神秘的な雰囲気がただよう奥大和で、世界文化遺産に登録された“山岳信仰”の聖地をたどる旅へ【ディープな奈良の魅力に浸る】
CREA WEB / 2025年2月5日 11時0分
徒歩や自転車などゆっくり歩みをすすめながら、日本の豊かな自然や地域の歴史、文化を楽しむ新たな旅のスタイル「ジャパンエコトラック」。
アプリではさまざまな旅のルートを提案、マップの整備から各地の協力店の情報、地域の魅力発信まで、快適な旅をサポートしてくれます。
400以上のルートを提案するジャパンエコトラックですが、この12月より、現存する日本最古の道「山の辺の道」や修験道の聖地を歩く「吉野・黒滝トレッキング」など、奈良県南部の奥大和エリアのルートを新たに追加。
奥大和のディープな魅力を味わうべく、さっそく2つのルートを探訪してきました。
美しい吉野杉が見られる“奈良のへそ”から吉野山へ
今回は、黒滝村を起点に吉野山を経て吉野駅まで歩く総距離約14kmのクラシックルートへ。奈良の奥深い自然に囲まれたこの地は、山岳信仰や修験道との関わりが深く、それらにまつわる史跡も多く残されています。
スタートは近鉄吉野線「下市口」駅からバスで約40分の場所にある「道の駅 吉野路黒滝」から。
黒滝村は奈良県の中央に位置することから“奈良のへそ”と呼ばれています。
そして面積の約97%を森林が占める林業の盛んな地域でもあり、日本三大人工美林の一つとしても知られる「吉野杉」の美しい木立を見ることができます。
山のなかに入ると、目の前には一糸乱れず並ぶ美しい吉野の杉林が! どれも同じような太さで、びしっと背筋を伸ばして立つ吉野杉。その美しさの秘密は、「密植(通常より3~4倍もの密度で木を植える)」、「多間伐(何度も間伐を繰り返す)」、「長伐期(長期間育ててから伐採する)」という独自の育成方法にあります。
吉野杉は、1ヘクタール(甲子園球場のグラウンド程度)の広さに通常の3倍の数、約1万本もの苗木が植えられます。そうすることで、それぞれの木が太陽の光を求めてまっすぐ成長するのだとか。
さらに太陽の光があたるところにしか葉をつけないため節も少なく、30年かけて3000本までに間伐しながら育てることできめ細かい。吉野杉は、この育成方法によって何百年と美しい姿を維持してきたのです。
ちなみに吉野杉はその美しさから神社仏閣の建築材に使われることが多く、室町時代には豊臣秀吉が建てた大阪城にも使用されています。
絶景を望む鳳閣寺で修験道のルーツに触れる
地蔵峠からゆるやかな坂を登り、春日大社と同じ神様が祀られているという「鳥住春日神社」を越えると、「鳳閣寺」が現れます。
奈良には吉野と熊野を結ぶ「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」という有名な修験道の修行の道がありますが、その開祖といわれる役行者(えんのぎょうじゃ)が1300年以上前に開山したのが「鳳閣寺」の始まりです。
のちに、一度廃れた修験道を再び復活させた理源大師聖宝(りげんだいししょうぼう)が鳳閣寺を開き、ここを修験の拠点としたそうです。
そんな修験道のルーツに触れられる鳳閣寺には、絶景を望む展望スペースも備えられています。
二上山、大和葛城山、金剛山など人気の山を結ぶダイヤモンドトレール(金剛葛城山系の稜線を縦走する自然歩道)や遠くの街を眺めていると、つい、古の修験者たちも同じ景色に心を癒やしていたかもしれないと想像を巡らせてしまいます。
春は桜、秋は紅葉。松尾芭蕉も訪れた山奥の秘境へ
頭上からは木漏れ日が射し、トレイルは落ち葉で敷き詰められてふかふかのベッドのよう。急な坂もなく、ひたすらゆるやかに続くトレイルを歩くのはとても気持ちがいい。
鳳閣寺からしばらく歩くと、西行庵と記された道標を発見。階段を降りていくと、広場に出ました。
広場には、こじんまりした小屋がぽつんと佇んでいます。ここは、もともと武士であった西行がその身分を捨て(じつは武士としての才覚に溢れていたらしい)、法師となって3年間侘住まいしたと伝えられる場所。
西行を師と仰ぐ松尾芭蕉もここを2度訪れたとされ、ここから少し先に行くと、彼が詠んだ歌の句碑も立っています。
山一面に広がる桜を一目見ようと多くの人でにぎわう上千本と違い、ここは吉野山のもっとも奥に位置する奥千本エリア。かつて西行法師がひっそりと暮らしたように、静寂に包まれたまさに秘境の地です。
訪れたのは晩秋の某日。辺りには赤・黄に染まる紅葉が爽やかな葉擦れの音を奏で、陽の光に照らされてきらきらと空を漂い、幻想的な景色を見せてくれます。
