「安住二世」と呼ばれたくないTBS若手アナが解き放つ、暗黒のポテンシャル『ザ・トップ5~リターンズ』

日刊サイゾー / 2012年10月17日 8時0分

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しゃべりと笑いと音楽があふれる"少数派"メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。

 ラジオは時に、人の印象を反転させる力を持つ。またしても、テレビでの爽やかなイメージを覆すことで、ひとりのモンスターを目覚めさせてしまった。怪物の名は、山本匠晃。その端正なルックスから「安住二世」ともいわれている、入社5年目のTBSアナウンサーである。そんな彼が、初めてのラジオ・パーソナリティーを務める10月開始の生放送新番組『ザ・トップ5~リターンズ』(TBSラジオ 毎週火曜~金曜18:00~20:00 山本は水曜担当)で、隠されていたネガティブ・パワーを存分に炸裂させているのである。

 『ひるおび!』や『さんまのスーパーからくりTV』等の番組で見かける彼は、基本的に清く正しい。だが一方では、なぜだか常時テンパっている感触が画面からにじみ出ていて、司会者にツッコまれると何も返せずにただあたふたする、という場面も多く、どうにも空気が読めていない感じが常に漂っている。それが若さや不慣れによるものなのか、あるいは本人の性質によるものなのか判別できぬままに、時おり見かけてはもどかしい気分に陥っていたのだが、ラジオでのしゃべりにより、このたび完全に後者だと判明した。彼は極度の「緊張しい」なのである。それゆえに、緊張が一瞬解けたときには、雪崩のごとく本音が流れ出して止まらない。そのギャップから来る解放感があまりにスリリングで、一瞬たりともラジオから耳が離せない。

 そして、その緊張感をさらに増幅させる装置が、『トップ5』独特のスタート形式である。『ザ・トップ5~リターンズ』は、昨年10月から今年3月まで放送された『ザ・トップ5』からパーソナリティーを一新した、いわば2ndシーズンに当たる番組であり、曜日ごとにパーソナリティーとパートナーを替えた二人編成で進行される。しかし、出演者の二人は事前の顔合わせが一切なく、初回放送中に初めましての挨拶と名刺交換をするという、非常に珍しいぶっつけ本番形式を取っている。そのため各曜日ともに、初対面の緊張感から互いの探り合いを経て、回を重ねるごと徐々に二人の息が合っていく過程を楽しむ番組でもあるのだが、特に水曜日に関しては、その緊張感増幅装置が山本の緊張を完全にオーバーヒートさせ、前シーズン経験者で謎の経歴を持つパートナーのコンバットREC(ビデオ考古学者)をあきれさせながらも驚嘆させるほどの、意外な後ろ向き発言が繰り出され続けるという異常事態を生んでいる。

 番組は、「新感覚"残業支援系"ランキングトークバラエティ」と銘打っているように、世の中にあふれるさまざまなランキングを紹介しながら進んでいくのだが、正直そんな企画書的な体裁はどうでもいいとばかりに、初回から山本のネガティブな個性が噴出。冒頭のタイトルコールで「残業」を「塹壕」と噛む不穏なスタートから、「アナウンサー間にイジメはあるのか?」というコンバットRECの質問に対し、「距離を置きたい先輩はたくさんいる」という期待以上の返答。さらに「『ロッキー』が好きな人とは仲良くなれる」という年輩のコンバットRECに対し、「特に思い入れはないです」という空気の読めない正直すぎる答えの後、すぐに自らの過ちに気づいて「ごめんなさい」と謝ったかと思えば、「曲は好きなんですけど......」というむしろマイナスでしかないフォロー。そして、トークが一段落した後の曲明けには、突如として自省モードに突入し、「聴いているすべての皆さんにお知らせします。冒頭から気分を暗くさせてしまいまして、申し訳ございませんでした」という正式謝罪が前触れもなく飛び出すという、完全に錯乱した展開。その後も、「両手の痺れと手汗が止まらない」「安住二世とはいわれたくない」「仕事終わりはすごい一人になりたくなる」などとネガティブ発言を連発しつつ、試食のコーナーでは、「僕、今日なんにも喉を通らなくて」とつぶやきながら豚かばやき丼をしゃべれなくなるほど頬張り、「まさかRECさんの前で、こんなに食べられるとは思わなかった」と自分に驚いてみせるという、まったく先の読めない小悪魔的言動に、聴き手は振り回されっぱなしなのである。

 2回目の放送でも、緊張している山本のためにと、コンバットRECが持ってきたハーブティー各種を次々飲みながら、そんなスピードで効くはずないだろというテンポで、飲んだ端から「落ち着きます」「包まれるような感じ」などと信用できないコメントを連発。「先週よりリラックスしてる感じがする」といわれれば、「リラックスはしていない」と即座に否定し、かと思えば「最近、耳たぶの吹き出物と寝違えに悩んでいる」などと唐突に自分語りを始めるマイペース&ネガティブっぷり。しかし、その突然すぎる寝違えの話題が、コンバットRECも首に痛みを抱えているという話につながると、その痛みの原因となった「中学生時代に自転車に乗っていて車に轢かれたが、恥ずかしくて自転車を担いで逃げた」という秀逸なエピソードを引き出すなど、早くも二人の化学反応を感じさせる展開を見せ始めている。表面的にはしばしば行き違っているように聞こえる二人の会話も、一を訊けば十答える博識のコンバットRECが辛抱強く山本を鍛え上げている構図にも見えて、まるで『ドラゴンボール』でピッコロが孫悟空の息子である孫悟飯に稽古をつけるような(そういえば、山本の品のある甘えん坊キャラクターは悟飯に似ている)微笑ましい光景にも思えてくる。

 そんな極度にマイペースかつネガティブな山本の面白さは、初回の番組後半に本人の口から飛び出した「人に嫌われたくない。かといってあんまり人のこと好きじゃない」という、「自己愛の強さ」に根っこがあるのだと思う。だが、この「自己愛の強さ」というのは、実はラジオリスナーが安住紳一郎を讃える際のキーワードでもあって、本人はそう呼ばれることを快く思っていないとはいえ、やはり彼が「安住二世」と呼ばれるにふさわしいポテンシャルを感じさせるのは間違いない。過剰な「自己愛」の表明は、ラジオにおいては反転して「可愛げ」として受け入れられることがしばしばある。ただし、安住が若い時分から新人離れした落ち着きを見せていたのに比べると、その点において大いに不安を感じるのもまた確かで、そこを「何が飛び出すかわからない面白さ」ととるか、「不安定すぎて面白さどころではない」と感じるかで、評価は大きく分かれるところだろう。個人的には、「何が飛び出すかわからない」度合いの大きさにおいて安住よりも勝っているところに、「安住二世」の枠には収まらない得体の知れぬ可能性を感じるのだが、それもこの番組をどう乗り切っていくのかで変わってくるだろう。

 しかし、彼のネガティブさが、"残業支援系"という番組キャッチコピーにある通り、結果として疲れたサラリーマン(というより、OLや主婦かもしれないが)への癒やしをもたらしてくれることもまた間違いない。もちろん方向性はちょっと違うが、近ごろ話題のネガティブ・モデル栗原類が万人に大いなる癒やしを結果的に与えているように、正直と不器用を由来とするネガティブさは、時にウソをつき常に器用な振る舞いを求められる現代の大人にとって、数少ない心の支えとなる。
(文=井上智公< http://arsenal4.blog65.fc2.com/
>)


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