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岐阜・養老の地で261年。一部屋一部屋意匠を凝らした文化財の宿「千歳楼」で薬草風呂と飛騨牛を堪能する贅沢

CREA WEB / 2025年1月18日 17時0分


「班猫」「大獅子図」などで知られる竹内栖鳳がデザインした部屋。

 不老長寿伝説が残る岐阜県養老の地に佇む、江戸時代中期創業の老舗「千歳楼」。ここは大正天皇を始め、三条実美、高松宮など皇族関係者や、竹内栖鳳、山岡鉄舟、伊藤博文、横山大観、北原白秋、谷崎潤一郎など、数多くの文化人が訪れた宿です。

 明治、大正、昭和と建設時期の異なる三棟の建物はいずれも国の登録有形文化財に登録。歴史を感じる重厚な雰囲気と、来訪者による貴重な芸術作品に囲まれながら過ごす極上の滞在は心を解き放つ至福の時間。


明治、大正、昭和の建築様式と来訪者の書幅を味わう


江戸時代創業の千歳楼。紅殻色の唐破風の玄関が出迎える。

「千歳楼」は1764年創業、260年以上の歴史を誇る江戸中期創業の老舗文化財宿。元正天皇が養老の地を訪れてから1千年経ったころに創業したことから「千歳楼」と名付けられたといいます。

 明治13年に養老公園が造成されると、滝から500メートルの景観の優れた現在の場所に改築されました。総檜造りの「本館」(明治期)、頑丈な地盤の山肌に沿う懸造りの「栖鳳閣」(大正期)、「流芳閣」(昭和期)の異なる時代に建てられた三棟が2014年に有形文化財に登録されています。


日本画家 河合五郎太がデザインした窓枠。

 歴史を感じさせる建物の中へ入ると、和みの空間が広がります。ロビーは一面ガラス張りで竹林を思わせるような竹の節のデザインが施されています。ゆったりと四季折々の季節の彩りを楽しむのもおすすめです。


本館大広間では、代々宴会が開かれてきた。

 本館2階には、東海平野を一望できる大広間が。天気の良い日には名古屋駅前のJRタワーズまで眺望が広がるそう。

 部屋を囲む建具のガラスは明治期の手作りガラス。手作りがゆえの気泡やむらが趣き深く、美しい庭をさらに幻想的に彩ります。明治の皇族有栖川宮熾仁親王の筆などが掲げられたこの広間で、時代を感じながら宴を楽しむのもいい。


歴史的人物らの書は館内あちらこちらに残される。

 廊下には勝海舟、高橋泥舟とともに「幕末の三舟」と称される幕末の剣豪・山岡鉄舟の書が。戊辰戦争で勝海舟の使者として西郷隆盛を説き、江戸城の無血開城を導いた人物です。

 この宿には大正天皇を始めとする皇族関係者や、竹内栖鳳、横山大観、伊藤博文、北原白秋、谷崎潤一郎など数多くの歴史上の人物が訪れました。近年、宿泊者のつながりから大塩平八郎が訪れたことも明らかになったそう。

大正天皇が休憩した部屋や、竹内栖鳳の意匠が残る部屋


大正天皇のために設えた松の間。

 千歳楼の部屋には、一部屋一部屋に「いわれ」があり、「竹」「楓」などそれぞれのテーマに沿った意匠が凝らされています。

「松の間」は、大正天皇のために設えた部屋。大正天皇はここで休息し、本館の大広間で食事をしたそう。


松をテーマにした意匠で統一している。

「松の間」の名にふさわしく部屋の隅々まで「松」をテーマにした意匠でまとめられています。松の葉の意匠の欄干に、釘隠しには木彫りの松ぼっくり。襖の手掛けや市松模様の扉に至るまで、当時の職人のこだわりを感じさせます。


「班猫」「大獅子図」などで知られる竹内栖鳳がデザインした部屋。

「袖の間」は、日本画の巨匠・竹内栖鳳がデザインした部屋。栖鳳は「物を描けばその匂いまで描く」といわれた近代日本画家です。高さ3メートルの折り上げ天井と一面のガラス張りの縁側は開放感があり、外光が射しこむ明るい室内で、生き生きとした栖鳳の芸術とともに過ごすことができます。


