったりしたので、悔しかったことがある程度解消された部分もありました。もちろん、歌に関してはまだ全然終わりではないですけれど。
あとは芝居に対しても、24年の公演では『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の世界観を俯瞰して見られるようになり、いい意味で“こだわり”が減りました。みんなでボールを回し合ってるんだという感覚があって、すごく吹っ切れた部分があったんです。
23年のときはショーアップされている部分と芝居とを「何とか繋げなきゃ」みたいな気持ちが強かったのですが、場面場面がちゃんと成立していたらいいんじゃないかと思い始めたらすごくラクになって。私の中では息がしやすくなりました。
――『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の打ち上げの様子も、いろんな出演者の方々のインスタグラムで拝見しました!
すごく楽しかったです。まず、あのお忙しい井上芳雄さんが来てくださったのが、もう一番嬉しくて(笑)。打ち上げ会場がルーフトップだったのですが、夜空の下で開放感あふれるバーベキューが出来て、海外のようでした……。みんなに再会できたのが嬉しかったですね。あと、アブサンを飲みました(笑)。
観劇と眠りに落ちる前の一杯が一番のリフレッシュ
――2025年は退団後、5年目を迎えられるとのことですが、どんな一年になりそうですか?
宝塚を退団する直前は、辞めてから自分が何のやりがいもなく過ごしていくんじゃないか、みたいな不安があったのですが、まさかこんなに楽しい4年間になるとは思ってもみなかったです。本当に素敵な出会いがたくさんあって、ありがたい日々でした。
私にとっては『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』が終わったことで、ひとつ先に進んだという感覚があります。2025年は私の大事な年になりそうだなと思っているんです。地に足をつけて、ひとつひとつの作品やお仕事と向き合えたらいいなと思います。
――お忙しい望海さんのリフレッシュ方法は何ですか?
今年は3回も韓国に行ってミュージカルを観ているんですが、すごく刺激をもらえますし、それがリフレッシュにもなってます。
いろいろな作品を観ることが、頑張る活力になるんですよね。素晴らしい作品や歌の上手い人に出会うと、とても刺激になりますし、「世の中にはこんな人がいるんだ、頑張らなきゃ!」という気持ちにさせてもらえるんです。
――舞台から離れたい……みたいなときはありませんか?
そう思うこともありますが、誰かが「この作品がよかった」と言っているのを聞くと、気になっちゃってしょうがない(笑)。スケジュールとにらめっこして、「ここなら行ける!」みたいな。
でも全然追えてない作品もたくさんあって、悔しいんですよね。「皆が観てて、すごいって言っている作品が、観られなかった! 悔しい!」って(笑)。根本的にオタクなんだと思います。人がいいと言っているものを私も体験してみたい、という気持ちは結構あります。
――プライベートでしたいこと、始めたいことはありますか?
旅行かな。本当に時間がないときは近くで行きたかったホテルなどに泊まったりします。一泊だけでも、家じゃないところで過ごすのは気晴らしになりますから。そこに温泉が付いていたりすれば、なお、いいですね!
本当は時間があったら、少し遠くの場所に行って、景色とか見ながらお酒飲みたい……という気持ちもあります。
――以前、Spotifyでお酒飲みながらの番組もされていましたね。どんなお酒を召し上がりますか?
そんなに強くないんですが、お酒は何でも好きです。ビールは飲めないんですけれど……。だいたいハイボールや焼酎、ウィスキーを飲んでいます。
一時期、マデイラワインにハマっちゃって。甘いワインなんですが、お稽古終わって、ちょっと頭がぐちゃぐちゃになっているときに、「帰ったらマデイラが待っている!」と楽しみに帰り、デザートワインのように飲んで、ボーっとしてから寝るというのをよくやっていました。
それまではお友達が誕生日にくれたウィスキーが定番。最近は、宮崎に住んでいる同期が贈ってくれた高級な赤霧島をたまに出して、ちびちび飲んでます。そういう話をすると何だかまわりの人に「すごくお酒が好きな人」という印象を与えているみたいなのですが、最近は体を休ませることを考えて、調味料とかにも気を配るようになったんです。なので、お酒も好きですが、体に優しくてよいものを常に探しています(笑)。
望海風斗(のぞみ・ふうと)
1983年10月19日生まれ、神奈川県横浜市出身。2003年に宝塚歌劇団入団、同年花組に配属。2017年から雪組トップスターに就任し、三拍子揃った実力の中でも、特に歌唱力に秀でた男役として活躍。『ファントム』『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』『fff-フォルティッシッシモ-』などの代表作で主演を演じる。2021年4月11日、宝塚歌劇団を退団。同年に行われたコンサートツアー『SPERO』では全国で5万人を動員するなど、その人気はとどまるところを知らない。退団後は破竹の勢いでミュージカル界を席巻する俳優のひとりとして活躍中。今年は初のアルバム『笑顔の場所』をリリースするなど、音楽活動にも意欲的だ。代表作には『next to normal』『ガイズ&ドールズ』『イザボー』『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』などがある。
衣装クレジット
ワンピース 72,000円、タイ付きブラウス 40,000円/Alunc(03-5785-6424) ピアス 429,000円、イヤカフ 242,000円、リング 473,000円 すべてK18WG×Dia/MESSIKA(MESSIKA JAPAN 03-5946-8299) 靴 133,100円/クリスチャン ルブタン(クリスチャン ルブタン ジャパン 03-6804-2855)
文=前田美保
写真=榎本麻美
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