『黒子のバスケ』騒動で露呈した、大手同人企業・スタジオYOUの権利意識

日刊サイゾー / 2012年12月4日 13時0分

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 最近相次いでいる、漫画『黒子のバスケ』の作者・藤巻忠俊氏の母校や出版社、イベント会場などに脅迫状や薬物のようなものが送り付けられる事件。そんな中、脅迫状が届いた同人誌即売会主催企業が、フジテレビの取材を「無断撮影」だとして、撮影した動画などの廃棄を求めて波紋を呼んでいる。

 この事件が起きたのは10月21日のこと。この日、フジテレビは東京ビッグサイトで『黒子のバスケ』を扱う同人誌即売会に脅迫状が届いていたことを知り、取材に訪れた。主催者の「スタジオYOU」の説明によれば、会場を通じて取材の申し出があったが、これを断った。ところが当日夕方のニュース番組で、会場の様子を撮影した映像が流れたため、同社に電話で抗議。ところが同社がそれに応じなかったため、弁護士を通じて謝罪と撮影素材の廃棄を求める内容証明を送付したというものだ。

 スタジオYOUの要求は、「撮影等によって本件参加者のプライバシー権を侵害したことについて謝罪の意を表明すること」「貴社ウェッブサイト上にアップロードされている本件動画又は静止画像を削除すること」「貴社内に保管されている本件動画及びその静止画像を廃棄すること」といったもの。さらに、イベント参加者のプライバシー権侵害、業務妨害だと激しく指弾している。

 これに対してフジテレビは、11月6日「本件撮影等は適法と認識している」「したがって,当該映像データの一切(静止画像,DVDメディア等を含む)は廃棄する必要がないと考えている」と回答し、いまだに両者の主張は平行線をたどっている。

 この事件で最も疑問なのは、フジテレビの取材を「無断撮影」だとするスタジオYOUの主張だ。筆者も当日のニュース映像を見てみたが(本編動画は削除されているが、キャプチャ画像は現在でも掲示板やまとめサイトで見ることができる)、映像は少し離れた場所から会場の風景、参加者の首から下を撮影したもの。おそらくは、敷地外から望遠で撮影したものと思われ、スタジオYOUもホームページで、その可能性が高い旨を述べている。

 スタジオYOUは、この点も「敷地外なら、主催者が取材を断っているのに、報道としては間違っていないステップを踏んでいると言い切れるのか? もっと踏み込んで言わせていただけるならば、敷地外なら何をしてもいいのか? 理解できない部分です」と、厳しく口撃している。

 果たして、敷地の外から見える光景が「無断撮影」になり「個人のプライバシー」を侵害するものになるのか? 日本雑誌協会編集倫理委員長の山了吉さんの答えはNOだ。

「プライバシーの侵害になるケースは、自宅の室内や病室など私的空間に限定されたものです。誰もが訪れることのできる場所、見ることができる場所で群衆を撮影したものは該当しません。ありえるとしたら、群衆の中のひとりをクローズアップして行動を、ことさらに撮影した場合です。今回の件は、それには該当しないのではないでしょうか。(フジテレビの撮影は)東京駅前で朝の通勤風景を撮影した映像にモザイクをかけていないのと、同じです」

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