異例のアニメーター募集に、未完成バージョンの放映……アニメ版『進撃の巨人』は大丈夫か

日刊サイゾー / 2013年5月11日 16時0分

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 もはや撤退不可能。されど進めば地獄。そんな進退極まる状況にあるのが、現在放送中のアニメ『進撃の巨人』だ。2009年10月より「別冊少年マガジン」(講談社)で連載をスタートした本作は、謎の巨大生物・巨人に蹂躙(じゅうりん)される人類の絶望的な戦いを描く、ファンタジーアクション作品。単行本が発売されるやいなや、「このマンガがすごい!」2011年版オトコ編1位。「全国書店員が選んだおすすめコミック2011」1位。第4回マンガ大賞第7位。第35回講談社漫画賞少年部門受賞といった具合に次々と高評価を獲得。最新巻10巻までに累計発行部数1200万部を突破している大ヒット作である。

 そんな本作のテレビアニメが4月よりMBSほかで放送を開始。いろいろな意味で話題を呼んでいる。原作者・諫山創の荒削りながら緊迫感あふれる描線を残しつつも、アニメらしい洗練されたキャラデザインや、CGを駆使することでワイヤーアクションとガス噴出を組み合わせた本作ならではの「立体機動アクション」が乱舞する第1話は、Linked Horizonの壮大な主題歌「紅蓮の弓矢」の迫力も相まって、アニメファンの間で高い評価を獲得。すぐさま主題歌のMADムービーがニコニコ動画に投稿されるなど、ちょっとしたフィーバーとなった。

 しかし、第1話放送後に総作画監督・浅野恭司がTwitter上でアニメーターの募集を訴えるツイートを投稿。放送開始早々、本作のアニメ制作体制に対する不安がアニメファンの間でささやかれていた。ついで、先日放送された第4話から不穏な空気が作品に漂い始める。福岡放送で番組をチェックした視聴者の間から、妙に静止画や使い回しのカットが多いという声がネット上で上がり始めたのだ。その後、ファンの手によって福岡放送版と全国放送版の比較動画が制作され、アクションシーンを中心に福岡放送版は画像が差し替えられていることが発覚。そして先週放送された第5話で、事態はより深刻さを増してくる。先述の福岡放送に加え、北海道テレビ、テレビ大分でも静止画像、風景カットなどを多用した未完成バージョンが放送されてしまったのだ。

 局によって異なる内容が放送されてしまったという事態に対して、公式サイト上には「制作上及び放送局納品期限の都合」と謝罪文が掲載されたが、果たしてこのまま無事に2クールを乗り切ることができるのか、ファンとしては戦々恐々といったところだろう(『進撃の巨人』の制作元請を担当するのは、『ギルティクラウン』などを制作したProduction I.G 6課のスタッフが2012年に独立し、設立したばかりの制作会社・WIT STUDIOである)。

 これまでも、制作スケジュールの遅延や、制作体制の破たんでオンエアに影響を及ぼした作品がなかったわけではない。制作スケジュールの破たんによる動画枚数の削減、ストップモーションの多用。さらに線画の使用まで演出に昇華してしまった『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)や、韓国スタジオに丸投げした結果、壮絶な紙芝居を放送する羽目になった『ロスト・ユニバース』(98年)は有名なところだろう。それ以外にも、ここ数年に限るなら、第7話の納品が間に合わず第6話を2週連続で放送せざるを得なくなってしまった『ガドガード』(03年)(本作は全26話のうち、20話で打ち切りとなってしまった)。主にシナリオ面、設定面での作り込みに時間をかけ過ぎたために、あまり作画に時間を割くことができなくなりお粗末な作画でオンエア。その後、ファンからのブーイングを受けてDVDの単品発売が中止。全面的に作画リテイクを施し、放送開始から1年後にBOX形態でようやくソフト化を実現した『咎狗の血』(10年)(BLゲームを原作とする本作において、キャラクターの作画崩壊はもっともクリティカルな問題だったようである)。はたまた超絶低クオリティー映像でアニメファンを震撼させた『MUSASHI -GUN道-』(06年)。「制作会社の都合」により、第6話で放送が中断してしまった『RGBアドベンチャー』(06年)など一連のACCプロダクション作品など、華やかなアニメブームの裏側では惜しくも討ち死にしてしまったアニメたちが死屍累々である。

 この中に『進撃の巨人』が新たにリストアップされるのか。それとも、ここで見事踏みとどまり、アクションアニメ大作として歴史に名を残すのか。図らずも本編に負けず劣らずの危機的状況となってしまった(と思われる)『進撃の巨人』の制作状況だが、スタッフの奮戦に期待したいところである。
(文=龍崎珠樹)

日刊サイゾー

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