金運上昇する黄金の神!? 紅葉の名所では野点で心を整える
西行庵から山道を10分ほどすすんだところで、熊野方面から吉野山へとつづく修験道の修行の道「大峯奥駈道」と合流。さびれた道標がその長い歴史を物語っていて、辺りを包む厳かな雰囲気に背筋が伸びる思いを感じます。
合流地点から間もなくして「金峯神社」にたどり着きました。中世以降に修験道の行場として使われた金峯神社は、吉野山から大峯山上ヶ岳一帯の地主の神、金山毘古神(かなやまひこのかみ)が祀られています。
ちなみにこの金山毘古神、古来より生物の枯死を防ぐ神として崇敬され、金鉱の山を司る“黄金の神”として祀られてきたことから、金運のご利益があると言われています。
さらに社殿を下ったところには、僧兵の山狩りから逃れるために源 義経が身を隠したとされる「義経隠れ塔」が残っています。追手に囲まれた際、屋根を蹴破って逃げたことから“蹴抜けの塔”ともいわれるそう。
つぎに目指したのは高城山展望台で、金峯神社からは歩いて20分ほど。展望台につづく坂道は美しい紅葉の道として知られており、鮮やかに彩られた紅葉のトンネルが出迎えてくれます。
時間もちょうどお昼どき。展望台へ到着したら、まずはベンチに腰掛けて奈良の名物・柿の葉寿司を堪能します。
標高702mの高城山は、1333年に吉野で鎌倉幕府倒幕の兵を挙げられた大塔宮護良親王(だいとうのみやもりよししんのう)の吉野城の詰め城として砦が築かれました。そんな歴史をもつ一方で、山頂は広く平らで見晴らしもよく、開放的な気分になれる場所でもあります。
せっかくなので昼食の後は、紅葉を鑑賞しながら野点にも挑戦。奈良の雄大な自然のなかで静かにお茶を点てる時間は何とも贅沢で、ゆるゆると心がほぐれていくのを感じます。
高城山山頂での野点を堪能したら、ふたたび吉野駅に向けて歩みをすすめます。高城山展望台から20分下った先にある「花矢倉展望台」まで来ると、眼下には金峯山寺と吉野山の町並みが広がり、ゴールが近いことを知らせてくれます。
“頭脳の神”を祀る修験道の総本山へ! 花見の名所の𠮷水神社も
吉野山の入口である下千本まで下りてくると、参道はたくさんの商店で活気づいている。その参道から少し脇に入ったところにあるのが、𠮷水神社(よしみずじんじゃ)です。
𠮷水神社はもとは吉水院とよばれ、金峯山寺の格式高い僧坊(僧侶の住む建物)でしたが、明治初期の神仏分離令によって後醍醐天皇、楠木正成公、吉水宗信法印公を祭神とする神社となりました。
また源 頼朝に追われた源 義経が内妻の静御前、弁慶らとともに身を隠した場所としても知られており、境内には弁慶が指で岩に釘を打ち込んだとされる「弁慶力釘」も残されています。
さらに𠮷水神社の境内には吉野山の中千本、上千本が一望できるスポット「一目千本」があります。あまりの美しい景観に、1594年に豊臣秀吉が開催した大規模な花見の際は、その本陣として選ばれたほど。吉野山が桜色に覆われる季節がきたら、必ず訪れたい場所です。
𠮷水神社をあとにし、黒滝~吉野山ルートのクライマックスとなる修験道総本山の寺院「金峯山寺(きんぷせんじ)」へ。
日本古来の山岳信仰に神道や仏教などが融合し、独自の宗教として発達したのが修験道。金峯山寺は、その開祖であり超人的な能力(!)を持っていたとされる役行者(えんのぎょうじゃ)によって創建されたと伝えられています。
また蔵王堂から西側約500段の階段を下りたところにある金峯山寺の塔頭の一つ、脳天大神・龍王院は「吉野の脳天さん」と親しまれ、首より上の病気に霊験あらたかで、入試合格や病気全癒、商売繁盛のご利益があるとか。金峯山寺を訪れたら、ぜひこちらにも立ち寄りましょう。
奥深い自然と古社・古刹を一日で堪能 黒滝~吉野を探訪しよう
奈良の大自然の深部と、脈々とつづく歴史の芯部に触れられる黒滝~吉野をつなぐクラシックルート。人が少なく、静かに旅を楽しみたい人には絶好のルートで、見どころ豊富ながら一日で踏破できるちょうどいい長さも魅力です。
かつて命がけで修験者が歩いた山岳信仰の聖地を訪れ、彼らが見たであろう景色を反芻しながら旅をする。そんなディープでロマンあふれる奈良の道に、あなたも一歩足を踏み入れてみませんか?
<ジャパンエコトラック奈良・奥大和エリア12月1日登録>
エリア情報はこちらから
https://www.japanecotrack.net/area/1120文=平野美紀子
写真=三宅史郎
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