“赤い海賊”コスモスとはなんだったのか『愛しのインチキガチャガチャ大全』

日刊サイゾー / 2013年5月20日 9時0分

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 ただただ、圧巻。

 山賊みたいな海賊企業・コスモスの全貌を明らかにした問題作『愛しのインチキガチャガチャ大全-コスモスのすべて-』(双葉社)を読み終えた後の感想がコレである。

 コスモスとは、70年代から80年代にかけて全国に真っ赤な自販機を設置し、日本中の子どもたちにパチモンやら何かよく分からない物やら……よーするに、ゴミくずみたいな物をバラまきまくった、日本の戦後ホビー史の暗黒面の象徴のような企業である。

 スーパーカーが流行れば車っぽい塩ビフィギュアを作り、ガンダムが流行ればガンダムっぽいロボットの人形を作り、なめ猫が流行れば近所の猫を撮影して作ったなめ猫っぽいグッズを作り、ビックリマンシールが流行ればロッチシールを作り……って、まあつまりそういう感じのイリーガルなブツをせっせと製造しては全国の自販機にインストール! 子どもたちからなけなしのお小遣いを巻き上げていた海賊であり、山賊のような企業だったのだ。

 本書はそんなコスモスグッズコレクションの第一人者であるタレント・ワッキー貝山氏と、コスモスの魅力に取りつかれたライター・池田浩明氏の、コスモスへの愛憎に満ちた業の深い一冊である。

 チープ感とやっつけ感と、流行り物をテキトーにパクった(ということすらおこがましいが……)ゲスい打算を思い切りシェイクしたようなコスモスグッズが放つ異様なオーラを「狂気」と表現する池田氏のテキストは的確である。そこには一流。いや、二流、三流にすらなれなかったコスモスに魅入られた人間ならではの、一筋縄ではいかないドロリとした感情が渦巻いている。徹頭徹尾ドライに、シニカルに。しかし、愛情たっぷりに、ゴミみたいなブツの数々を解説する氏のテキストに、自然と笑みがこぼれてくる。

 その笑みは、何を意味するのか。ただ「面白い」とか「しょうもない」とか、そういう分かりやすい感情ではないことは確かだ。下らないブツへの嘲笑? いや、断じてそんなものではない。子ども時代への憧憬? いやいや、そんなにいいもんじゃない。ダメすぎて笑うしかない? う~ん、近いけどちょっと違う気がするし、そのどれもが正しいような気がする。言うなれば、まさしく「業」が渦巻いているのである。

 その極め付きが、巻末に収録されている関係者へのインタビューである。コスモスに反旗を翻し、その後もガチャガチャ業に従事する阿部茂氏。そしてかつて日刊サイゾーでもインタビューを敢行した(※記事参照)ヤマトコスモス会長・鈴木暁治氏が、赤裸々にコスモスのすべてを語っている。そこでも語られるのは、当時のコスモスの内部を知る者ならではの愛憎劇。悪名高いロッチシールが生まれた背景までもが、当時の担当者の名と共に明かされる。そこに渦巻いているものは、やはり「業」である。

 そんなコスモスの歴史は1977年にスタート。一時は全社員合わせて1000人。49万台のガチャガチャを有し、土地は7200坪。建物は4000坪。総資産額にして100億を誇りながらも、88年にあえなく倒産。ガチャガチャ業界を進撃しまくった真っ赤な巨人は、わずか11年でその活動を停止した。活動期間こそ短かったものの、そのインパクトは絶大。まさに80年代の亡霊と呼ぶにふさわしい。忘れてほしかった関係者は多いだろう。あえて今さら触れてほしくない人も少なくないだろう。

 それでも、だからこそ、あえて厚いベールの向こうの存在だった「コスモス」の真実を白日の下に晒してくれたワッキー貝山氏、池田浩明氏の両名には全力で拍手を送りたい。きっと2人をここまで駆り立てたもの。それもまた、コスモスが生み出した「業」のなせるわざなのだろう。
(文=有田シュン)

日刊サイゾー

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