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古民家宿で味わう佐渡の自然の恵み。“自給自足”が息づく佐渡だからかなう癒しの滞在「御宿 花の木」

CREA WEB / 2025年2月2日 11時0分

 佐渡島の南部、小木町宿根木にある「御宿 花の木」。2000坪という自然豊かで広大な敷地に、静かに佇む古民家宿です。離れ5室、本館2室と7室だけの小さな宿は、四季折々の自然を女将である渡辺明子さんがふるまうお料理からも感じることができます。今回はそんな渡辺さんに食への想いを伺いました。


自然の恵みの恩恵を受け、安心安全で体にやさしい料理でもてなす


嘉永年間に建築された日本家屋を移築して作られた宿。撮影:釜谷洋史

母屋に入るとすぐに広がる大きなガラス窓からの中庭の景色。陶芸家で花の木の主人でもある渡辺陶生さんの作品もいたるところに展示されています。

今回お話を伺った、女将兼料理人の渡辺明子さん。心のこもった丁寧なおもてなしに、訪れた人の心もすっと解きほぐされます。撮影:釜谷洋史

「Simple is the bestという言葉のとおり、その時々にしか食べられない旬な食材を使用し、できるだけ素材自体がもつ本来の味を感じられるような調理をしようと自分に言い聞かせながら作っています」と語る渡辺さんが提供する料理は、野菜から米、魚介類にいたるまで佐渡島でとれたものを基本的に使用しています。佐渡島の自然の恵みに出会い、食への価値観が大きく変わったといいます。


佐渡島の農家さんが作ったものが集まるお店をまわり、その日の食材を選びます。新鮮で旬な野菜がぎっしり。

 もともと愛知県名古屋市出身の渡辺さんが佐渡島へ移住したきっかけは父親の病気でした。手術をしなければ余命2年ほどだと言われ、その手術を拒んだ父親と母親と三人で引っ越してきたそう。

「それまで父はたくさんの薬を飲んできたのですが、佐渡に来てから母が自然療法を始め、薬を飲むのをやめたんです。なにせここは自然がたくさんあるでしょう。いずれは名古屋に戻るつもりだったけれど、自然由来の食生活に変えたことで、父の容態もどんどんよくなり、結局そのあと33年、88歳まで生きたんですよ。母も心臓が悪くて都会で生活をしていた時は入院したりしていたのですが、94歳まで生きて。本当に佐渡へ来たおかげで、自然と食との関係を実感することができて、意識が変わりました」

「花の木」の料理のベースはそこにあるといいます。

「安心安全で体にやさしい食材を使って、たくさん食べても次の日また元気にご飯が食べられる、そんな料理を提供するよう心がけています。野菜は島中のお店をまわり、カニはカニ屋さん、魚は魚屋さんで毎日仕入れ、お米は花の木のために棚田でクラシック米を作っていただいて。部屋数も多くないので、島を一周ぐるりとまわれば、十分な量の旬な食材が用意できます」


地元の魚屋さんで仕入れた、佐渡島の海で獲れた海鮮の数々。

「御宿 花の木」の名物でもある、赤泊の網元から仕入れた獲れたての紅ズワイガニ。1月・2月以外は、夕飯時に一人一杯提供される。

土地でとれたものを生かし、オイルから糠まで手作り

 2008年には農林水産省から「地産地消の仕事人」に、2023年には、地域の風土、歴史や文化を料理に表現する「新潟ローカル・ガストロノミー」を受賞するなど、渡辺さんの佐渡の食材の味を立たせたやさしい味付けは、口に含んだ瞬間に心が満たされていくのを感じます。


佐渡で採れたゆずの皮をすりおろし、味噌と和えたゆず味噌。こっくりした味噌にゆずの爽やかさが相まって、野菜につけていただくと良いアクセントに。

中庭には、山椒や茗荷などが自生。少量づつ収穫して、その日の料理に使っているそう。

 なかでも渡辺さんの料理に欠かせないもののひとつが「椿油」。椿油というと大島椿のイメージがありますが、戦前は佐渡島が生産第2位のシェアを誇っていました。渡辺さんも移住後にその文化を知り、種を集めて絞り始めたのだそうです。

「もともとはオリーブ油が体に合わない父のために、なにかいい油がないか調べていたところ、佐渡島では昔から椿油が作られていたことを知りました。よい文化なので復活させたい気持ちもあり、島のみなさんに声をかけて種を集めていただき作り始めたんです。コールドプレスという非加熱の製法で絞っているのですが、父の体にもよく合い、今ではサラダやお刺身などと一緒に宿でも提供しています」


庭先にも椿の花が。今は娘さんが椿油の製造を受け継いでいます。

 そしてもうひとつは漬物。新潟県が魚沼のムロで見つけた乳酸菌をもとに、新潟の食品研究所に渡辺さんが3年間通って勉強して作った糠で作られています。野菜の風味はそのままに、漬物特有のしょっぱさもあまりなく、なんとも美味!

「佐渡市認証米『朱鷺と暮らす郷』の糠と、佐渡の海洋深層水から摂れた塩、そこに乳酸菌を入れて作られた、新潟産の糠床です。一日漬けるだけで熟成発酵して、野菜がしっとり。たっぷりの乳酸菌を摂ることができますよ」


冷蔵庫でも保存できる糠床。ブラウス一枚で過ごせるくらいが、乳酸菌が一番好きな気候なのだとか。

 都会にいると常になんでも手に入ることが当たり前になり、忘れてしまいがちな季節の移ろい。食を通して四季折々を感じ、体が喜ぶ食事をしてほしい、そんな渡辺さんの想いが詰まった料理はまさに“佐渡島の味”。ぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。

御宿 花の木

所在地 新潟県佐渡市宿根木78-1
電話番号 0259-86-2331
部屋数 7室
料金 1泊2食付き2名1室利用時(1名様)13,000円~(3/19まで)
※3月20日以降は15,000円~
チェックイン15:00〜21:00まで/チェックアウト10:00
http://www.sado-hananoki.com/

文=齊藤美穂子
写真=佐藤 亘、釜谷洋史

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