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楽園を求めたゴーギャンが最後に選んだ島。“神様の家”マルケサス諸島を探訪!

CREA WEB / 2025年1月11日 11時0分

#316 Marquesas Islands
マルケサス諸島(フランス領ポリネシア)

 2024年7月26日、ユネスコ世界遺産に登録された、フランス領ポリネシア(タヒチ)のマルケサス諸島。


黒砂と白砂が混ざり合ったヒバオア島のナホエ・ビーチ。

 海を渡ってやって来て発展を遂げた人類文明に対しての文化遺産と、人の手が入らず、保存状態のいい海と陸の環境、そして生物多様性に対する自然遺産、両方からなる複合遺産として登録されました。


雄大な山にしがみつくような民家。あるがままの自然が優位な島です。

 地元の言葉で「人間の地」を意味する「テ・ヘヌア・エネタ」と呼ばれるマルケサス諸島は、タヒチ島から北東へ約1400キロ。首都パペーテから国内線で約3時間20分~3時間40分。

 ここまで離れていると、タヒチ島とは30分の時差があり、言葉も異なります。マルケサス諸島は古代の先住民族マホヒの影響が残っているとか。

 マルケサス諸島は12の島々からなり、今回ご紹介するのはヒバオア島。


島の道路の多くが未舗装だったり、ガードレールがなかったり。ワイルドです。

 神話によると、マルケサスの島々は神様の家の各部分になっていて、ヒバオア島は一番重要な“大梁”の役割を担っています。面積は320平方キロメートルで、マルケサス諸島の中では2番目、フランス領ポリネシア全体では3番目の大きさです。

 ヒバオア島は、画家ポール・ゴーギャンが終(つい)の棲家に選んだ島。楽園を求め続けたゴーギャンの目に映った自然と、今もきっと変わっていない景色が島には残されています。

 標高1276メートルのテメティウ山が侵食されて生まれた火山島のヒバオア島。寒流のペルー海流に洗われる島は、1000メートル級の山々が海から立ち上がり、海岸線には穏やかな入り江がいくつも連続しています。海の色はボラボラ島のようなトロピカルな感じではなく、どことなく墨が混じったような深い青。粗削りな野性味あふれる島です。


糧を得る場所であり、遊ぶ場所である海が暮らしのそばにあるヒバオア島。

野生のグアバ。島内にはグレープフルーツやアボカドも実っています。

行っておきたい「ゴーギャン博物館」

 島には7つの村があり、中心地となっているのはアツオナ。人口2371人(2022年)のほとんどがアツオナに集中しています。


一番の中心地のアツオナの村。移動マーケットやよろずやさんもあります。

 ヒバオア島を訪れたら、行っておきたいゴーギャン博物館があるのも、アツオナ。楽園タヒチを描いたレプリカ作品が一堂に会しています。

 たとえば1891年に描かれたオルセー美術館蔵の『タヒチの女(浜辺にて)』、実は1892年に服装こそ違えどそっくりな構図の作品を描いていたのですね。そんなレプリカに加え、ゴーギャンの生涯を詳細に記した年表や変色した作品の販売証明書、画家仲間にあてた手紙なども展示されています。


左が1892年作。タイトルは『Parau api (Quelles nouvelles?)』。

 博物館の敷地内には“快楽の館”という名の自宅も再現されています。その木瓦の高床式住居の一角には創作活動をしていたアトリエスペースが。描きかけのキャンバスと空き缶に挿した数本の絵筆、しぼり出した状態の絵の具などが置かれています。これも本人が使ったものではないですが、作品や資料を見ているうちに、一人の人間としてのゴーギャンの輪郭が見えてくるようです。


快楽の館を再現した建物内。

ゴーギャンの創作風景を想像してしまいます。本人が使っていた絵の具ではないですが。

 ゴーギャンの手記「ノア・ノア タヒチへの航海」にはこんな一文があるそうです。

「単純に物事を考えるようになってきた。隣人には憎しみの感情ではなく愛情を感じるようになっている。動物としても人間としても、自由に生きる喜びはすべて私のものとなった。人が作ったものから離れ、真実である自然へと身を置いている」

 ヒバオア島での日々が、来島時に困難を抱えていたゴーギャンを変えていったことが伝わってきます。

空港の名前にもなったもう一人のアーティスト

 もう一人、ヒバオア島で晩年を迎えたヨーロッパのアーティストがいます。ベルギー出身のシャンソン歌手にして俳優のジャック・ブレル。ヒバオア島の空港の名前にもなっている人です。


ヒバオア・ジャック・ブレル空港。島の人から愛されていたことが伝わってきます。

 1975年、太平洋をヨットで航行中にヒバオア島を訪れ、その美しさに余生をここで過ごすことを決心したそう。彼もまたその人生において苦境に立たされていた頃だったとか。

 島でのブレルは所有していた双発機を使って、病人を隣の島の病院へ運んだり、郵便物を届けたり、島の人々に尽くしました。島の人にとって彼は有名人ではなく、同じ島に暮らす、たよりになる人物。ジャック・ブレルの記念館にはその愛機「ジョジョ」号が展示されています。


かつて格納庫だったエスパス・ジャック・ブレル記念館。実際のジョジョ号が展示されています。

 ポール・ゴーギャンとジャック・ブレル、二人はアツオナの村と太平洋を見下ろす村の共同墓地「カルヴェール墓地」に眠っています。ゴーギャンはプルメリアの木の下、ブレルは植物に包まれて。どちらのお墓も島の人が手向けた花のレイで飾られています。


二人のアーティストのお墓はそう離れていない距離にあります。

 次回はマルケサス諸島が世界遺産になった理由について、ご紹介します。

マルケサス諸島

●アクセス タヒチ島パペーテから直行便なら約3時間20分
●おすすめステイ先 ハナケエ・ロッジ・ヒバオア
https://www.hotelhanakee.com/

取材協力
タヒチ観光局
https://tahititourisme.jp/ja-jp/
エア タヒチ ヌイ
https://jp.airtahitinui.com


古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●Instagram https://www.instagram.com/chieko_koseki/

文・撮影=古関千恵子

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