部屋を囲む広々とした縁側。外には四季折々の景色が広がる。

 栖鳳は、若い頃から何度も訪れては、絵を描いたり、陶芸を楽しんだりと芸術活動を楽しんでいたそう。


奥の半円の窓は昔使っていた水車の輪を利用し、細竹をはめている。

 窓の外には想像力を掻き立てる美しい景色が広がり、栖鳳が度々訪れていた理由がわかるような気がします。


部屋には檜のお風呂が。外を眺めながらくつろげる。

 部屋には浴室を新設しています。檜の香りが心地よく、移ろいゆく外の景色を眺めながら楽しんで。


本館浴場は2021年に薬草風呂を設置。

 各部屋の浴室のほか、本館の浴場で薬草風呂を楽しむこともできます。

 千歳楼の原点でもありながら、長い歴史の中でいつしか途絶えてしまったこの薬草風呂。何とかその失われた歴史を再現しようと、クラウドファンディングを実施し、2021年に復活を果たしました。

 日本三大銘水の一つの養老の水と伊吹山で栽培された薬草をブレンドした薬草風呂は新たな千歳楼の名物として人気を博しています。黄土色に輝く滑らかな感触の湯にじっくり浸ると身体が喜ぶよう。

夕食も朝食も、養老名物飛騨牛を心ゆくまで


地元の飛騨牛を季節ごとにさまざまな形で味わう。

 文化財の建物だけでなく、料理の一つひとつにもこだわりが感じられます。

 中でも、飛騨牛を贅沢に使った「季節の会席コース」は、色鮮やかな飛騨牛を季節の味わいと季節の前菜などを存分に堪能することができます。


代々引き継がれる器を使用。

 先付けは鯛とナスの揚げ浸し。


季節の美しさを感じながらいただく前菜。

 前菜は柿の白和、銀杏胡麻豆腐、粟麩田楽など。季節を凝縮した芸術作品のような料理をじっくり楽しんで。


季節ごとに変わる飛騨牛料理。この時期はしゃぶしゃぶでいただく。

 メインは飛騨牛のしゃぶしゃぶ。地元野菜と一緒にいただきます。飛騨牛は肉質がきめ細かく、口のなかでとろけます。


締めのうどんが、宿泊客に好評。

 締めのうどんは、主人オリジナルの出汁で。スパイシーな味わいが癖になると評判です。


本みりんの優しい甘さのデザート。

 デザートは、老舗・玉泉堂酒造の三年熟成本みりんを使った餡乗せわらび餅。みりんのほんのりとした甘さが上品に心地良く広がります。


明治の建造物本館和室でいただく千歳楼の朝食。

 夕食に舌鼓を打った翌朝は、千歳楼の主人が心を込めて作った朝食もご堪能あれ。朴葉味噌の和朝食湯豆腐や温泉卵など。朝からボリューム満点です。


朝夕ともに飛騨牛を存分に堪能できる。

 朴葉味噌に飛騨牛を乗せてたっぷり絡めると、その濃厚な味わいにご飯が進みます。

 朝夕と心ゆくまで飛騨牛を味わえば、もう思い残すところはないと思うほど満足感を抱くことでしょう。

歴史を語り継ぐ宿・千歳楼。芸術に囲まれる滞在を


外の景色とつながる開放感あふれる縁側で椅子に腰掛け外を眺めて。

 創業261年、当時のままの姿を守り繋いできた千歳楼。宿の女将や主人、そして地域の人を中心に、多くの人たちが、クラウドファンディングなど様々な活動を経て、千歳楼の歴史と伝統は現代にも息づいています。

 千歳楼に関わる人たちの優しさと愛がそこには感じられます。よくここまで大切に守り抜いてくれたと、畏敬の念を抱く宿。かつてここを訪れた歴史上の人物が感じた感動と喜びを味わってみてはいかがでしょうか。

千歳楼

所在地 岐阜県養老郡養老町養老公園1079
電話番号 0584−32−1118
料金 1泊2名1室2食付き 20,000円~/人

文・撮影=神谷加奈子

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